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バツイチなんて言わせない
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第一章 離婚と経済生活

『バツイチなんて言わせない』
[著]中村久瑠美 [発行]PHP研究所


読了目安時間:31分
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第一条件は経済的安定


 離婚後の人生の質(QOL)を高める最大の条件は、何といっても経済的安定であろう。

 QOLに必要な要件として、経済的安定、精神的自立、の二点が挙げられることはすでに述べた。これら二つは相互に補完し合い、まさしく車の両輪のように機能している。がなければ、人は生きていけない。があれば、も安定する。は、がなくてはまず得られない。ということは、という関係であると言えて、は絶対不可欠なものと断言できる。QOLの第一条件は、経済的安定ということになる。

 シングルで生きるとは、まず食べること、すなわち「生きるためにその日の(かて)を自分で得ること」。これを自立の第一歩と言わずして何だろう。自分で働いたお金で自分のためにその日の糧を求め、生活していく。この繰り返しをいかにスムーズに心楽しく、安らいでできるかが、シングルライフのQOLの鍵である。

 経済的に安定していないと、食べることすなわち生きることが怪しくなる。だから仕事をするにしろ、貯えや資産で暮らすにせよ、経済生活の基盤づくりが第一歩になる。

 貯えや資産だけで暮らしていける人はともかくとして、大多数のシングル女性は自ら仕事を求め、自活する道を歩んでいる。では、そのQOLの実態は?……。

QOLには仕事が不可欠

「女性と労働」については、すでに各方面で実態調査や研究が進んでいる。一九八五年(昭和六十年)の男女雇用機会均等法の成立から二十五年以上が経過していて、女性も職業をもって生きることが当たり前の社会になっている。とくに労働人口が減少して、社会全体が女性の働きに期待をする時代であるから、その気にさえなれば仕事が見つからないとか、仕事にありつけないということは、有効求人倍率から見ても少なくなっているはずである。しかし現実には年齢制限もあり、希望どおりの職にありつけるのはなかなか厳しい。

 条件の良い会社、収入の多い仕事を望むとなると、特別のコネや特殊な技能資格のない女性には難しい。しかし、健康と意欲のある女性には、それなりの仕事が必ず見つかると信じて頑張ろう。要は、少しでも良い条件のものを選ぶためにどうするか、ということだ。年齢や体力、特技、適性を考え、自分に合った、自分でもできる仕事に関して、情報を集めて探し出してほしい。
「好きこそものの上手なれ」という言葉が昔からあるが、やはり自分にとって興味のあるもの、好ましいもの、関心のあるものは何か、それを探ることから始めるとよい。

 たとえば、手先が器用で、針をもてば何か()ってみたくなる人、編み物や縫いぐるみづくりなどの手芸を趣味でやっている人なら、それを仕事にできないか考えてみるとよい。戦前、裁縫は結婚前の女性のたしなみとして、多くの女性が身につけていた。嫁に行くのに裁縫もできないようでは……と言われないように、女学校でも裁縫にはかなりの時間をかけていたと聞く。戦後になってもしばらくのあいだは、既製服も少なく、家で洋服をつくるのが当たり前だったから、洋裁学校は花嫁修業中の若い女性であふれていた。だから子どもの服ぐらい手作りできて当たり前と、夫たちは考えていた。

 ところが男女共学が進み、家庭科の男女共修も当たり前になり、受験においては男女の違いなど認められない時代になると、高校で裁縫の時間などどんどん削られた。女性の多くが大学受験をするようになれば、学校でも家庭でも裁縫どころではない。大学への進学率が上がるにつれて、街の洋裁学校へ通う若い女性は激減した。それだけに、いまは針のもてる女性は少ない。ボタン付けや裾のまつりぐけができればよいほうで、自分の服を仕立てられる主婦など珍しい存在だ。

 F子さんは六十五歳。娘時代から針をもつのが大好きだったことを思い出して、五十代半ばから縫製会社へパートに出た。既製服の直し専門の会社である。袖丈(そでたけ)を詰めるとか、ズボンの丈を五センチ上げるとか、既製服を買う女性は自分で直せない人が多いから、どんどん補正に出す。F子さんはパートとはいえ、その手先の器用さ、仕事の早さを買われて、六十代半ばになっても会社から絶大な期待を寄せられている。「定年なんてありません。七十、八十になっても、出来映えさえ衰えなければ、ずっと続けてください」と言われている。だから離婚しても家さえあればどうにか食べていけるはずだ。楽ではないが、仕事は楽しいし、他人様から喜ばれてお金がもらえることほど幸せはないと、晴れ晴れした表情で語っている。

 彼女の場合は、子育ても終わり、これから自分を活かす仕事は何かしらと探していて、偶然出会ったというが、離婚を決断するうえでも、この仕事が一生続けられそうだという見通しがあったことがその契機になったという。

 仕事とは何だろう。まずは食べるため、日々の糧を得るためであり、それはすなわち生きることである。仕事を通して人は他者と交わり、他者へ何かを提供し、その対価として金銭(=糧)を得る。他者あっての糧であり、仕事である。つまり生きることと仕事はイコールであり、社会と交わることである。経済的な充足は、目的であるのと同時に、仕事の結果である。「仕事が生きがい」という言葉もあるように、仕事はたんなる経済目的にとどまらず、社会参加なり社会貢献に結びつく。それは人生の喜びにつながり、個人のQOL向上に役立つ。

 仕事と経済的充足と社会参加──それらがバランスよく循環すると、QOLは高まっていく。自分に合った仕事を見つけることがどれだけ重要かは、QOLの見地からも明らかである。

 経済的安定がないと生活は厳しく、心の安定もゆらぎがちになる。
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