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(2021/11/26 追記)

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女は「依存」で、いやされる。
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くらし
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四章 生活力

『女は「依存」で、いやされる。』
[著]衿野未矢 [発行]PHP研究所


読了目安時間:42分
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掃除にハマる


 私たち女性は「家事は女の仕事」という“社会常識”のおかげで、長年にわたって苦労を重ねてきた。夫婦そろってフルタイムで働いていても、家事の大半は妻が担っているというケースは少なくない。子どもがいれば、家事の手間は倍増する。しかし家事や子育てに参加しているという男性に内容を問うと「休日に子どもと遊ぶこと」と答えたりする。育児休暇を取得する男性は、ごく少ない。

 恋人と同居しているのに、なかなか結婚に至らずにいる女性に理由を聞くと、「家事は平等に分担する約束だったのに、結局は、私が大半をやらされている」という不満を持ち出すことがよくある。

 それに、たとえば片づけや掃除は、「汚れた部屋をきれいにする」、つまり後始末をすることであって、何かを作り出すような、積極的な行為だとは感じられない。これだけ便利な社会に生きているのだから、わざわざ料理をするのは、時間と手間のムダにも思える。人目にふれる外出着はピシッとアイロンを当てる必要があるが、シーツの洗濯など、後回しでいいじゃないか。

 そんなわけで、家事には、どこかネガティブな印象がある。しかし、過不足のない栄養、睡眠、休養、運動がバランスよく配分された日々を送る【生活力】の有無は、人生の明暗を分けるのではないだろうか。【生活力】とは、具体的には、次に挙げるチカラのことである。

・快適な住環境を維持するチカラ
・身体が必要としている栄養素を摂取するチカラ
・一晩の睡眠で心身をリセットするチカラ
・うっすらと汗をかく程度の運動を習慣にするチカラ
・お金が残る生活をするチカラ


 世界的な不景気が続き、国際問題が次々と起こり、政局もコロコロ変わって、想像もしなかったような事件が立て続けに報道され、変わらないのは「出て行くお金が増え続けることだけ」という現代は、ごく普通に暮らしていたって、ストレスフルである。まずは「快適な住環境」を作り上げ、世の中に出撃する準備を整えようではないか。

 服装を変えれば、気分も変わる。まして「寝起きをする部屋」の環境は、気分に大きな影響を与える。掃除とは、自分が心地よいと感じられる空間を作り上げる、クリエイティブな作業なのだ。汚れた部屋を片づけて、後始末をすることだという決め付けを、まず捨てよう。

 都内で一人暮らしをしている会社員の真弓さんは、二十五歳。大学を卒業して就職したのをきっかけに、それまで暮らしていた実家を出て、ワンルームマンションを借りた。荷物の大半は実家に置いたままだ。月に二度ほど実家に向かうのを、真弓さんは「家に帰る」と呼んでいた。
「一人暮らしは、いずれ結婚するまでの仮住まいのつもりです。だから、自分の家という感じがしなかった。それに『どうせ借り物だ』という感覚が抜け切れず、きちんと手入れして、耐用年数を延ばそうなどとは思いもしません。それでもキッチンは、不潔にならないよう気をつけていますが、バスルームの掃除は、ひどい手抜き。シャンプーやトリートメントのボトルが乱雑に並び、鏡はくもっていて、排水口には髪の毛がからまっていました。夏になると、クーラーのせいでひどい冷え性になります。ゆっくりお風呂に入ったほうがいいと思い、入浴剤を買い込んだりするんですが、乱雑なバスルームでは、ゆっくり入浴する気になれません。ついシャワーですませてしまう。入浴剤が、また散らかる原因になったりして。とはいえ、本気で掃除をしようとは思いつきもしませんでした。バスルームの汚れなど、自分はそう気にならないほうなんだと、思い込んでいたんです」

 転機となったのは、友人に誘われて出かけた都内の銭湯だった。レトロな建築で、番台や籐のカゴがある、昔ながらのスタイルが新鮮だったそうだ。
「すごく、すごく気持ちがよかった。あまりにも気持ちがいいので、お湯につかりながら、その理由を考えてみました。浴槽が大きい、天井が高いというのもありますが、清潔なのも重要だなあと気がつきました。洗い場から浴槽に向かうとき、タイルの床がキュッキュッと鳴りました。洗い場の桶や椅子もピカピカ。建物は古いけど、すみずみまで掃除が行き届いているんです」

 帰宅して、ワンルームマンションのバスルームをのぞいてみた。新築で入居したから、まだ三年しか使っていないのに、築何十年の銭湯より、ずっとみすぼらしく感じられた。
「私は不潔なバスルームが平気だったわけじゃない、我慢していたんだと気づきました」

 次の週末に、真弓さんはバスルームの大掃除をした。浴槽や床がきれいになると、シャンプーのボトルの底のぬめりまでもが気になり、こすり落とした。
「汗をかくだろうと思ったから、服を着ないで掃除しました。きれいになったお風呂に、とっておきの入浴剤を入れて身体を沈めたとき、嬉しさと気持ちよさで『はぁぁぁ〜』と、ため息がもれました。いったん大掃除をしておくと、それからは、手入れがとても楽になったのが、意外な収穫でした。お風呂に入るついでに、『今日は床のこのあたりをきれいにしよう』など、ちょっとずつ掃除するだけで、清潔が保てるんです。ゆっくり浴槽につかったあとで、床をスポンジでこすっていると、たくさん汗をかきます。それを洗い流して、また浴槽につかると、身体のしんから温まります。掃除ついでに長湯を楽しむのが、習慣になりました」

 掃除をしない期間が長くなればなるほど、次の掃除には、大きな労力が必要になる。だからおっくうになり、なかなか掃除にとりかかれない。そうするうちに、「掃除とは、日常生活の一部ではなく、重い腰をヨッコラショと持ち上げて、一日がかりで取り組む大仕事である」というイメージが出来上がってしまうのだ。

 真弓さんと同じように、苦痛だった掃除が楽しくなったという経験をしたのが、三十一歳の洋子さんだ。出版社に勤める彼女は、バリバリと仕事をこなすタイプで、家事をする姿は想像がつかない。
「平日は仕事に追われていますから、帰ったら寝るだけです。リビングには新聞や雑誌、脱いだ服が散らばっています。キッチンにも、使いっぱなしのコーヒーメーカーや、パンくずだらけのトースター、洗ってないお皿があります。ソファも新聞や服に占領されていますから、それをガサッとベッドの上に移動して、テレビを見ます。寝るときは、ベッドの上のものを、ソファに戻すんです。翌朝、またソファからベッドへと荷物を移動して、朝食をとっていました」

 その状態は、以前も今も、変わらない。とはいえ現在の彼女は、土曜の朝、目がさめると同時に、それらを片づけるのが「休日のお楽しみ」とまで言い切る。月曜、火曜と過ぎていくうちに、部屋は散らかっていくけれども、土曜の掃除が一時間以内に終わる程度でおさまっている。ソファとベッドの上とを往復する荷物の量も、ぐんと減った。かつては両手で抱えるほどあり、二度に分けなければ運べないこともあったが、今は片手ですむ。
「金曜の晩にゆっくり寝たぐらいでは、平日の疲れが抜けません。土曜の朝……と言っても、起きるのは十時過ぎですが、頭はボーッとしているし、シャキシャキとは動けない。ゆらゆら、のろのろという感じで、片づけをするんです」

 二十八歳のとき、洋子さんには恋人ができた。彼は抜け毛が落ちているのを見つけると、何枚も重ねたティッシュでつまみあげて捨てるようなタイプである。ドライブに出かける前、そして帰ってきたあとにも、充電式のクリーナーで愛車の中をきれいにする。そんな彼に対して、リビングが散らかっていては恥ずかしい。乱雑な寝室では気分が盛り上がらない。仕方がなく、掃除をした。
「そのころは『せっかくの週末を、掃除に費やすのはもったいない』と思っていました。
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