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器量人の研究
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生き方・教養
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第五章 坂本龍馬、勝海舟、西郷隆盛 ― 歴史を動かした三位一体の共鳴力 ―

『器量人の研究』
[著]童門冬二 [発行]PHP研究所


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三回変わった坂本龍馬


 日本の歴史の中で、豹変(ひようへん)者の代表は何といっても坂本龍馬(さかもとりようま)だろう。彼はわずか三十二年の生涯に、三回の大きな豹変ぶりを示した。

 だれもが知っている話だが、ある時、彼の友人がきいた。
「いま、われわれ若者にとって大事なものは何だろうか?」

 この問いに対し龍馬は、刀の()を叩いた。
「これだ」

 年月が経って、同じ友人が龍馬にまたきいた。
「いまのわれわれにとって、大切なものは何だろうか?」

 この時龍馬は、(ふところ)から高杉晋作(たかすぎしんさく)から(もら)ったピストルを出して、
「これだ」

 と答えた。またしばらく経って友人がきいた。
「いまのわれわれにとって、最も大切なものは何だろうか?」

 龍馬は、懐から『万国公法(国際法)』を出して、
「これだ」

 と答えた。

 段階的にいえば、最初は刀、二回目はピストル、三回目は国際法ということになる。

 この変遷には、龍馬の、いってみれば、
「豹変の経過」

 がはっきり語られている。
「いま大事なのは刀だ」

 と言った時の龍馬には、ふたつの目的があったと思う。

 ひとつは、身分からの解放だ。土佐の商人郷士の家に生まれた龍馬は、土佐藩内における身分差別に苦しんだ。雨の日にも、彼らの身分では傘をさすことができないし、下駄を()くこともできない。草鞋(わらじ)履きで、(みの)・笠を被って雨を防ぐ。

 しかも、城の侍と出会った時は、ぬかるみの中に正座して、これが通り過ぎるまで平伏して見送らなければならない。城の武士は、そういう龍馬たちを見るとわざわざ近寄ってきて、下駄の端で泥水を顔に跳ねあげる。

 そういう屈辱に龍馬たちはじっと耐えた。後に、彼の盟友武市半平太(たけちはんぺいた)たちと土佐勤王党(とさきんのうとう)を結成するが、これは単に勤王精神の高揚(こうよう)だけにあったわけではない。
「土佐藩内における、身分差別の撤廃」

 という意図があったことは明らかだ。したがって、龍馬が、
「刀が大事だ」

 と言った時には、
「武士にならなければ、土佐では何もできない」

 という考え方が支配的だった。そのために彼は、江戸に出て有名な千葉道場に入って剣を学ぶ。めきめきと腕を上げ、やがては塾頭になる。当時の彼の考えでは、
「剣術が強ければ、城でも召し抱えてくれるだろう」

 というように、剣術の修行を立身出世に結び付けていた節がある。

“刀”から“ピストル”へ


 もう一つの目的は、当時の若者たちをはしか(ヽヽヽ)のように襲っていた、
攘夷(じようい)の実行」

 という思想にかぶれていたことだ。つまり、
「日本に近付く外国船は、片っ端から打ち払え」

 というものだ。

 龍馬は、江戸で剣術の修行中、この攘夷思想を堅く持っていた。ところが、日本人には変わり者がいて、すでに、
「攘夷などと馬鹿なことをいっていたら、世界の動きに遅れ、日本は孤立してしまう。それよりも早く港を開いて、外国と積極的に交流すべきだ」

 という開国論者がいた。勝海舟(かつかいしゆう)はその代表である。これを聞き込んだ龍馬は、
「けしからん、勝を斬って、みせしめにしよう」

 と、千葉家の息子と相談し気を合わせて、勝の家に行った。訪ねてきた二人を見て勝は、すぐ、
(この二人はおれを殺しに来たな)

 と感じた。そこでいきなり、
「おまえさん達は、おれを斬りに来たろう?」

 といって、龍馬と千葉の息子の度肝を抜いた。呆気(あつけ)にとられる二人を、勝は、
「あがれ」

 と部屋に連れていった。そしてそこに据えてある地球儀を見せた。クルクル回しながら、
「日本などという国は、これだけのものだ」

 と、小さな島を示した。呆気にとられる二人に、
「おまえたちは、井の中の(かわず)だ。なぜ日本の蛙になり、世界の蛙になろうとしないのだ?」

 とその視野の狭さを(しか)った。翻然(ほんぜん)と自分たちの非を悟った龍馬は、このときすぐ、
「間違っていました。わたしを門人にしてください」

 とコロリと勝海舟に参ってしまう。

豹変は「強い自己信仰」の産物


 そして、二回目の友人の問いに対しては、
「いまわれわれにとって大切なのは、これだ」

 とピストルを見せるようになる。

 これは、豹変以外の何ものでもない。攘夷論に()り固まり、同時に、
「自分の(こころざし)を実現するのには、まず武士にならなければだめだ。そのためには、剣術の修行が大切だ」
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