『30冊の本』
[著]山川紘矢
[著] 山川亜希子
[発行]PHP研究所
パウロ・コエーリョ/地湧社、角川文庫
初版:一九九五年十月
この本はブラジル人の世界的な作家、パウロ・コエーリョの処女作です。原題は『魔法使い(マガス)の日記』で、一九八七年に書かれています。パウロの二作目の本が『アルケミスト』でこちらのほうが世界的なベストセラーになりました。『アルケミスト』は、スペインの羊飼いの少年サンチャゴが本当の自分の力を発見するまでの寓話的な物語です。
一方、この『星の巡礼』は作者自身の巡礼の体験を書いた自伝的な要素の強い作品です。少し難しいところもありますが、とても神秘的で魂に響く不思議な魅力があります。この『星の巡礼』を出版してからほどなく、私の母がこの本を読んで、「とてもよい本を訳したね。素晴らしかったよ」と言ったので、驚いたことがとても印象に残っています。当時母は九十歳近かったので、どうしてこの本が理解できたのだろうか、と今でも不思議です。
翻訳者として作家と特別に交流することは少ないのですが、パウロ・コエーリョとは幸いにして、彼が何回か来日した際に、皇居へ雅楽を一緒に聴きに行ったり、富士山の五合目まで一緒に登ったり、神戸に『アルケミスト』のミュージカルを見に行ったりして、とても親しくなりました。