「パーソナル・スペース」「なわばり意識」が説得に利用されるのは、相手に親近感を抱かせて安心させるという効果とは別に、相手に圧迫感を与える、落ちつかなくさせるというまったく反対の効果もあるからだ。
前章のパーソナル・スペースの項(100ページ)で説明したことを思い出してほしい。人は気を許した相手ならば、自分のなわばりである「親密ゾーン」まで接近されても違和感を抱かないが、そうでない相手やまったくの他人にパーソナル・スペースを侵されると落ちつかなくなるものである。
満員電車や混雑したエレベーターに乗り合わせたり、小用をたしているとき両側の便器に人に立たれると居心地が悪くなるのも、この心理からだ。