『齋藤孝のガツンと一発文庫 第6巻 お金持ちで、幸せになる人の7つの秘密 ミッション、パッション、ハイテンション』
[著]齋藤孝
[発行]PHP研究所
1 「お金持ち」って、どういうこと?
みんなそこにお座り。僕の話を聞きなさい。
これからおもしろい話をしてあげる。今回は、お金の話だ。
みんな、お金が好きでしょう? そして、お金持ちになりたいと思っているでしょう?
そりゃあ、お金はあったほうがいいよね。僕は、
「そうか! このことに気をつけていると、お金持ちになれるんだな」
ということを発見しちゃったんだよ。そのヒケツを、今日は大公開!
パート1を読めば、
「おこづかいをもらっているわけがわかったぞ!」
「学校に行くこと自体が、お金持ちになる練習なんだ」
「何はさておき、信用ってのは、大切なんだな」
と思えること、間違いなし。お金にまつわる基礎が、たっぷり詰まっているからね。
ところで、キミたちは「お金持ち」ってどういうことか、わかっているかい?
●(手に入れたお金)-(使ったお金)=(?)
この答えの数字(?)の部分の大きい人が、お金持ち。
つまり、一見、お金持ちなら、すごくぜいたくできそうに思えるけれど、ぜいたくしすぎると、お金はなくなってしまうことがわかる。
お金を使いすぎないことを、「倹約する」と言います。いくらお金をたくさん持っていても、倹約ができない人は、じゃんじゃんとお金が出ていく。だから、お金持ちにはなれません。
お金持ちになるうえでの問題は、ふたつあることがわかる。
1 お金をどうやって手に入れるのか。
2 お金をどういうふうに使うのか。
この両面がわかっていないと、お金持ちにはなれません。でしょ?
さて、お金を持っていると、いいことがあります。それは、ある程度持っていれば、心の落ち着きと安心が手に入るということです。
逆に、お金がなくてビンボウだと、ドキドキそわそわ、不安になることが多いんだ。キミたちはお金がなくて不安になることはないと思うけれど、大人になると、よくわかる。そういう意味でも、お金は大事です。
でも、「お金持ちになりたい!」って思うことは、よくないことのように言われることが多いんだ。それは、お金をほしがる姿はカッコ悪いし、お金がほしいばかりに、まちがったことをしてしまう人もいるからだね。
しかし僕は、お金持ちを目指すのは、かまわないと思う。知っておかなければならないことを、ちゃんと勉強さえしていればね。そのためには、
「お金ってなんだ?」
って考えることが大事なんだ。
このパート1をすっかり読み終わるころには、キミはお金に詳しくなっているだろう。そして、お金とのつきあい方がうまくなる。お金持ちになるきっかけをつかむかもしれない。
だから、僕の話を聞きなさい。
いざ、スタート!
2 「金銭感覚」と「信用」がお金持ちへの道だ!
お金持ちの人が幸せな人なの?
みんなは、お金持ちになりたいですか?
なりたいですね。僕もなりたいぞ。
じゃあ、なんで僕らはお金持ちになりたいと思ってしまうんだろうか。
「そんなこと当然じゃん!」
と思っていたけれど……、ちょっと気になるね。
そこで、こんな問題を出してみたい。
〔問題〕「お金持ちの人=幸せな人」でしょうか?
そーだよ、そーだよ、って声が聞こえてきそうだよね。「だって、なんだって買えるじゃん!」って思うでしょ。でも、本当にそうなのだろうか。
では、このことを考えるために、もうひとつ問題を出そう。
紙と鉛筆を持ってきて、準備してくれたまえ。
〔問題〕お金は何に使いますか?
さぁ、書いてみよう。よーい、スタート!
これはいっぱい書けるでしょう。キミがこれまでお金を使ったものを思い出してみればいい。人から聞いた話を入れてもかまわないよ。
1 本やマンガなど、ほしいものを買う。
2 鉛筆やノートなど、必要なものを買う。
3 食べるものを買う。
4 服を買う。
5 遠くへ行くときに、電車などの交通機関に乗る場合に使う。
6 映画館や遊園地などの入場料を払う。
……えーと、ほかに何を思いつきましたか?
7 お城に住む。
って書いた人はいますか? 想像力が豊かでいいですねぇ、キミは。
8 お金をながめてニンマリする。
なんて書いた小学生は、さすがにいないだろうな(笑)。
さて、いろいろ出てきましたが、これをカンタンにまとめるとだな、お金はやりたいことをやるために使うんだよね。そうでしょ?
ここに、まず気づいてもらいたい。
ってことはだよ、お金はやりたいことをやるための道具みたいなものだということなんです。
紙を切るためには、はさみを使う。速く走るためには、運動靴をはく。それと同じだ。
つまり、お金をたくさん集めるのが最終的な目的ってわけじゃないんだよね、じつは。
だから、想像してごらんよ、お金だけが山のようにあるのに、やりたいことがひとつも思い浮かばない人。
つらいよー。退屈だよー。意味ないよー。
こういう人は、幸せだと言えませんね。
だから、「お金持ちの人=幸せな人」という式は、成り立たないんだ。
逆に、「やりたいことがたくさんある人=幸せな人」という式は成り立つ。
人間は、希望や欲望や野望をかなえると幸せを感じます。そのための道具が、お金。この順番なんです。やりたいことがあるから、お金が必要だ、稼いでこよう、と考える。これが、お金を感じる基本的なスジってもんだね。
お金を使うための「技」を身につけろ!
さて、お金は道具だということを説明しました。けれど、道具だけがあったって、使い方を知らなければ役に立ちません。
はさみで紙を切るときは、指をはさみの輪っかのなかに入れて、上手に力を配分しながら動かさないと、紙は切れませんね。細かく切ろうと思ったら、指も細かく調整しながら動かさないと、上手には切れません。
これは、お金にも同じことが言えます。
お金とどうつきあっていくかの技は、はさみを上手に使う技と変わらないんだよね。思い出してごらん。キミたちも、小さいころは、はさみが上手に使えなかったはずだ。でも、使っているうちに、だんだんうまくなっていったでしょう。
それと同じように、お金を道具として使うための練習が必要になってくる。技も必要になってくる。
この技を身につけていく感覚や、お金のことをどう感じ取るかという感覚のことを「金銭感覚」と言います。お金に関するセンサーのことだね。
「金銭感覚」は、たいへん重要なキーワード。
金銭感覚を身につけるのは、じつはちょっとむずかしい。大人になっても身についていなくて困っている人はたくさんいる。センサーのないまま大人になっちゃった人もいるんだよ。
この感覚をマスターできた人から、お金持ちに近づいていくと僕は思います。だいじょうぶ、このパート1では、そのことをきっちり教えてあげるからね。
ただの紙切れが「お金」になるヒミツ
さて。まずは、キミの貯金箱から、千円札を持ってきてください。持っていない人は、お父さん、お母さんに頼んで、一瞬だけ借りてこよう。
お札というものを、よく観察してみようじゃないか。そして、お金の特徴を知っておこう。
用意はできましたか? じゃあ、千円札を見てみよう。
千円札。きれいだねぇ。いろんな模様があるし、旧札なら夏目漱石、新札なら野口英世の顔が書いてあります。
そして「千円」と書いてある。当たり前だよね、千円札なんだから。
じゃあ、その上になんて書いてあるでしょうか? よーく見てごらん。「日本銀行券」と書いてあります。ここに注目!
これは何かというと、僕らが、お金やお札と呼んでいるものの、正式な名前なんです。「日本銀行」という名前の銀行が出している「券」だから「日本銀行券」。略して「日銀券」という場合もあります。
つまりね、券なんだよ。切符みたいなもんです。
ひぇー、お金って切符なの?ってびっくりするでしょう。でも、そうなの。特別な紙でできた切符なんだよね。
じゃあ、どうして紙でできた切符をものに換えることができるのでしょうか?
それはね、ただの紙切れなんだけれど、みんなが「これをお金だ」と思っているからなんです。お金だということを信じているから。信用しているから。信用というのは、たしかなものとして受けいれることですね。
その証拠に、この「日本銀行券 千円」と書かれた切符は、外国のお店で使えるでしょうか? 使えませんね。日本銀行券は、日本専用の切符なんです。日本のお金を知らない人にとっては、ただの紙切れにしか見えない。
外国に行ったときは、その国の人ならだれでも知っていて、なおかつ信用しているお金、つまりその国が出している銀行券に両替してからじゃないと使えないんだね。
信用をたくさん集めた人がお金持ちになれる
このように、お金というのは、人々の信用があるからお金として使えるのです。信用がなくては、お金ってものはありえない。
これは、お金の成り立ちと関係があります。大昔はどうしていたかというと、物物交換をしていたんだよね。たとえば、
「僕が持っているダイコン十本と、あなたが持っている服を作る布五メートルとを交換しましょう」
「ああ、それはお互いにとって、いい交換ですね」
みたいに。けれど、それでは交換に使う物をいちいち持ち歩くのがたいへんだったから、物のかわりに石や金属のかたまりを使うようになった。それがやがて、紙や硬貨に変わったわけ。
「おう、その紙を信じることにしようぜ。うらぎりっこなしだぜ」
というふうに。
お金というものは、じつは、信用を形に変えたものだったんだね。
日本の法律では、「円をお金として使います」と定められています。同じように、アメリカではドルがお金ですね。ヨーロッパはユーロです。それら紙や金属でできた切符を、お金として信用して使っている。このドルとユーロ、そして我らが円の三つは、世界のなかでもとくに信用が高いお金とされています。
国のお金が信用されていないと、国が貧乏になります。そうしたら、自動的に国民の生活も貧乏になるよね。国と国の間の信用でその国のお金の価値が決まるのだから、ちゃんとした国でいなきゃいかん、というわけですね。
さて、僕がここで言いたい大切なことは、もうわかってくれたよね。お金というものを考えるときの最大のキーワードは「信用」ということだ。
お金が信用を形にしたものである以上、信用がなければお金持ちにはなれません。もっと言っちゃえばね、「お金持ち=信用持ち」と言っても言い過ぎではないとまで、僕は思います。ですから、信用をたくさん集めた人はお金持ちになれます。
クラスにもいるでしょ。「あいつは信用できるよな」ってヤツ。
そういう人は、お金持ちに近いかもしれないね。いまの時点で、一歩リード!
お金持ちになるためには、信用度を上げる技を知ることが大切なんだ。
3 おこづかいで技を磨け!
お金の使い方を覚えるトレーニング道場
「金銭感覚」と「信用」。
お金とつきあうための大事なキーワードがふたつ、登場しました。
それを頭において、ここからは具体的な話に入っていくぞ!
では、いきなり問題だ!
〔問題〕お父さんやお母さんは、どうしてキミたちにおこづかいをくれるのでしょうか?
「お金をくれてラッキー」
「親だからお金をくれて当然じゃん」
「だって、いろいろ買いたいものもあるし」
とか、いろいろ思いますね。
でも、意味もなくくれるワケじゃない。そこにはお父さん、お母さんの願いがある。ズバリ「お金の使い方を覚える練習をしなさい」ということなのだ。
そう、おこづかいというのは、お金の使い方を覚えるトレーニング道場だ。おこづかいをもらうこと、使うこと、貯金することを通して、キミたちはお金にまつわるいろんなことを練習していく。