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(2021/11/26 追記)

犬耳書店の作品をRenta!に順次移行します。
詳しくはこちらでご確認いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

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これからの教養 激変する世界を生き抜くための知の11講
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11.これからの人類(山極寿一)

『これからの教養 激変する世界を生き抜くための知の11講』
[編]菅付雅信 [著]東浩紀 [著] 池上高志 [著] 石川善樹 [著] 伊東豊雄 [著] 水野和夫 [著] 佐々木紀彦 [著] 原研哉 [著] 深澤直人 [著] 平野啓一郎 [著] 松井みどり [著] 山極寿一 [発行]ディスカヴァー・トゥエンティワン


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―身体感覚を取り戻し、データから脱出せよ


 

Juichi YAMAGIWA

京都大学総長。1952年東京都生まれ、京都大学理学部卒、京都大学大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学、理学博士。日本モンキーセンターリサーチフェロー、京都大学霊長類研究所助手、京都大学大学院理学研究科助教授、同教授を経て、2014年から第26代京都大学総長。国際霊長類学会会長、日本霊長類学会会長、日本アフリカ学会理事を歴任、日本学術会議会長、環境省中央環境会議委員、国立大学協会会長。専門は人類学・霊長類学。屋久島のニホンザルやアフリカ各地のゴリラの野外研究を通して、人類の過去の社会性や家族の起源の解明を目指している。著書に『ゴリラ』(東京大学出版会)、『暴力はどこからきたか』(NHK出版)、『家族進化論』(東京大学出版会)、『「サル化」する人間社会』(集英社インターナショナル)、『京大式おもろい勉強法』(朝日新聞出版)、『ゴリラは戦わない』(共著、中央公論新社)などがある。


 



この地球上で最も賢い種であるとされる私たち人類は、どれくらい動物から離れているのか、または同じなのか。また人類はこれからも大きな進化を遂げるのか。人類学者であり、霊長類学の第一人者である山極寿一さんの活動は、ヒトとヒト以外の霊長類の比較研究を通して、人類が驚くほど動物であり、しかも言葉を生み出したことによって、脳の拡大を止めてしまった生き物であることをダイナミックに浮かび上がらせてくれる。

インターネットが人間のサル化を促進していると警鐘を鳴らす山極さんの言葉は、動物の身体を持った頭でっかちなサルの行方を照らし出してくれる。


 


サルの社会から見えてくる人間の正体

 

――山極さんは霊長類学という学問の研究者です。とくにゴリラを主な研究対象とし、ヒトとの違いをあぶり出すことで人間の特徴も見出そうとしています。

この「霊長類学」という言葉は、そもそもどこから出てきたものなんですか。


 

山極 霊長類を研究する学問を「霊長類学」あるいは「プライマトロジー(Primatology)」と呼んでいます。「霊長類」という言葉は、英語では「プライメイツ(Primates)」、ラテン語では「プリマーテス」とよばれ、地球上にいるヒト、それにゴリラ、チンパンジー、オランウータンなど類人猿、そのほかのサルも含む約300種を指し、霊長類学ではこれらすべてを研究するわけです。霊長類学という表現そのものは欧米から来ているんですね。

ですが、日本の霊長類学自体は独特な発展をしてきました。私の先生の先生にあたる今西錦司(いま にし きん じ)が戦後まもない1948年、「サルを知ることは人間を知ること」という考えのもと、日本における霊長類学を創始したのが最初です。そのころ今西さんの対象はサルではなくウマでした。でも戦後、私の先生にあたる伊谷純一郎(いたにじゅんいちろう)と、それに川村俊蔵(かわむらしゅんぞう)という二人の学生が、野生のウマを調査している途中でサルを見かけて、サルのほうがウマより複雑な社会をもっているに違いないと今西さんに説いたんですね。それを受けて今西さんは「よし、サルだ。サルの研究をしよう」と決めたそうなのです。それが1948年12月3日であり、日本における霊長類学“出発の日”にあたります。


 

――「社会性」という切り口で霊長類を研究するのが、日本の霊長類学の特徴となったわけですか?


 

山極 そうです。欧米で「社会」というと、「言葉によりつくられたもの」と考えられていたんです。ヨーロッパはロゴスの文化圏だから、言葉によって人間は意識をもつものだし、その意識が「社会」や「文化」をつくりだすのだ、という基本的な考えがありました。だから、社会や文化というものは人間だけに備わっているとされてきたんです。

でも、今西さんは「そんなことないやろ。社会も文化も、人間が動物から人間になる過程でつくりだしたもんだ。言葉のない動物でも、社会や文化につながるような現象をもっているに違いない」と考えて、この研究を始めました。

今西さんは兵隊に招集される直前の1940年に、遺書のつもりで『生物の世界』という本を書いたんですが、そのまえがきでいわば「生物社会学」宣言をしたんです。アメーバでもなんでも生きているものはみな社会をもっているんだ、と。そして戦争から帰ってきて、その証拠を求めようとしたんです。つまり日本の霊長類学は、人間以外の動物に社会や文化の証拠を見つけ出すことを最初の目標としたわけです。


 

――今西さんが生物に社会や文化を見つけようとしたきっかけは、なんだったのですか?


 

山極 彼は長いこと鴨川に生息しているヒラタカゲロウの幼虫を研究対象にしていたんですが、鴨川の流れに沿ってヒラタカゲロウが棲み分けをしていることを発見した。そしてこの現象から「生物の世界というものは、同種の仲間だけでできているのでなく、異種の仲間とのインタラクションによっても成立している。だから社会というのはおなじ種の集まりに限定する必要はなく、異種の仲間が共存しているような集まりが社会なんだ」と考えたんですね。今西さんはそれを「生物全体社会」と呼びました。

生物全体社会という考え方は、今西さんの頭のなかで創られたものであって、今西さんはこの考え方を支持するような自然現象を見つけようとしたんです。しかも、人間の社会に近いところでそうした現象を見つけたかったので、やっぱりヒトに近い霊長類を研究対象にすべきだと思ったそうです。

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