「交感神経優位がアウェイ、
副交感神経優位がホームか……」(やく)
第四話 ムード作りの司令塔。独特の脳ワールド
脳はベンチ、からだはグラウンド
やく 以前おっしゃった三つのワールドのうち、今回は神経系のお話を伺いたいと思います。
先生 神経系のお話をするとなると、神経系を司る脳についての話をしなければ、ですね。
脳は、ほんまに唯我独尊というか、自分独自の世界を築いてるんです。外と接触を持たなくても脳だけでも生きていけるで、みたいなプライドを持ってるように私には映ります。
やく それでいて、からだの司令塔の役目をする。
先生 生きる上での基本パターンは、脳がなくてもできるわけです。ぎこちないけれども。そやけど、人間は脳が発達したことで、よりスムーズにかっこよく生きることができるようになったんです。そういう意味で、脳が果たす役割は大事なんです。
もちろん脳もからだの一部なんですが、脳と脳以外のからだのほかの部分は、ちょうど野球で言えば監督のいるベンチと選手のいるグラウンドみたいな関係です。
ロボットの動きを見たらわかるように、からだをうまいこと動かすことは大変なことです。連続性があって、しかもなめらかな動きをするのって、難しいことなんです。
やく そうですね。
先生 からだをしなやかに動かすことができるのは、脳の指令(ベンチの采配)のもと、からだの連携(グラウンドでのプレイ)がうまいこといってるからなんですわ。
脳からも胃腸と同じホルモンが分泌されている
先生 ホルモンに焦点をあてながら、脳の不思議ワールドを紹介しましょう。
実は、胃や腸で作られるホルモンのほとんどは脳でも作られるんです。
やく 脳と胃腸で同じホルモンがですか。
先生 脳と胃腸って、実は昵懇の仲なんですね。ブレイン・ガット・ホルモンと言われています。ガットは腸、ブレインは脳です。「腸と脳で作られるホルモン」という意味で、そんなホルモンがたくさんあるんです。
やく へえー。
先生 たとえば、胃で作られるホルモンの一つに、食欲を増す作用を持つグレリンがあります。グレリンのことは第一話でも紹介しましたが、グレリンは胃の近くの神経に働く胃出身のローカルなホルモンなんです。そしてグレリンで刺激された胃のまわりの神経が脳の食欲調節センターに命令を伝えます。