私がまだ会社勤めをしていたころのことである。四十年くらい前であるが、輸出入の業務に関する財務関連の仕事を主にしていた。ある日、営業の担当者が駆け込んできて、輸入するスクラップを積んだ船が太平洋で沈没したというニュースを伝えた。確か台湾の船舶であったと思うが、元々解体してそれこそスクラップにする寸前のボロ船であったという。
それに対して、私の上司が真っ先に聞いたのは、保険が掛けてあったかどうかについてであった。それを確認した上司は、即座に一件落着という感じで安心した様子を見せた。
普通には、スクラップを一杯に積んだ廃船寸前の船が沈んだという話を聞けば、真っ先に気になるのは乗組員のことだ。