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いま、拠って立つべき“日本の精神” 武士道
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生き方・教養
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第十六章 武士道はなお生き続けるか

『いま、拠って立つべき“日本の精神” 武士道』
[著]新渡戸稲造 [訳]岬龍一郎 [発行]PHP研究所


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◆武士道が営々と築き上げた活力

 日本に荒波のように押し寄せてきた西洋文明は、すでにわが国古来のあらゆる教義の痕跡(こんせき)(ぬぐ)い去ってしまったのだろうか。一国の国民の魂がそんなにも早く死滅するとあれば、それは悲しむべきことである。外国からの影響にいともたやすく屈服してしまうとなれば、それは貧弱な魂だったといわねばなるまい。

 国民性を形成する心理的要素の集合体が、固く結びついて離れないのは、「魚のひれ、鳥のくちばし、食肉獣の牙のように、その種に欠くことのできない要素」と同様である。皮相な独断に満ちているル・ボン(フランスの社会心理学者)が、その著作の中で、「知性による発見は人類共有の遺産だが、性格の長所や短所はそれぞれの国民が継承する特有の遺産である。それは何世紀にもわたって日夜、海水で洗われ、ようやく表面の粗さがとれた固い岩のようなものである」と述べている(注一)のは適切である。もしそれぞれの国民が独自に継承する「特有の遺産」に長所や短所があるとすれば、それは十分に考察するに値する。だがこの種の図式化された理論は、ル・ボンがこの本を執筆するはるか以前から提唱されており、ずいぶん前にセオドア・ワイツ、ビュー・マレーなどの人々によって論破されていたのである。

 武士道が長い年月をかけて育んできたさまざまな徳目を考察するにあたり、私はこれまでヨーロッパの例を用いて比較や説明をしてきた。そして武士道の特質とされるものが、どれ一つとして「武士道のみ」の遺産ではなかったことを見てきた。

 たしかに武士道は、道徳的特質の合成体が極めて独自の様相を呈しているものであるのは事実である。エマソンが「あらゆる偉大な力が構成要素として加わった複合的結果」と名付けたのも、この合成体のことである。だが、コンコードの哲人(エマソン)は、ル・ボンのように、それを民族もしくは国民の固有の遺産とすることはなかった。そして次のように語ったのである。
「あらゆる国のもっとも有力な人々を結びつけ、彼らを互いに理解し、同意できるようにする要素である。だが、それは個々人が秘密結社(フリー・メイスン)のような符号を失っても、ただちにそれとわかる明確な何かである」と。

 武士道が日本国民、とりわけサムライに刻みつけた性格は、「種族にとって欠かすことのできない要素」を構成しているとはいいがたいが、それでも武士道が持ち続けている活力については疑う余地はない。仮に武士道が物理的な力にすぎなかったとしても、過去七百年の間に営々と築き上げてきた勢いを、いとも簡単に停止することなどありえないであろう。
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