冬眠とは何か。おおよそのことは広く知られているが、具体的に生物がどういう状態になることをいうのだろうか。
『岩波生物学事典』によると「動物が生活活動をほとんど停止した状態で冬を過ごすこと」とある。シマリスなど冬眠する種類のリス(冬眠しないリスもいる)を例に取ると、春から秋の活動期に比べて、冬眠中は代謝量が三〇分の一から五〇分の一にまで低下する。
バイタルサイン(生命徴候)でいえば、体温は通常の三七〜三九℃から冬眠中は二〜一〇℃に低下し、心拍数は毎分二〇〇〜三〇〇回から三〜五回に、呼吸数は毎分一〇〇〜二〇〇回から四〜六回へと激減する。こうして、生命活動をいちじるしく抑えて、えさのない冬を「眠って」やり過ごすのが冬眠である。
人工冬眠で惑星間旅行へ
「冬に眠る」と書くものの、冬眠は明らかに通常の睡眠とは異なり、どちらかというと仮死状態に近い(図1)。ただし、仮死状態というのは通常事故か何かで引き起こされるのに対して、冬眠は導入時も覚醒時も自発的なものである。
研究者らの間では、一般に「体温が一〇℃以下に下がり、それが一日以上続いた後、自力で元の体温にもどる」(『冬眠の謎を解く』岩波新書、近藤宣昭著より)ことが冬眠の条件とされてきた。