「電解質のことがなんとなくわかった。
私立文系なのに」(やく)
第十二話 骨とカルシウム。奥が深〜い骨のワールド
ガシッとした骨組み役だけじゃない骨の働き
やく 実は私、カルシウムをとるのが骨によいというので、牛乳を毎日飲んでいます。というか、それぐらいのレベルでしか骨に気を遣ったことがないですけれども。まして、骨密度の測定もしたことがないですし。
先生 多くの人がそうやと思います。
やく そこで、まずは骨の働きについて勉強したいと思います。
先生 骨にはいろいろと大切な働きがありますが、まずはガシッとした骨組みでからだを作るということですね。
そして骨格を作ることで脳や内臓などを守ることができます。
それから、骨についている筋肉が収縮することで、我々は動くことができるんですね。
それと案外知られてないことやと思いますけど、前に紹介したように骨で赤血球や白血球などの血球成分が絶えず新しく作られています。これは専門的には造血作用というんですけど。
え〜と、これで四つですね。
やく さらにあるんですか?
先生 骨はカルシウムやリン、ナトリウム、カリウムなどを蓄える貯蔵庫の役目もしてるんです。とりわけカルシウムの貯蔵庫としての役目が大きいので、骨といえばカルシウムとなるわけですわ。
やく こんなにたくさんの役目を果たしているとは驚きですね。
骨で血液が作られる、という話はリンパ系の話(第六話)でちらっと伺いましたね。
先生 そこでも触れたように、血液は、血漿あるいは血清といわれる液体の成分と、血球成分とで構成されています。そのうちの血球成分が骨の中心部分にある赤色骨髄という場所で作られるんです。
やく ベタな質問ですけど、血液の液体成分というのは、どこで作られるんですか?
先生 血漿のベースになるのは、我々が飲む水ですわ。そこにタンパクも溶けているし、カルシウムやナトリウムなども溶け込んでいるんです。
実は血液をはじめ、からだの液体成分は海水の構成とよく似ているんです。
やく そんな話も聞き及んでいます。
先生 人類の祖先が海の中にいるときは、まわりの海水を利用すればよかったんですが、陸に上がって生活し始めるとなると、からだの中に海水プールを持たなあかんかったわけです。
からだの中の海水プールに圧倒的に多いのは塩化ナトリウム、つまり塩ですわ。なんで海水プールに塩が一番多いんや? カルシウムやカリウムやったらいかんのか、という話にもなりますが、その理由についてはようわからへんのです。ただ海水と似るからには塩が多くないと生命体としての活動ができへん、ということやろと思います。
やく なるほど。
先生 先ほどから話に登場しているカルシウム、ナトリウム、カリウムなどは電解質というもんです。
多くの人は電解質と言われても、ピンとこないかもしれません。
やく モロ、理科系ワールドです(笑)。
先生 電解質は液体に溶けることで、イオンになります。
詳しいしくみは次の項で触れますが、電解質はからだの働きに欠かせへん大切なもんなんです。
カルシウムを例にとりましょう。かいつまんで説明しますと、カルシウムが細胞の中に入ることで、細胞のいろいろな活動のスイッチがオンになるわけです。
カルシウムはホルモンを分泌するときにも絶対欠かせへんもんですし、酵素もカルシウムによって初めて働きだします。
脳が調節する骨のカルシウム量。骨からはホルモンも分泌される
やく 先ほどのからだに海水プールを抱えている、という話からすると、からだに一番多い電解質は塩ですか?