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新・京都の謎
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歴史
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まえがき――知れば知るほど謎が深まる地・京都

『新・京都の謎』
[著]高野澄 [発行]PHP研究所


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〈かんがえる〉ということの楽しさ、それを味わうのに京都ほど適した場所はない。

 ○○跡、などときざまれたちいさな標識を目にして、

 ――○○の名をきいたおぼえはあるが、さて、なんのことだったかな、いつごろのことだったかな? これが第一歩。

 一歩を二歩につづけるのに、さほどむずかしい手順はいらない。

 いま自分がたっている道の名はなんというのか、通りすがりのひとに訊ねてみるといったところから第二歩がはじまる。

 地図や参考書に目を通すのもわるくはないけれど、それよりは、いま、その場の雰囲気にどっぷりと(ひた)ることを優先したい。そうすると、自分を(いざな)う声のようなものが感じられるはずであり、こうなればしめたもの、あれか、これかと模索してゆくうちに温かいもの、あるいは冷たいものに触れる。百点満点の正解でなくてかまわない。

 かんがえているうちに別の疑問が浮かんできて、はじめの疑問がなんであったか、忘れてしまうこともあるだろう。

 それでいい。このほうが、考え方としては上等だとさえいえる。

 京都にかぎったことではない。どんな土地にも過去の歴史の痕跡(こんせき)はのこっていて、わたくしたちに(さそ)いの声をかけている、(なぞ)を解いてみませんか、と。

 この先の段階で京都と、ほかの土地の相違が出てくる。理由はなにか。てっとりばやくいえば、京都では〈公〉ということの存在が強くて大きいから、〈私〉が〈公〉に()みこまれる場合が多いのが特徴だ。〈公〉に呑みこまれた〈私〉が、ふたたび外に出てくるときに道に迷ったり、存在感が希薄(きはく)になってしまうのだ。

 金閣寺鹿苑寺(ろくおんじ)の前身は足利義満(あしかがよしみつ)の山荘の北山殿だった。義満が北山殿をたてている時代に戻って生きる自分を想像するのは可能だが、自分が義満でないのはもちろん、義満の周辺人物でもないようだと気づくと、落胆(らくたん)して、

 ――北山殿も金閣寺も、おれには関係ない!

 落胆のあまりに関心を失くしてしまうおそれがある。

 これは、よくない。もったいない。

 壮大な北山殿を遠くから見上げ、

 ――すごいものができたものだなあ!

 驚嘆している自分、つまり自分という名の〈私〉を北山殿という名の〈公〉の対照として確認する、それが京都について〈かんがえる〉ことのご褒美(ほうび)なのだ。


 奈良本辰也先生との共著をふくめ、祥伝社から刊行された書き下ろしの文庫版『京都の謎』シリーズは五冊になった。

 五冊めの『京都の謎 東京遷都その後』から四年がすぎようとしている。この間、京都についてかんがえ、見たり聞いたりを、休むことはなかった。

 新しい観方(みかた)といっていいようなものの成長が実感されるようになったところへ、お(すす)めがあったので、『京都の謎』に「新」を冠し、『新・京都の謎』のタイトルで書き下ろすことになった。

 項目の数を多くして本文を短くするか、その反対に、少ない項目で本文を長くするか、そこに躊躇(ちゆうちよ)はあったわけだが、項目の数を多くすることを優先した。京都の歴史について〈かんがえる〉べきことには際限がない、そういった気分を読者と共有できればいいとおもったからだ。


 二〇〇八年三月高野 澄
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