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(2021/11/26 追記)

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伝わるシンプル文章術
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生き方・教養
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LESSON4 ディベートからクイズ文をつくってみる

『伝わるシンプル文章術』
[著]飯間浩明 [発行]ディスカヴァー・トゥエンティワン


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クイズ文に移し替えるのはむずかしくない

 

ディベートはクイズ文の一種です。したがって、右に見てきた討論も、そのままクイズ形式の文章に直すことができます。せっかくディベートの様子を追ってきたのですから、その大筋をクイズ文にまとめてみましょう。

右の議論の道筋が十分頭に入っていれば、それをクイズ文に移し替えて書くことは、もうむずかしくないはずです。


 

肯定側の立場のクイズ文


 

まず、右の肯定側の立場で文章をまとめると、こうです。


 


飲食店禁煙で健康被害防げ


 

たばこの煙から人々を守ろうとする機運が高まっている。レストランも全面禁煙にするよう法律で決めてはどうかという意見があるが、これは妥当な提案だろうか。(問題)

きわめて妥当であり、支持したい。レストランは全面禁煙にすべきだ。(結論)

なぜなら、全面禁煙は、客や従業員の健康被害をなくす一番の方法だからだ。(理由)

全面禁煙以外にも方法があると主張する人があるかもしれない。完全分煙や、禁煙タイム導入などの方法で、受動喫煙がかなり避けられるのは確かだ。また、セルフサービス制をとれば、従業員が煙の充満した喫煙室に入らなくてもすむ。(想定される反論)

しかしながら、完全分煙のためには何百万円の投資が必要だ。禁煙タイムを導入しても、それ以外の時間は受動喫煙が避けられない。また、ファストフードならともかく、手間のかかる料理を出す一般の店にとって、セルフサービス制は現実的でない。(反論への反論)

このように考えると、すべての店にとって最も実現しやすい方法は、全面禁煙をおいてほかにない。一定の周知期間を置いて、人々の理解を十分に得ながら、レストランの全面禁煙化を実現することが望ましい。(結論の確認)


 


右の文章は、肯定側立論→否定側第一反論→肯定側第二反論をもとに組み立てたものです。つまり、主張があり、(仮想の相手からの)反論があり、さらにそれへの反論があるという形式です。

分量は、ほぼ、新聞投書欄の文章と同じくらいです。言い回しもそっけなく、ディベート特有の言い回しを残している部分もあります。「味わい深い名文」ではありません。

でも、型に従っているため、論旨は至って明快です。短い分量なので、理由を支える資料も具体的には示してありませんし、想定されるほかの論点、たとえば「店の売り上げが減少する」などについての言及はありません。その分、先に示したディベートよりは粗い議論になっています。ただ、この分量のなかで、「想定される反論」を設定し、それを論破しているところに、この文章の長所があります。この長所は、ディベート形式で考えて書いたことで得られたものです。


 

否定側の立場のクイズ文


 

同じようにして、否定側の立場でクイズ文を書いてみると、次のようになります。


 


全面禁煙なら売り上げ減少


 

路上喫煙禁止など、たばこの煙を排除する動きが盛んだ。レストランも全面禁煙にするよう法律で決めてはどうかという意見があるが、これは妥当な提案だろうか。(問題)

問題のある提案で、支持しがたい。レストランは全面禁煙にすべきでない。(結論)

なぜなら、全面禁煙は、飲食店の売り上げを減少させるおそれがあるからだ。(理由)

売り上げの減少については心配ないという主張もある。海外ではすでに禁煙条例を施行した例が多い。その前後の時期で店の売り上げを比較すると、全体として傾向に変化はないか、むしろ売り上げ増になっているという報告がある。(想定される反論)

しかしながら、地域全体として売り上げの減少はなくても、個々の店については話が別だ。全面禁煙にした国内の店へのアンケートによれば、売り上げが伸びた店が約二割、落ちた店が約三割という結果もある。この数字は無視できない。(反論への反論)

受動喫煙の防止は必要だが、目的のために手段を選ばなくてよいわけではない。政府には、人々の健康維持とともに、労働者の生活を守る責任もある。店ごとの実情をふまえて、完全分煙・禁煙タイム導入など、多様な選択肢を用意しておくことが望ましい。(結論の確認)


 


今度は、否定側立論→肯定側第一反論→否定側第二反論をもとに組み立てました。ディベートの立論では、「店の売り上げが減少する」「店づくりの自由が失われる」の二つの論点がありましたが、前者を中心に述べたものです。


 

これでYes or No型の文章は書ける


 

ここで見たような、ディベートを踏まえたクイズ文の構造は、だいたい次のようにまとめられます。

この述べ方を身につけていれば、クイズ文のうち、少なくともYes or No型のクイズ文は書けるようになります。Yes or No型が書ければ、ほかのHow型・Wh-型なども、その応用で書くことができます。


 

ディベート形式は、考えを進展させる

 

私は、レストランの全面禁煙問題について、右に肯定側・否定側の両方の立場でクイズ形式の文章を書きました。二つは正反対の結論を出しています。いったい、このうち、どちらが私の本心でしょうか。

答えは、どちらも本心です。いずれも、自分を偽って書いたものではありません。両方の立場の資料を慎重に検討した結果、「この点は主張できる」と考えたことだけを書いたものです。

これだけなら、私は、ただの「肯定側なのか否定側なのか、立場のはっきりしない人間」ということになってしまいます。でも、私の考えは、この一人ディベートによって前進しています。双方の主張を検討しているうちに、次のような考えがまとまりました。

「レストラン全面禁煙より前に、まず、たばこを値上げして、喫煙人口を大幅に減らすことが先決だ」

現在のところ、国は積極的にたばこを売っています(直接に売るのはたばこ会社ですが)。その一方で、禁煙の必要を説いているのは、政策として矛盾しています。国民の健康を考えるならば、問題の根本であるたばこの販売量をなんとかすべきです。

厚労省研究班の調査(二〇〇六年)によれば、喫煙者の半分が禁煙する価格は、ニコチン依存度が高い層では一箱七〇六円、低い層では四六七円だと推定されたそうです。また、日本学術会議の要望(二〇〇八年)によれば、たばこ価格の引き上げが喫煙量・喫煙者数を減らし、かつ税収を増加させることは、先進国で共通の認識となっているということです。それならば、たばこの値上げをためらうことはありません。

欧米などでレストランの全面禁煙が成功している背景には、低い喫煙率があると考えられます。一方、日本の喫煙率はまだ高い水準にあるのですから、まずは喫煙人口を減らして、その上でレストラン全面禁煙に踏み切れば、成功の可能性は高いでしょう。

以上が、目下の私の考えです。なにぶん、専門外の私の考えることですから、穴もあるはずです。「それは素人考えだ」という批判は甘んじて受けます。批判によって、新たなディベートが始まるならば、私も望むところです。

素人考えかどうかはともかく、私がここで示したいのは、ディベートの形式を踏まえて文章を書くことは、考えを進展させるということです。文章を書きながら、「こういう批判があるかもしれない。その批判に対しては……」と、理論武装をかためていくうちに、当初は頭になかった考えが生まれます。そうなったら、その新しい考えを組み入れて、もともとの「問題・結論・理由」を練り直します。結果的に、より考えの深まった文章が書けます。これは、ディベート型クイズ文の効用の一つです。


 

( POINT )

▼ディベート型のクイズ文の構造は次のようになる。

「○○という提案は妥当か。妥当だ(妥当でない)。なぜなら、○○だからだ。これに対しては、○○という反論があるかもしれない。だが、その反論は○○という理由で当たらない。したがって、○○という提案は支持できる(支持できない)」

▼ディベートの形式を踏まえて文章を書くと、考えを進展させ、より考えの深まった文章を書くことができる。


 

[ 第2章のまとめ ]


 

○クイズ文には、「Yes or No型」「How型」「Wh-型」「Why型」の四つの型がある。型の選択を誤ると、適切なクイズ文に仕上がらない。

○ディベートは「Yes or No型」のクイズ文を述べ(立論)、それに第一反論・第二反論を加える形で試合を進める。

○ディベートを台本にしたものを朗読するだけでも、クイズ文の要領が身につく。

○ディベートを踏まえて文章を書くと、より考えの深まったものになる。

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