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(2021/11/26 追記)

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詳しくはこちらでご確認いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

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一冊の本
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ルポ・エッセイ
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一冊の画集 林 謙一

『一冊の本』
[著]扇谷正造 [発行]PHP研究所


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 いつも傍に置いて離さない“一冊の本”は、私にもある。

 パリ七区バック通り九十番地セクル・ダール社版の「マルケ」の画集である。


 もう二十六、七年前にもなろうか。あるグループの展覧会に、私は二点の油絵を出していた。中学三年生の時から描き続けてきている油絵だが、途中新聞記者生活や戦争で、何遍か中断していた。戦後になってあまりの荒廃に、潤いを求めて猛烈に絵を描き始めた。

 友を誘いグループを作り、年二回の展覧会をデパートで開いた。その時、記者時代からの旧知、宮本三郎夫妻が買物のついでに、立ち寄ってくれた。
「どれどれ、拝見しましょ。林さんのは?」
「あの隅の二枚ですがね」

 宮本さんは、私の「雪の小名木川」と「館山港」の二枚の前に立ってしばらく眺めてくれた。
「寒い。寒い、ね、この雪景色は。これでいいよ。あなたの絵とそっくりで、百倍もうまい絵を描いてる人、知ってる? フランスの画家で……。そう、やっぱりこんな調子の水辺の絵」
「知りませんね」
「知らないで描いてるの? アルベール・マルケって人」
「知りませんよ」
「こりゃ面白いね。知らないの? それじゃ体質的に同じ絵を偶然に描いてたってことね」
「なんていう人ですって?」
「アルベール・マルケ」

 私は手帳を出して書き止めた。
「マルケはね、M、A、R、Q、U、E、T。フランスの人はマーッケって発音してますがね。マチスの相棒みたいなつき合いをした人です。
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