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がんに負けない心理学
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第3章 正しいことよりも楽なことをしよう

『がんに負けない心理学』
[著]和田のりあき [発行]PHP研究所


読了目安時間:22分
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告知や治療結果を一人で聞かない


 治療の開始から三週間のあいだに、主治医や担当の看護師さんから検査結果や治療、看護方針の説明を受けることになります。そのときは事前に○曜日の○時から説明があることを伝えられるので、それなりの心の準備はできるはずです。が、それが案外難しい。自分の病状やこれから先に何が起きるのか、「聞きたい」と「聞きたくない」という、相反する気持ちが起こります。
「検査の結果、たいしたことはありませんでした」という医師からの言葉を期待するのも事実です。また一方で、「結果は悪いので、これから先さらに厳しい状況になります」と言われたらどうしよう、と心が揺れるのです。

 実際の説明は、データや治療法など客観的というか、生物の授業を受けているようで、事前に予想したような情緒的な雰囲気のものではありませんでした。このときの説明で、現在の病状、今後のリスクや見通しについて大切な情報が与えられます。ところが、冷静に理解しようとしても、期待や不安という情緒面が先走っているので、聞いているようで聞いていないのです。決して「(うわ)の空」という状態ではありません。自分にとって都合が良い情報は耳に入るのですが、ややこしそうな話になると耳は勝手にふたをする、そんな感じになるのです。私の場合は、常に妻と一緒に聞きました。

 抗がん剤治療を受けて二週間経過したころ、こんなことがありました。お風呂に入っているときに髪の毛がゴソッと抜け出したのです。シャンプーすると指の間に何本もの髪の毛が絡んでいるのです。副作用であることは治療開始前の説明で知っていました。ところがそれがどのようなものか、詳しくは理解できていませんでした。

 治療を開始してもこれといった副作用がなく、内心では「いける。おれは大丈夫」という妙な自信があったのです。ところがこの出来事で急にそれはしぼんでいきました。

 そうなるとお風呂に入っていても体が冷えてきて、大声で妻を呼びました。抜けた髪を見せると、副作用のこと、治療を開始してこの時期に起きること、副作用の中でこれだけは必ず起きると主治医から説明があったことを教えてくれました。つまり「想定内のことだから大丈夫」というのです。
「いったいどこで情報を集めたの?」

 と尋ねると、
「入院して治療開始前に先生の説明があったわよ。あなたも聞いていたじゃない」

 とのこと。私の中に残っているのは、
「副作用で髪が抜ける」

 という情報だけです。そしてその説明を受けたときは、
「命が助かるのであれば、髪が抜けるくらいなんてことはない。丸坊主でもいい」

 と思っていました。そのことは記憶にあるのですが、妻の言う情報を聞いた覚えがないのです。じつは、これと同じ出来事はその後も何度かありました。事前に説明を受けたのに、それを知らない(覚えていない)ので不安になる。それを妻に言うと「想定内のことだから心配いらない」というパターンです。

 最初に受けた告知がそうでした。「胃がんの第四ステージ」という説明を、私は「胃がんの末期症状」と受け取っていたのです。だから「手の施しようがない」状態であると思い込んでしまいました。いったんそう受け取ってしまうと、どんなに丁寧な説明を受けても、そのあとから入ってくる情報を中立的に受け取ることが難しくなります。
「今の元気な状態をできるだけ維持できるように治療する」

 という説明を、
「余命わずかなのでその間だけでも元気でいることができるよう治療する」

 というふうに受け止めてしまったのです。もちろん、その場で質問したり受け取った情報を確認するといったこともできたでしょうが、正直そんな余裕はありませんでした。

 いったん病院を離れ、自宅に戻って夫婦で話し合ったときにようやく、妻の話から自分の受け取り方や情報不足に気がついたのです。

 医師からの説明のときには、しっかり聞こうとしていたことは事実です。そのときには「頑張ろう」と張り切っているけれど、大切な試合で力を出し切れないスポーツ選手みたいなものかもしれません。
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