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(2021/11/26 追記)

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放射性物質の正体
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くらし
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第4章 原子炉内で何が起きているのか?

『放射性物質の正体』
[著]山田克哉 [発行]PHP研究所


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原子炉の構造

 原子炉内には「燃料棒」が束になった「燃料集合体(fuel assembly)」が入っている(図4−1)。すでに述べたが、ウラン鉱山から採掘してきた「天然ウラン」は重量比にして99・3%がウラン238であり、残りのわずか0・7%がウラン235である。1%にも満たない0・7%しか含有されていないウラン235が中性子(正確には「熱中性子」、後述)を吸収して核分裂を起こす。核分裂に関する限り99・3%もあるウラン238は熱中性子を吸収しても分裂しないため、役立たずである(後で役に立つことを話すが)。


 そこで今、燃料棒は天然ウランでできているとする。ウラン235核を効率よくしかも核分裂連鎖反応をコントロールしやすくするためには、核分裂から高速度で飛び出してくる中性子(高速中性子という)をいったん減速しなければならない。速度が小さいほど(ノロく走るほど)中性子は核に捕獲されやすく、したがって分裂を起こしやすいからである。高速中性子と低速中性子が衝突すれば(同じ重さの粒子同士)、高速中性子が最も効率よく減速される。核分裂から出た中性子のほとんどは高速中性子である。高速中性子同士が衝突しても減速効果はない。そこで高速中性子を低速陽子にぶつけてやって高速中性子を減速させるのである。なぜなら陽子と中性子の重さはほとんど同じであるからである。

 水はHOで多くの水素を含んでいるが(図1−3)、水素原子の核は陽子そのものである。水は低温であると同時に、水を構成している水分子は一つ残らず全部水素結合によって結ばれているので、水分子を形成している陽子は自由に動き回ることができず、したがって陽子はノロノロと動いていることになる。その低速で動いている陽子に高速中性子を衝突させると、衝突後の中性子はかなり減速される(図4−2および図0−1)。この理由で高速中性子を減速するために「減速材」として水を使う。

(注:分裂から飛び出た高速中性子は水分子(HO)にぶつかるのではなく、水分子を構成している水素原子の核すなわち陽子にぶつかるのである。)

 中性子と陽子の衝突は原子炉の温度に匹敵するまで続き、そこまで減速された中性子のことを「熱中性子」と言う。高速中性子が陽子に衝突して熱中性子まで減速するまでの衝突回数は20回前後である
(注:核分裂から放出される高速中性子は、核分裂と同時に放出されるが、このような中性子は“即発中性子”という。ところが核分裂から少し時間をおいて放出される“遅発中性子”がある。この遅発中性子のおかげで原子炉のコントロールが可能になる。)

燃料棒の構造

 原子炉の炉心の中心に位置する燃料棒の1本に注目しよう(図4−3)。核燃料をセラミックで固め直径1センチ、長さ1センチほどの筒型のペレットにして縦1列に積み重ね、長さ4メートル、厚さ2ミリの燃料被覆管(fuel cladding tube)に収める。被覆管は原子番号40のジルコニウム(Zirconium)という金属の合金であるジルカロイという材料でできている。


 原子炉の燃料棒の総数は発電量にもよるが、数千本である。

 軽水炉の場合、ペレットには3〜5%に濃縮された酸化ウランが焼き固められている。ウランを酸化(さびること)させ、さらにセラミック状に焼き固めると燃料ペレットは非常に溶けにくくなり、その溶ける温度は上がる(融点は2800度)。MOX燃料のペレットはウラン235がプルトニウム239に置き換えられている。

 被覆管をジルコニウムでつくったのは、中性子を吸収する確率が非常に小さい(中性子を吸収しがたい)からである。個々の燃料ペレットの全領域では核分裂連鎖反応が起きている。1回の分裂ごとに中性子が2個以上飛び出すので、ペレット内では多くの中性子が発生している。これらの中性子がウラン235(あるいはプルトニウム239)の核に吸収されて分裂を起こしている。中性子こそが核分裂を引き起こさせる大元締めである。したがって中性子がペレットを覆っている燃料被覆管に吸収されてしまうと、ペレットの内の中性子の数が減少してしまい、終いには核分裂連鎖反応がストップしてしまう。これでは困る。

 だから燃料被覆管には、中性子を吸収しがたいジルコニウムの含有率が圧倒的に大きいジルカロイという合金が選ばれたわけだが、もう一つの理由は、ジルカロイは高温の水に腐食しがたいという点である。

 しかし溶ける温度(融点)に問題がある。酸化ウランでできているペレットの融点は2800度で、それを被覆しているジルカロイでできている被覆管の融点は1767度である。だからメルトダウンが起こると、まず先に燃料被覆管が溶けてしまう。

 ペレットの中でウラン235(あるいはプルトニウム239)の核が周りの水によって減速された熱中性子を吸収することによって、分裂を起こしている。したがってペレットの内部に核分裂片(核分裂生成物)が溜まっていく。核分裂片は中性子過剰であるのでベータ崩壊し、さらに分裂片の種類によってはベータ崩壊後ガンマ崩壊もする。したがってペレット自身からベータ線やガンマ線が放出されており、ペレット自身が放射性物質になっている。燃料被覆管は、これらの放射性物質が燃料棒の外に漏れ出ないようにする役目もしている。

 核分裂によって発生した熱でペレットの温度は上がるが、燃料棒の周りを循環している冷却材によって絶えず発生した熱を持ち去られているので、ペレットの温度はいつも摂氏300〜400度ぐらいに保たれている。ペレットの“融点”は2800度であるし、また燃料被覆管の融点も1767度であるので300〜400度ぐらいでは燃料棒は溶けない。炉心の温度が2700度以上になると、いわゆる「メルトダウン」が起きる。ということは燃料棒全体が溶けてしまうことを意味する。

なぜウラン濃縮が必要か?

 天然ウランには、二つのアイソトープであるウラン235とウラン238が混じっている。このうち中性子を吸収して核分裂を起こすのは、ウラン235である。核分裂から発生した高速中性子を減速させて熱中性子にしたほうが、核に吸収されやすい(分裂を起こしやすい)。高速中性子の減速材には水を使うが、水には水素原子が豊富にある。水素原子の核、すなわち陽子と高速中性子を衝突させることによって、中性子を減速させるのである。ところが困ったことに、水素原子の核、すなわち陽子は中性子と衝突するといつも中性子を減速させるとは限らず、中性子は陽子と衝突してそのまま核力によってくっついてしまい、重陽子を形成してしまう場合がある(図2−2参照)。つまり水分子の陽子とくっついてしまった中性子は、ウラン235の核分裂に寄与しないことになる。つまり水は中性子を食べてしまうことがある。

 すると原子炉内では中性子不足となり、核分裂連鎖反応を持続するのは難しくなってしまう。これを補うために中性子を吸収して分裂を起こすウラン235を少しでも多く含むようにしてやるのである。天然ウランを濃縮し、核分裂を起こすほうのウラン235の含有を0・7%から3〜5%に「濃縮」してやってこの濃縮ウランで燃料ペレットを作製するのである。
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