つねに皆から注目されたい
この章では、やさしい人になるためには、どういう心理を乗り越えればいいのかを考えたい。どういう心理状態ではやさしい人になれないのかを考えたい。
傷つきやすい人には、どういう人がいるだろうか。
まず第一に、自己蔑視している人、
第二に、甘えている人、
第三に、ナルシシスト、
などである。
人は傷つけば憎しみを持つ。
したがって、やさしい人になるには、これらの感情をコントロールできなければならない。
では、まず第一に、自己蔑視している人の心理について考えたい。
カレン・ホルナイは、自己蔑視の結果として、四つの心理的特徴が生じると述べている。
その一つは、他人からの注目や賞賛や愛を強迫的に求めることである。
要するに、自己蔑視している人は、賞賛なしには生きていけないのである。
アルコール依存症にならって言えば、「賞賛依存症」のようなものである。
もし人がこのような心理状態になるとすれば、この人は人を愛する能力を完全に喪失していると考えてよいであろう。
人との関係でやさしさなど微塵もない。
この人は、皆からつねに注目されようとしている。他人の気持ちを思いやるゆとりはない。
自分の話を皆が耳を傾けて聞いてくれることを求めている。
求めているというより、要求している。
皆が自分のしたことを話題にし、「それはすばらしい」と賞賛してくれることを周囲に要求している。
だから、自分が相手の話に耳を傾けるということはできない。
相手が得意になっていることを話題にしてあげようとする心理的余裕はない。
その人には相手の努力を理解する気持ちなどどこにもない。そもそも相手に対して関心がない。
そのような人が、他人にやさしくなれるわけがない。
逆に、周囲の人が自分の話に耳を傾けてくれなければ、傷つく。
自分が会社でしたこと、あるいは小さいころ家でしたこと、また学校時代に友達としたこと、それらを皆が話題にし、その個性や活躍を誉めてくれなければ面白くない。