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ルポ・エッセイ
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文庫版の序に代えて

『一冊の本』
[著]扇谷正造 [発行]PHP研究所


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 この本『一冊の本』は、初版が昭和五十一年四月二十日に刊行され、つづいて五十四年一月二十日第六版が発行されている。この種のものとしてはかなり売行きのいい方である。

 十年前の本であるが、いま読みかえしてみても、ちっとも古い感じがなく、なかには、きわめて今日的なものもある。それというのは、とりあげられている本に、古典が多く、筆者にその人を得ているからであろう。

 出版の動機はあとがき(旧版)にも記しているようにこうである。エッセイスト・クラブの主な事業に、日本エッセイスト・クラブ賞の授賞というのがある。金額はわずかだが、毎年各紙が大きくとりあげてくれ、今日では広く世間に知られている。それまでは、その資金を出版社や新聞社などの寄金によってまかなわれていたが、ある日、会員自身のエッセイ集を出し、その印税によって、賞金のタシにしようじゃないか、ということになり、幸いPHP研究所の協力を得て実現した。以来すでに十八冊を出し三十余名の新人を世の中に送り出している。


『一冊の本』というのは、自分の生涯においてめぐり合った一冊の本ということである。作家の故山本周五郎氏のことばに、
「この世の中には無数の教訓がチリバメられている。しかし、どの一つをとってみても、万人にあてはまるというものはない。ある日、ある時たまたまめぐり合ったことばが、チカチカチカと胸に灯をともした時、そのことばは、その人にとって教訓となる」

 ということば(『赤ひげ診療譚』)があるが、読書もまさにそれである。この世の中には無数の本がある。しかし、その人にとってある本だけが、“一冊の本”となる。座右の書というのがそれである。まことに読書と恋愛とはめぐり合いであるというが、同感である。

 そして、それらの本は何回も読み返す。そのたびにいつも感動が新たになる。
「生涯において、くりかえして読み得る一冊の本を持ち得る人は、しあわせな人である。そして、そういう本を何冊か持ち得る人は至福の人である」(モンテルラン)ということばは、味わい深いことばである。

 三十二人の筆者があげられた“一冊の本”は、多彩である。『枕草子』『行人』『わが共和国』『つゆのあとさき』『戦艦大和ノ最期』『李陵』『一握の砂』『真実はかく佯る』『唐詩選』『風とともに去りぬ』『月と六ペンス』『日本書紀』『人を動かす』『呉清源特別棋戦上・下』『徒然草』……まことに、小説ありエッセイあり評論ありである。しかもその一冊一冊は、それぞれ筆者にとって、人生のある瞬間において、チカチカと胸に灯をともした本なのである。そこに人生におけるある白熱した瞬間をさえ感じさせる。そういう意味では本書は、本に託したすぐれた人生論ということができるであろう。



 十年ひと昔というが、初版発行以来今日まで三十二名の執筆者のうち十人の方がお亡くなりになっている。玉川一郎、林謙一、古谷綱武、澤村三木男、高木健夫、狩野近雄、藤田信勝、芥川比呂志、江上フジ、渋沢秀雄の十人の方々である。本書を読みかえしつつ、故人の温顔、温声が、それぞれ目に浮かび耳に響き、しばし追想にふけった。謹んで心からご冥福をいのりたい。

 また本文庫の刊行にあたり、PHP研究所の星雄一、小林久広両氏のご協力を得た。これまた記してお礼を申しあげたい。と同時に、この手軽な文庫本によって、読書離れを伝えられる若い人たちが、すこしでも読書というものに興味を持ち、それがひき金になって読書ファンになってくれたら、筆者の喜びこれにすぐるものはない。まさに「読書週間を読書習慣に」である。広くご愛読を乞う次第である。

昭和六十一年 盛夏
扇谷正造


生涯において、くりかえして読み得る一冊の本を持ち得る人は、しあわせな人である。
そして、そういう本を何冊か持ち得る人は至福の人である。
―― モンテルラン
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