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なぜローマ法王は世界を動かせるのか インテリジェンス大国バチカンの政治力
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政治・社会
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第4章 インテリジェンス大国バチカン

『なぜローマ法王は世界を動かせるのか インテリジェンス大国バチカンの政治力』
[著]徳安茂 [発行]PHP研究所


読了目安時間:25分
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世界中に張りめぐらされた情報ネットワーク



 法王庁には、正式な外交使節(在外公館)からの情報のみならず、世界各地に根を張った司教区や末端の現地の教会から上がってくる膨大な情報が蓄積されているといわれている。


 そうであろう。なにしろ世界中のどこにおいても、現地情勢にかかわる情報収集と分析では、極端なことをいえば2000年以上の歴史と経験を有するのがバチカンなのである。とくに欧州の中世においては教会組織が網の目のように社会の隅々に行き渡り、各地の教区でその土地の民衆と生活を分かち合い、奉仕活動を続ける聖職者たちの生の声がまとまった報告として法王庁に届けられていた。その結果、バチカンは他の追随を許さないインテリジェンスの一大集結地となったのだ。


 さて、本書では「インテリジェンス」という言葉を使うが、昨今(ちまた)に氾濫している感のあるこの言葉について簡単に説明しておきたい。インテリジェンス(intelligence)とは単なる情報(information)とは違い、付加価値のついた特殊情報(諜報)を指す言葉であり、元来は軍事や安全保障分野で、国の重要決定に影響を与える機密情報を意味していた。それは種々雑多、千差万別の情報のなかから選別し、その意味を解釈するかたちで精錬した情報といってもよい。


 米国の有名なスパイ組織CIA(Central Intelligence Agency)は日本語で「中央情報局」と訳されているが、これはインテリジェンスにあたる適当な日本語がなかったためと思われる。したがって、正確には「中央インテリジェンス局」とでも呼ぶべきものであろうか。CIAの真ん中のIはInformationの「I」ではないのである。もちろん言葉は生き物であり、時代により意味合いを変えていくものではあるが。


 似たように便利な使われ方をしている言葉に「戦略(strategy)」という語がある。もともとは狩猟などの際に最大の成果をあげるため、用意周到な全体計画を策定したことが始まりであるらしい。その後、軍事用語に転用されたが、大英帝国を支えた英国海軍は世界中の植民地の維持・経営にあたり、その戦略を基盤として、限られた数の艦船を効率的、重点的に運用した。なかなか使い勝手のいい言葉なので、なんとなくわかったような気がして誰もが使いたがり、企業戦略、販売戦略、受験戦略などの語が氾濫している。


 さて、バチカンに話をもどす。


 現在のバチカンにはもちろん、米国のCIAや英国の情報局秘密情報部MI6(軍情報部第6課)のような専門の諜報機関が存在するわけではない。また、宇宙空間から光センサーを使って高画質の衛星写真を撮影し偵察活動を行なう「情報収集衛星」のような、最新の科学技術の(すい)を駆使した手段もない。


 しかし、現場の人間の目と耳を使って収集される、いわゆる「ヒューミント」(人的情報収集技術)の分野においては、先述したように、気の遠くなるような過去から世界各地に根を張った独特の情報収集システムを保持しているのがバチカンである。一見するとアナログな情報収集は古くて役に立たないように思われるが、2003年の米軍によるイラク侵攻を契機に、改めてヒューミントの有用性に米国をはじめとする多くの国が気づかされた。


 当時、米国とその同盟国は、サダム・フセインのイラクが、核兵器などの大量破壊兵器を隠し持っていることを最大の理由として軍事介入を決定したが、戦争終了後、大量破壊兵器はどこにも発見されなかったという大失態を演じている。これは当時の米国のインテリジェンス・コミュニティ(情報機関共同体)が、情報収集衛星写真や通信傍受などの科学的情報収集手段に頼りすぎ、ヒューミントを軽視した弊害が出たと指摘されている。この反省もあり、いまでは各先進国でヒューミントが見直されており、バチカンが長年培ってきた情報収集手段が普遍的なものだったことが改めて確認できる。


北朝鮮に入り込むカトリック



 バチカンのインテリジェンス能力は世界の隅々におよぶ。これは外部から閉鎖された北朝鮮も例外ではない。


 ()()問題や核ミサイル開発問題などで、わが国につねに喫緊の課題を突きつけている北朝鮮に関しては、バチカンにとっても関係正常化への道筋は困難かつ長いのが現実だ。しかし、この極めて特殊な国とのあいだでも、表の関係は途絶えたままだが、非公式な対話のチャンネルはしっかり保持されている様子がうかがえる。

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