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禅と脳 大脳生理学と宇宙物理学から「さとり」を科学する
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生き方・教養
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第一章 仏性と【いのち】

『禅と脳 大脳生理学と宇宙物理学から「さとり」を科学する』
[著]中山正和 [発行]PHP研究所


読了目安時間:27分
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 智恵とコンピュータ


 達磨大師は「直に本分に契当する」といいましたが、この「本分」というのは何か? 自己の本分は自分の本来の姿ですから、「本来の自己」。禅では「(ちん)(ちよう)()(ほう)の自己」などと難しいことをいいます。この宇宙がまだ形を整えない以前の自分、ということですから、自己の本分というのはそこまで遡らなくては分からないのかも知れません。


 そこでわれわれは「理入する」と宣言した手前、単刀直入に自己、つまり「私」がいまここにいる、そこに至るまでの歴史を辿ってみましょう。

「私」は人間です。その人間は猿から「進化」したといいます。猿はケモノですがケモノの前には恐竜みたいなものがいて、その前にはナマコとかウミユリ、もっと前にはアミーバ。つまりこれは進化の歴史です。


 ここでちょっと、この「進化」ということを考えてみます。何のためにこうしたことが起きるのでしょうか? それはこれらの生き物が「よりよく生きていこう」とするからでしょう。自分の「いのち」をよりよく保つためにいろいろな「工夫」をした、知恵を出したということです。が、それではこの「知恵」とは何でしょうか? 知恵を出すということになると、その知恵のもとになる「記憶」がなくてはなりません。その記憶はどうして現われてきたのか?


 われわれはいまコンピュータというものをもっています。何も大型の複雑なものを考える必要はありません。ポケット計算機で結構です。あれは、1,2,3……というふうにキーを押してやれば、消去のキーを押すまでは表示しつづけます。「記憶」しているわけです。「12」と押して「+3」と続ければ前の12にあとの3を「加えて」答は15という「計算」をします。これは一種の知恵でしょう?


 もちろん、コンピュータがこんな能力をもっているのは、そういう動作をするように人間がその電子回路を「設計」しておいたからです。12という「信号」が送られてきたらまず12を記憶しておいて、そのつぎに+という信号がきたら、つぎに来る信号を加える準備をしておけ、ということ。そこで3が送られてきたらこれを加えて15を出せ、と、そういう「プログラム」を人間が作っておいたのです(第一図)。このばあい、12とか+とかを表わす信号はすべて「パルス」といいますが、これは瞬間的な電気信号によります。このパルスが送られれば「1」、送られなければ「0」として、いわゆる二進法で何が送られてきたかを表わすようにできています。



 ところで、動物というのは動きます。自分から動いてエサを探さなければ生きていくことができないのです。そのためには「感覚器官」と「行動器官」をもっていなくてはならないのですが、このはたらきはまさにコンピュータと同じようにできているのです。感覚器官に何らかの刺激が与えられると感覚器官はインパルスというパルス信号を送り出します。このインパルスは神経線維を通って行動器官に送られます。ごく下等な動物はこんなところで、ただ特定の刺激に対して特定な行動をするのに止まりますが、ムシぐらいになりますと、この感覚器官と行動器官の間に「神経節」というものが現われます。電話でいえば交換局みたいなもので、いろいろな感覚器官から送られてくるインパルス信号(入力信号)を振り分けてそれぞれの適当な行動器官に送りつけることになります(出力信号)。どういう入力信号をどういう出力信号に変えるか、ということについては「プログラム」が必要なので、もちろん、動物にとってはそれは「よりよく生きる」ためのプログラムであるはずです。食物が口に入ったら消化器官がはたらきだす、火が近付いてきたら逃げる、こういうことは自動的に行なわれることで、「本能的」な行動といわれます。自然界のことですから、こういうプログラムは誰が作ったのでもない、そういうふうにできているのだから仕様がないのです。しいていえば、このプログラムは神さまがお作りになったものなのでしょう。


 そこで、さらに動物が進化してサカナとかカエルのようなものになりますと、この神経節がいくつか集まってきて一カ所にまとまってきます。電話局でいうならば中央統括局とでもいった形になるわけで、これを「脳」と名付けます(第二図)。全身に分布した感覚器官(正確には感覚細胞)につながった神経線維はすべてこの脳に集められて、ここでこれらの信号は脳にあらかじめ組み込まれているプログラムにしたがって「計算」され、それぞれの行動器官(行動細胞)に信号を送り出します。



 この関係は第一図のコンピュータと全く同じです。実際にサカナやカエルぐらいの動物なら、それと同じように行動するロボットは「原理的には」設計可能なのです。金と時間がかかる割には役に立たないから誰も作りはしませんが。


 こうして、動物が「生きている」だけのはたらきをする脳はコンピュータに置き換えることができます。

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