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第三章 免疫の話

『からだに、ありがとう』
[著]伊藤裕 [著] やくみつる [発行]PHP研究所


読了目安時間:36分
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「バイキングで食べ物を残すヤツに
読ませたい」(やく)

第五話  免疫のしくみ。あちら立てればこちらが立たず、ってことも

 

 
バイキング、初めてじゃないだろう!?

 
やく 私はカミさんと一緒に世界の秘境系を旅するツアーに参加するのを毎年の楽しみにしていまして、二〇一一年は東ティモール(*)に出かけました。
先生 行かはるのは、どんな人なんですか?
やく 参加者の職業などを伺わないことが暗黙の了解になっているのですが、私たちを除けば全員がマンション経営者に見えますもんね。年に五〜一〇回は世界旅行に出かけている人たちですから。

 一四人のツアーだったんですが、五十代前半の私たちが一番若くて、六十代がちょぼちょぼ、主力は七十代で、一番上は八十代という年齢構成でした。
先生 秘境に出かけよう、というくらいやからアグレッシブな方ばっかりなんでしょうね。
やく ツアー旅行は観光もさることながら、参加者を見ることも楽しいんです。ふだんだったらばとてもお近づきになりたくないような我の強い方、わがままな方、そういう方がたくさんいるんです。でも、せいぜい十日かそこら一緒にいて、あとはスパッと縁もなくなるというのだったら、むしろ「モンスター・ツーリスト」がいたほうが面白いんです。まあ、わけても今回はモンスターが多かった。
先生 ほう(笑)。
やく ともかく文句が多い。

 添乗員さんも寝入るぐらいの時間帯に「部屋が気に入らないので変えろ」とか。辺境旅行に慣れているはずなのに、免疫(めんえき)をまるで持ってないじゃないか、という人たちばかりでした。

 それに、バイキング料理を何百回と食べてきた経験があるのに、片っ端から食べきれない量をとってくる。わざわざバナナを房からもいできたにもかかわらず、まったく手をつけない。「もいでくんなよ」と思うんですけど。
先生 今、やくさんが言われたように、すでに一度経験していて、そのメモリーをもとに、次に同じ目にあったときは、より適切に対応できる力を持つ、というのは、免疫という言葉の説明にぴったりなわけです。

 

 
(あご)ができたから獲得免疫が必要になった

 
やく 免疫があるとか、ないとか言いますが、免疫とは何かの物質のことをいうのですか? それとも能力ですか?
先生 免疫の働きを具体的に言いますと、細菌やウイルスなどの外敵や、がんなど健康を損ねるからだの異分子を排除しようというしくみです。

 異分子を見分ける力がしっかりしていることが、免疫の働きにとって大切なことです。

 たとえば、がんは自分のからだの細胞が変異したもんやから、正常な細胞と違うやんか、怪しいな、と認識せんと攻撃はでけへん。

 その証拠に、がんの悪性度は、がん細胞が増えるスピードもありますけど、自分の細胞とどれだけ似ているかにもよるんです。がん細胞の顔が正常な細胞の顔に似ていればいるほど区別しにくいわけです。

 一方、免疫のしくみが判断を間違って暴走してしまうと、アレルギー症状が起こるわけです。
やく 免疫の話って奥が深そうですね。
先生 免疫には二つの種類があります。一つは、生まれたときから誰もが持っている「自然免疫」と、もう一つは、一度経験したことで得られる「獲得免疫」というものです。

 自然免疫というのは、核を持った生物やったら基本的に備わっているもんです。

 獲得免疫は、脊椎(せきつい)動物だけが持つシステムです。しかし、脊椎動物の中でもヤツメウナギのような(あご)のない魚の仲間は、抗体(再びやられたときに、すぐに免疫のしくみを働かせる見張り役)を作り出せるちゃんとした獲得免疫は、まだ持ってへんのです。
やく 円口類(えんこうるい)
先生 そうそう。顎がない魚で今まで生き延びているのは円口類だけなんですが、彼らは顎と歯がないので噛めへんのです。ほなどうして食べるかっていうと、ほかの魚にひっついて体液を吸い出すしかないんです。

 顎を持つようになり歯が発達してきたことで、生物は二つ獲得したものがあるんです。やくさん、クイズ番組によう出てはるから、質問形式でいきましょか。この二つ、なんやと思います?
やく ウウーム。
先生 一つは胃なんです。吸い出すだけやったら胃はいらへんけど、歯で噛んで食べるとなったら胃が必要になります。そのことで、食べ物と一緒に胃や腸に雑菌が入ってきて、そこに住み着くもんも出てきました。これが腸内細菌のルーツですわ。

 そんなわけで、からだの中に雑菌がいっぱい入ってくるようになったために、自分のからだを守らなあかんということになり、有害なものと戦う優秀な免疫、つまり「獲得免疫」を手に入れたんです。

 もう一つは、しっかり食べられるようになって、生物は長生きできるようになったんです。胃や腸ができたことで、エネルギーをたくさんとることが可能になったからですわ。

 すると、生きているうちにまた同じ「いやなやつ」「やっかいなやつ」に出くわす機会が出てきてしもた。そしたら「獲得免疫」があったほうが断然有利やったんですね。

 
活性酸素が免疫力の武器となる

 
やく 免疫の働きの武器となるものはなんでしょうか?
先生 免疫のしくみは複雑なんですけど、直接的にやっつける武器となるのは活性酸素です。活性酸素については別の項で詳しくお話しすることになりますが、その酸素毒で細菌やウイルスやがん細胞をやっつけるわけです。

 やくさん、からだの中で活性酸素が一番できやすいとこってどこやと思います?
やく 外から入ってくるものが多い場所、でしょうか?
先生 正解ですわ。

 活性酸素を出せ、という指令を出す免疫を担当する主な細胞はリンパ球ですが、リンパ球の補給路であるリンパ管がどこに発達しているかというと、からだの内と外との境目にあたる場所なんです。

 リンパ球が一番多いのは、実は腸なんですわ。腸って引き伸ばしてみるとテニスコート一面分くらいの広さがありますが、それぐらいの広い面積が外の世界に触れているわけです。

 そこで、腸の粘膜の下にはリンパ球がたくさん待機していて、細菌やウイルスなどを見つけると活性酸素で攻撃してやっつけるわけです。

 ちなみにリンパ球同士もホルモンのような物質を出し合って、お互いに情報交換をして、必要に応じて強力なものに変身をするんです。
やく リンパ球も賢いんだ。
先生 からだの外と内を区別している場所を専門的には上皮(じようひ)系っていいますが、実は、がんはそこにできるものが一番多いんです。まさに、リンパ球が侵入者と戦う水際の場所で、そこで武器として使われる活性酸素によって、我々の細胞の遺伝子がエラーを起こしてしまうんですね。
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