読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン
0
-2
kiji
0
0
1271218
0
刑務所の経済学
2
0
0
0
0
0
0
ルポ・エッセイ
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
第五章 少年犯罪とサイコパス

『刑務所の経済学』
[著]中島隆信 [発行]PHP研究所


読了目安時間:38分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ

少年には懲罰ではなく更生


 司法(少年法及び関係法令)では二十歳に達していない者は男女の区別なく「少年」と呼ばれる。刑事犯罪を起こした成人は、検挙→警察の取り調べ→検察官送致→検察の取り調べ→起訴→刑事裁判という流れになる(図4)。



 ところが、少年の場合は成人と異なる扱いとなる。すなわち、その少年が刑事責任年齢(満十四歳)以上であれば、検察の取り調べまでは成人と同じだが、そこから起訴ではなく家庭裁判所に送致され、そこで処置のあり方について審判が行われる。そして必要と認められる場合は、少年の身柄を少年鑑別所に預け、その資質を鑑別するための観護措置をとることもある(図5)。



 その後、通常は少年院や更生保護施設などへ送致されることになるのだが、犯罪の内容が殺人など重いものであったときは、家裁から検察に送致(逆送)され、成人の刑事事件と同じ流れに戻される。そして裁判で実刑判決が出れば二十六歳未満の受刑者を対象とした少年刑務所に収容される。しかし、犯行時十八歳未満の少年はどんなに重い罪を犯しても、最高刑は死刑でなく無期刑、有期刑なら十五年が上限という規定がある。

 刑事事件を起こした少年が十四歳未満のときは、「触法少年」として家裁での審判を受けた後、通常は保護観察か児童自立支援施設送致の処分を受け、特に必要と認められる場合は少年院に送られる。また、刑事事件を起こしていなくても、行動履歴から見て将来的にその可能性が高いと認められる少年は、「()犯少年」として「触法少年」と同等の扱いを受けることがある(注1)。

 このように、少年への処分は成人よりも軽い。その理由として、少年による犯罪事件の手続きを定めた少年法には、「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年及び少年の福祉を害する成人の刑事事件について特別の措置を講ずること」と記されている。

 要するに、第三章の刑罰理論の表現を用いれば、少年には原則として法益侵害の責任を負わせないということだ。したがって、刑務所に収容して刑罰を与えるのではなく、少年院などで保護し、もっぱら更生に励むことが求められるのである。

少年院はどのようなところか


 少年院には、初等少年院、中等少年院、特別少年院、医療少年院の四種類がある。法務省の説明によれば、それぞれ次のような少年を収容している。


 *初等=心身に著しい故障のない、おおむね十二歳以上おおむね十六歳未満の者

 *中等=心身に著しい故障のない、おおむね十六歳以上二十歳未満の者

 *特別=心身に著しい故障はないが、犯罪的傾向の進んだ、おおむね十六歳以上二十三歳未満の者。ただし、十六歳未満でも、受刑者は収容することができる

 *医療=心身に著しい故障のある、おおむね十二歳以上二十六歳未満の者


 また、少年院内の処遇については、次の三種類がある。


 *一般短期=早期改善の可能性が大きいため、短期間の継続的、集中的な指導と訓練により、その矯正と社会復帰を期待できる者(収容期間は原則として六か月以内)

 *特修短期=一般短期処遇に該当する者であって、非行の傾向がより進んでおらず、かつ、開放処遇に適するもの(収容期間は四か月以内)

 *長期処遇=短期処遇になじまない者(収容期間は原則として二年以内)


 初等及び中等少年院では短期と長期が併用されているが、特別と医療はもっぱら長期である。ほとんどの少年院では、入院すると、新入時教育→中間期教育→出院準備教育という流れでプログラムが組まれている。各教育にどのくらい期間をかけるかは、院によっても少年によっても異なる。たとえば、短期(六か月)なら新入時一か月、中間期二〜三か月、出院準備二〜三か月、長期(一年)ならそれぞれ二か月、六〜七か月、三〜四か月というのが平均的といえる。

 その教育内容について簡単に整理しておこう。新入時は、オリエンテーション、面接、作文、行動訓練などを通じて更生へ向けての意欲を高めることを目的とする。

 中間期では、職業補導、生活指導、教科教育など、具体的な更生プログラムを実施する。ここは少年院ごとにかなり特徴が出てくる。被害者の視点を取り入れた教育に力を入れるところもあれば、「問題性別指導」といって薬物や性犯罪に特化した改善プログラムが実施されることもある。

 そして出院準備としては、目前に迫った社会復帰を念頭に置き、進路指導、保護者との関係修復、社会見学などの外出が行われる。

 少年院でも、少年たちには更生のインセンティブが与えられている。すなわち、刑務所の制限緩和と同じく、更生の程度によって3級から1級までランク付けされている。入院するとすべての少年は2級下からスタートし、中間期に入る頃には2級上、やがて中間期の終盤には1級下、そして出院準備に入ると1級上とランクアップしていく。ただし、年功人事のように、時間が経過すれば自動的に昇進するわけではなく、更生の程度が進みランクアップすると次の教育課程に入っていくということだ。そのため、更生に時間がかかればそれだけ入院期間も長くなる。

 以上の内容をまとめると図6のようになる。


医療少年院の実態

「医療少年院」と聞いて一般に抱くイメージは、犯罪を起こした病弱で医療行為が必要な少年を引き受ける施設といったものではないだろうか。しかし、考えてみれば、常に医師の診察を受けなければならないほど病弱な若者が犯罪を起こすのは不自然である。

 実際の医療少年院とは、知的障害、発達障害、精神疾患(障害)を持った少年や妊娠している少年(女子)を収容する施設である。医師の主な役割は精神疾患の少年に投薬することである。「医療」少年院の看板を掲げていることから一通りの診療科と医療器具は整っているが、医師が常駐していない診療科や長年使われておらず老朽化した医療器具があるなど、看板と現実には大きな隔たりがある。

 医療少年院という名の施設は全国に四つあり、主として精神疾患を引き受けるところと知的・発達障害を引き受けるところに分けられる(注2)。実際に訪ねてみると両者の差は歴然としている。前者は精神科病棟、後者は知的障害児の全寮制特別支援学校という感じだ(注3)。

 前者における精神疾患の内訳は、統合失調症、抑うつ、解離性障害、人格障害など多岐にわたっており、犯罪の内容も窃盗、覚醒剤、性犯罪、傷害、殺人などさまざまで、少年一人ひとりがみな異なったバックグラウンドを持っていることがわかる。現在の矯正施設の多くで実施されている集団での処遇が難しい少年ばかりが集められたところであり、いわば通常の少年院すら居場所にできない若者たちのシェルターだ(注4)。勤務する医師のストレスも大きく、精神科医の定着率はきわめて低いといわれる。

 後者に収容されている少年は、精神発達遅滞、自閉症、アスペルガー、ADHD(注意欠陥・多動性障害)などである。
この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:15985文字/本文:18834文字
      この記事を収録している本
      レビューを書くレビューを書く

      今レビューすると30ポイントプレゼント! 今レビューすると15ポイントプレゼント! 犬耳書店で初めてのレビューはさらに30ポイント! ポイント詳細はこちら

      この本の目次