読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン

犬耳書店はRenta!へ統合いたします

(2021/9/29 UP)

犬耳書店は、姉妹店のRenta!(レンタ)へ統合いたします。
詳しくはこちらでご確認いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

0
-2
kiji
0
0
1265469
0
戦術と指揮 命令の与え方・集団の動かし方
2
0
0
0
0
0
0
ビジネス
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
第1章 戦いに勝つための9の原則

『戦術と指揮 命令の与え方・集団の動かし方』
[著]松村劭 [発行]PHP研究所


読了目安時間:45分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ

▼本書で語る戦術とは、他人との意見のくいちがい、ライバルとの関係、ビジネスの競合相手など、日常生活で出合う多くの出来事に応用がきく。この章では、戦術を考えるうえでの基本的な要素について、くわしく説明する。


紀元前からつみかさなった戦いの知恵

 戦いは人間の活動において、もっともはげしい知、情、意、技術の活動である。そして勝敗の要因はきわめて複雑だ。また、机上の戦術(畳の上での水泳の練習)と、戦場における戦術(濁流における水泳)の間には、大きなちがいがある。それは戦場における無限の“摩擦”によっておこる。

 だから、机上(文章)で、戦術を紹介することはむずかしい。とはいえ、有史以来、今日までの戦争の歴史を通じて、数世代にわたり、人間がおこなってきた戦いの一般的な傾向が研究され、そこから「戦いの原則」がみちびきだされている。
“夏草や(つわもの)どもがゆめの跡”からしぼり出された「戦いの原則」は、つぎの九つである。この戦いの原則を歴史上、最初にまとめた将軍は、第一次世界大戦時の英国のフラー少将であった。今日、列国は、おおむねこの原則を採用している。

 この原則は、戦争だけのものではない。およそ、人間社会のさまざまな局面において、通用する原則である。戦いにおける決断をみがくためには、最初にこの原則を理解しなければならない。

「目標の原則」

 とにかく、戦いでは、はじめから終わりまで、目標を見うしなわせるようなできごとが、いつも発生する。個人的な欲望、上司の介入、部下の苦痛などである。「今しようとしていることの目標はなにか?」をつねに見つめることが、戦術でもっとも大事なことだ。

「統一の原則」

 アメリカでは、政府が軍事力を行使して遂行しなければならないことを決定する。そのために、まず、問題を見つめ、明確に軍の任務を告げる。そして一人の軍人を選定し、かれにどのくらい戦力が必要かを相談する。それから、こういうのだ。
「承知した。これはお前の仕事だ!」

 戦いにおいては、一人の指揮官に指揮をまかせなければならない。知恵半分の二人が協力してひとつの仕事をすれば、一人分の知恵が出ると思うのはまちがいである。そうすると、知恵は四分の一になる。衆知は足し算でなく、掛け算なのだ。

 戦いでは、「三人寄れば、文殊の知恵」は役立たないことを自覚せよ。

「主導の原則」
「ボールはラグビー場の中央付近にあって、ルーズな状態で蹴りあってころがっている。意志ある者はだれでもボールをひろって走ることができる。さぁボールを奪え! 君の走るところに相手チームがついてくる」(マーシャル元帥)

 このことばは、主導権をにぎることの大切さをあらわしている。

 主導とは先動(先に動くこと)・先制(機先を制すること)によってのみえられる。そして、一度、主導権をにぎったら、絶対に離してはいけない。主導権を持てば、戦力を節約することも可能だ。

 状況の変化によって、法令・上司の計画が不適切と判断した部下は、部下であることをやめ、上司の立場になって行動してよい。状況にあわない規則や命令にもとづいて行動することは、最高指揮官であれ、一兵士であれ、愚かである。

 攻勢は、作戦において、最高の結果を期待できる最良のものだ。主導権をにぎるために、必要不可欠だといえる。

「集中の原則」

 戦いにおいては、自分よりも敵が全体の戦力で優勢である場合がある。そんなときも、あきらめてはいけない。敵の弱点(の部分・場所)に対して、自分の戦闘力が、敵よりも勝るように戦力を集中して打撃せよ。そして、その部分での戦闘力の優勢を、最後まで維持するように、戦力の集中を継続させればよい。

 戦いは短期間では終わらない。だから戦いの間は、できるかぎり、軍を長く分散させておく必要がある。そして、決定的チャンスと場所に軍(力)を集中させればよい。そうすれば、敵より戦力がおとっていても、チャンスはある。

 敵の弱点に対し戦闘力を集中できる最初のチャンスは、敵が分散することだ。分散すれば、当然、守りのうすい部分がでてくる。

 この、敵の分散は、自分のほうが分散することによって生ずる。つまり「我が軍の分散―敵の分散―我が軍の集中」は一連の動きなのだ。作戦成功に大事なのは、集中速度だといえる。

 しばしば愚者は、敵の要点(強点)を攻撃したがる。

「奇襲の原則」

 大部分の敵は愚かではない。攻撃に先立ち、敵は、こちらの集中計画を察知しようとするので、ねらった場所と時機に敵より優位でいることは、非常にむずかしい。奇襲の要素がなければ、重要な場面での勝利はない。いいかえれば、すべての作戦計画には、奇襲の要素が必要である。

 奇襲は、きびしい条件と実行の困難性をクリアしなければならない。こちらが動くことによって敵がバランスを失い、こちらの脅威によって、反応を強制されたときに、奇襲のチャンスは生まれる。奇襲成功の条件は、予期されないことと、対応のヒマをあたえないことである。しかし、奇襲の成功は判断というよりも、大部分は幸運に依存する。

 すなわち、奇襲は「動き」のなかから、戦機の女神が持ってくるのだ。走っている戦機の女神は、後頭部がハゲている。女神をつかまえようとすれば、前髪をにぎるしかない。

 したがって、奇襲が可能なチャンスを的確にとらえ、敵が態勢をたてなおす前に、絶えず、新しい奇襲をおこなっていくとよい。その方法は、秘匿と速度である。

「機動の原則」

 戦闘は敵の消滅と機動(軍隊の移動や運動)によっておこなわれる。すぐれた将軍は機動によって勝利し、おとった将軍は破壊・敵の消滅によって勝利する。

 すなわち、機動とは、速度と策略によって敵を窮地におとしいれ、敵指揮官の精神のバランスを破壊することなのだ。

 今週の一個大隊は、一ヵ月後に到着するより大きな部隊、一個師団より有効である。“速い”ということは、とても大事なことなのだ。

 機動速度は“部隊の機動速度”と“精神の機動速度”によって成り立つ。つまり「頭の回転を速くせよ」ということだ。

 戦史における失敗の原因は、ほとんどすべての場合、ひとことでいえる。それは「遅すぎた(too late)」である。

「経済の原則」

 戦闘の間、戦力を遊ばせておく余裕は、どこにもない。戦闘時に、なにもしないでいる部隊は、制圧されているのとおなじである。

 予備は、遊兵ではない。コップに水を満たし、最後に一滴たらすと、水は一挙に流れ出す。この一滴の仕事が、予備の役割である。適切な予備を準備することは、戦力のすぐれた経済的運用である。

「簡明の原則」

 戦いの術は、美しく簡明である。なかでも簡明であることが、もっともよい。

 簡明であるためには、

 目的・目標が明快であること。

 作戦方針のコンセプトが奇抜・大胆・明快・新鮮であること。

 これだけでよい。簡明の原則は、内容も簡明である。

「警戒の原則」

 油断大敵ということだ。奇襲された将兵は、万死に値する。

 本来、眠っている敵を攻撃することを自慢する軍人はいない。自慢するのは恥である。恥じるべきは、眠っているときに打撃された相手である。それが戦いなのだ。

 たとえどんなに有利な状況であろうとも、警戒をおこたるものは、かならず足もとをすくわれる。


 歴史に巨跡を残した英雄たちは、「戦いの原則」にしたがって行動した。どんな戦いであれ、勝つための根本はここにあるのだ。

 かれらの行動がいかに剛胆なものであれ、成果がいかに壮大なものであれ、歴史上の大事件であれ、それは、戦いの九原則を適用したにすぎない。

 軍事を研究する人々は、しばしば軍事史のなかの細部を学ぼうとしない。戦いは、指揮統制、情報力、機動力、火力、防護力、兵站(へいたん)支援力の性能・特性などの進歩によって、いつも変化しているので、装備・手段が現在と異なる過去の戦闘の歴史を、軽視しがちなのだ。

 しかし、戦いの原則は、時代の進歩にかかわらず不変である。戦場においても、ビジネスにおいても、現在、目の前にある、なまなましい戦いがすべてではない。ほこりにまみれてうまっている、過去の戦いの研究をおこない、そこから学ぶ努力を、けっして忘れてはいけない。

 マルチメディアでも、情報網でも、現在の装備の運用に血道をあげて(ただし、まったく知らないのは愚かである)、戦いの原則の適用について深い造詣(ぞうけい)も、学ぶ意志ももたないものはけっして勝つことはできない。
この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:18940文字/本文:22395文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次