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お墓、どうしますか? 変容する家族のあり方
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政治・社会
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第2章 家族が変わればお墓も変わる

『お墓、どうしますか? 変容する家族のあり方』
[著]米澤結 [発行]ディスカヴァー・トゥエンティワン


読了目安時間:29分
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外国のお墓はどうなっているのか

 

本書のメインテーマは、葬送や墓のあり方、人々の意識の変化を通して見る「日本の家族像」です。死はすべての人に訪れる人生の最終ステージであり、そこにまつわる葬送や墓も、形は少しずつ違っても、根本にある思いはみな、同じはずではないでしょうか。それを確認する意味も込め、この章の最初で外国の事情について、少しだけふれておこうと思います。


 

お墓にあまりこだわらない欧米

 

墓や葬送のやり方に対する意識は、信仰する宗教はもちろん、その国や地域の歴史、文化的な背景によっても異なります。

日本では「墓を残すのが当然」と思いがちですが、キリスト教の場合、墓という存在には必ずしもとらわれていないようです。例えば、日本と同じく火葬の割合が高いイギリスでは、納骨するのではなく散骨が主流で、場所には海または墓地内にある「散骨エリア」が選ばれることが多いといいます。

土葬する場合は、棺桶を墓穴に埋め、会葬者が土をかけ、墓標として樹木を植えることもあります。英国式の庭園を愛し、自然保護への意識が高いイギリスらしい葬送の形、なのかもしれません。

ドーバー海峡を挟んだフランスに目を向けると、以前は土葬中心でしたが、パリなどの大都市部では徐々に火葬の割合が増え、散骨される割合も高まっています。背景にあるのは、2008年の火葬と墓地に関する法改正。遺骨を自宅で保管できなくなり、散骨場所が増えたことが一つの要因と考えられます。

近年は宗教・宗派にとらわれない最期を希望する人も増え、これも火葬と散骨を後押ししている要因の一つではないでしょうか。また、パリの市営墓地は市街中心にあり、多くの著名人が眠る観光地としての側面も持っています。

ドイツでは葬儀のとき、火葬が始まると遺族は帰ってしまい、係員が遺骨を骨壺に納めて、公営墓地の納骨堂へというのがお決まりのパターン。土葬の場合、期限付きの公営墓地を利用する人が多いそうです。


 

欧州各国の墓に対する意識は、日本人の感覚からすれば、いささか「ドライ」に思えるかもしれません。ただ裏を返せば、日本人は遺体、遺骨に対する執着心が強い、ともいえます。

やがて来る最後の審判の時、「肉体がないと復活できない」という信仰を持つ人が少なくないアメリカでは、歴史的に土葬がほとんどでした。ただ、土壌汚染や土地不足などの理由から、最近は徐々に火葬も増えています。

火葬後は墓をつくって埋葬することもありますが、散骨、また自宅に持ち帰って、今風に言えば「手元供養」的な選択をする人も。欧州同様、「どうしても墓をつくらなくてはいけない」という感情は、さほど強くないようです。


 

欧米同様お墓にこだわらないインドとイスラム圏

 

ではキリスト教圏以外はどうでしょうか。

ヒンドゥー教徒の多いインドでは、ガンジス川の光景に象徴されるように、屋外で遺体を焼き、そのまま灰を川に流す水葬が中心でした。そもそもヒンドゥー教には墓をつくって守るという発想がなく、火葬場での火葬が増えている現在でも、ほとんどの場合、遺骨は散骨されています。

イスラム圏はどうでしょう。

以前は、遺体の右側を下、顔は聖地メッカの方向を向くように土葬して、目印として自然の石を置くだけでした。最近は墓碑がつくられるようになっていますが、そもそもイスラム教では偶像崇拝が禁止されているため、立派な墓をつくり、供養や崇拝の対象にする文化はなじまないのかもしれません。


 

先祖を崇拝する儒教の影響が強い中国のお墓事情

 

墓に対して強い執着、思いを示すのは、日本、中国、韓国など東アジアの国々です。墓に納められた先祖を崇拝の対象とする儒教文化の影響が強いため、必然的に墓に対する関心も強くなるというわけです。

儒教を簡単に言うと、中国の春秋時代の思想家、孔子が唱えた倫理道徳の規範であり、人への思いやりを根幹としている思考・信仰の体系。思想はもちろん地理的にも近いため、中国と韓国の墓に対する意識は、日本と似た部分が多くあります。

儒教では、死後の魂は天に昇り、死者は生前と変わらぬ姿で生活するとされ、遺体は土に埋めて土葬していました。陰陽風水説によって埋葬の場所、日時の吉凶を占い、墓相を重んじたといいます。

中国において、状況が大きく変わったのは1950年代。毛沢東が火葬の推奨を始めますが、理由は人口増加に伴う森林資源や農地の確保でした。その後、経済発展に伴う都市部への人口集中により、1985年に中国全体を沿岸部と内陸部に分け、沿岸部には火葬を義務付けます。火葬の後は墓地や納骨堂に納めますが、その結果、都市部の墓地は高騰し、都市部に住む人が家の近くに墓を持つことができず、近隣地域に遺骨を納めることもあるそうです。

墓参りは4月の初旬にあたる清明節に行います。国民の祝日であり、地方出身の者は帰省し、家族みんなで墓を掃除して、花を手向ける。日本のお盆と似ています。

今、中国ではこうした葬送のあり方に変化が起こっていますが、その背景にあるのは2015年まで続けられた「一人っ子政策」。1979年に始まったこの政策は、原則として1組の夫婦から子どもは1人と制限し、遵守を宣言した夫婦は優遇。違反した夫婦には厳しい罰則を科しました。

国策として子どもを減らしたわけですが、その結果、2000年代に入ってから労働力不足、少子高齢化が目立つようになります。

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