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「古の武術」に学ぶ
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第八章 体の感性を磨く

『「古の武術」に学ぶ』
[著]甲野善紀 [発行]PHP研究所


読了目安時間:26分
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人間の身体機能をいかに生かすか


 封建社会から近代社会へ、そして社会主義体制の崩壊と、社会の価値観や基準がめまぐるしく変わっていく現代、いま人間にとって何が必要かと言えば、それは自分にとってより納得のできる生き方――古風な禅的表現で言えば「肯心自ら許す」生き方であり対応の仕方であると思います。

 そして、その対応の原点に私は武術があると思っています。なぜなら、集団動物である人類は、生活していく上で必ず、人との対応と交渉は避けて通れないからで、武術というのは、その対応の煮詰まった形でもあるからです。

 私はかつて「武術稽古研究会」を創った時、「武術とは人間にとって切実な問題を最も端的にとりあつかうもの」と定義しました。

 そして、その切実な問題と向き合うには、自分のなかにオリジナルな価値観がつくられていなければならないと痛切に思いました。

 もちろん、オリジナルな、と言ってもそれは自分がいままで生きてきたなかで多くの先人や本などから受けた影響を整理構築してできたものであり、別に風変わりがいいというわけではありません。オリジナルな価値観とは、言葉の上では古くから言われている価値観とほとんど同じであったとしても、その古くからある価値観をただ無批判に信じ思い込んで自分の価値観としているものとは自ずから違ったものになっているはずです。

 もちろんそれは単なる我慢や“根性”などというものでつくり上げられていくものではありません。

 アメにつられ、ムチでおどされてつくり上げられていった価値観は、しょせんメッキにしかすぎません。自分のなかに一本確たる筋を通しつつ、状況がどう変わっても応じられる対応力を育てる価値観こそオリジナルと呼べるものであり、現代でも光を失わないものでしょう。

 ただ、武術という、生身の肉体を通してオリジナルな価値観をつくり、それを貫いていくためには、すぐれた稽古法が絶対に必要です。

 単に戦闘心を(あお)る粗暴な稽古をするぐらいなら、むしろ武術などやらないほうが、本人にとっても社会にとっても有益でしょう。私が、会の名称を「武術稽古研究会」と決めたのは、「稽古法にこそ、すべての鍵がある」と思ったからなのです。この稽古法はさまざまな技術と、その技を生み出す術理をも構築していくもととなるものであり、また、稽古を通して“学ぶ”ということそのものを考えさせ、稽古する者を自らの在りようへと向かわせるものです。


 この「武術稽古研究会」も、この「人間講座」(全八回 二○○三年十月八日放映開始〜十一月二十六日終了。本書の原本は、この講座のテキスト)の放映期間中であった、十月三十一日をもって私は解散しました。

 解散の最も大きな理由は、私の関わる分野が、スポーツ関係から、介護、音楽、舞踏、工学、教育等々、広範な広がりをみせて、武術という名称で私の行なっていることをくくることがそぐわなくなってきたことです。

 その他、肌で感じた「これはまずいな」という実感は、もともとさまざまな技術を生み出すために、最も実質を重んじた稽古会であったのが、私がNHKテレビに出演したことなどによって、いつの間にかある種の権威に似たものが発生し、これがブランド化しそうになってきたことです。

 そういったものへの帰属意識が、人間にある種の満足感を与え、誇りを持たせることは私自身かつて鹿島神流を学び、合気道の山口清吾師範の個人的な稽古場で稽古していた時に、はハッキリと自覚していただけによくわかるのですが、これは稽古する人にとっての励みとなると同時に、学歴等のブランド志向と同じように、本質を見失わせる最も大きな壁となります。

 また、そうした権威の中心に、一武術の研究者である私自身がいるということは、私のように自分の未熟さを痛感している者にとっては、抱えきれない重荷です。

 以上のような理由で、「武術稽古研究会」の解散を決意したのですが、そのことを知った畏友のG氏から、かつて世界的な覚者として著名であったクリシュナムルティ師が、星の教団を解散した時の宣言文を贈られ、私の解散の決意はいっそうかたまりました。もちろん、クリシュナムルティ師のような偉大な人物と私を重ね合せることは恐れ多いことですが、もともと道を求めるためにあったはずの組織が、いつの間にか組織のための組織となって硬直し、その組織によって多くの人が無駄な労力や、バカバカしい仕事に時間を費やしている現状がすくなくないように思われますので、そうした状況をなんとかしたいと思われている方々のために、その解散宣言の一部をここに紹介したいと思います。


 今日、これから私たちは、〈星の教団〉の解散について話しあいたいと思う。
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