1 3年後になりたい自分は?
前項でも、「まず3年先の未来」を想像しよう、ということをお話ししたが、日々目の前の仕事に追われていると、なかなか長期的なスパンで物事を考えることがむずかしい。
実際に、私のところへ「お金が貯まらないんですけど……」と相談しにくる方の多くは、将来をうまく見通すことに慣れていないようだ。
そこで、ここでは具体的に、私の友人で「3年後の未来」を明確に思い描き、今懸命に目標に向かってがんばっている人の事例をご紹介しよう。
D助さん(28歳・男性・独身)は、現在、あるホテルで営業の仕事に従事している。
仕事柄、いろいろなホテルやお店のサービスを研究しているうちに、いつか自分で理想の飲食店を開きたいという夢を持つようになった。彼の理想は、自分の生まれ故郷で、大人がゆったりとくつろげる隠れ家のようなカフェバーを開くということだった。
そこでD助さんは、27歳のときに「3年後には独立して自分の店を持つ」という目標を立てた。
なぜ3年後に目標を設定したのかというと、10年後ではあまりに先すぎて、モチベーションを持続することがむずかしいと考えたからだ。
D助さんは、「3年後にカフェバーを開く」という目標から逆算して、「1年目にすべきこと」「2年目にすべきこと」という具合に綿密なスケジュールを立てた。
【ゴール】3年後……自分の店、理想のカフェバーを開く
2年後……物件探し、顧客の獲得、ノウハウの蓄積
1年後……カフェバー開業についての知識習得
現時点……カフェバーでアルバイトをして基礎を学ぶ
まずD助さんは、「3年後にカフェバーを開く」という目標を立てた段階で、すぐに二足のわらじを履き始めた。
まず、カフェバーを運営するための基本的な知識を得るために、自分の好みのカフェバーでアルバイトをし始めたのだ。もちろん、会社員を続けながらなので、週末にアルバイトする程度だったが、接客のノウハウや店の運営方法を知るためには十分勉強になった。
アルバイトを始めてから1年後には、彼と話をすることを目的にやってくるお客さんも増え始め、オーナーからも信頼を寄せられるようになっていた。
ノウハウを習得する一方で、D助さんはコツコツと開店資金も貯金した。
カフェバーをオープンするためには、開業資金として約500万円が必要だ。そのため、会社のボーナスやアルバイト代はすべて貯金に回した。
そして2年たった現在、彼は休みのたびに故郷に戻り、地域のリサーチをしたり、物件を探したりして、具体的にカフェバーオープンに向けての準備を進めている。
少ない給料の中から、自己資金も400万円ほど貯まり、あとは多少の融資が受けられれば開業に間に合いそうなところまできている。
「石の上にも三年」という諺があるように、3年後の未来を思い描き、そこに向かって、一日一日すべきことをこなしていけば、多少の遅れは生じたとしても、必ずゴールにたどりつくことができる。一日一日タスクをこなした先には、3年後のゴールが待っているのだ。
彼のがんばりを見て、「応援しよう!」と言う人も増えてきている。自分の夢を応援してくれるファンを作っておくことも重要だ。
何かの本で読んだのだが、ある銀座のママは「顧客名刺が730枚集まったら、独立開業しても良いタイミングだ」というようなことを言っている。730枚というのは、つまり1年365日、毎日新しいお客さんと名刺交換したとして、2年分のリストということになる。
もちろん、たんに名刺交換しただけではなく、ひとりひとりの顔を思い浮かべることができ、自分の応援団になってくれている人のリストということだろう。それくらいの数の応援団がいれば、独立開業してもやっていけるはずだ。
D助さんの夢が叶うまで、あと1年──。
私はD助さんが開業したカフェバーのカウンターに座り、祝杯をあげている自分の姿を想像している。そして、それは必ず実現するはずだ。
2 まず未来の自分から今の自分を俯瞰してみる
「自分はこのままで大丈夫なんだろうか……」
ふと、そんな不安が頭をよぎる瞬間がないだろうか。
今の仕事を続けていて給料は上がるのか、結婚資金は貯められるのか、子どもを育てるだけの稼ぎを得られるか、老後の資金は足りるか……。
将来のお金に対する不安は、考え出せばキリがない。
私のところにもよく、「将来が不安で仕方がないんです」と言って、相談にやってくる人がいる。
そんなとき私は、「まず、あなたの3年後のお手本となるような人を探し、その人をまねるのがいいですよ」とアドバイスしている。
例えば、社内で営業成績がいつもトップの先輩がいたとする。身なりもさわやかで、人あたりも良い。身につけているものは、こだわりのある上質なものだ。
「俺も、3年後はあの先輩みたいになっていたいなぁ……」