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昭和疾風録 興行と芸能
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エンタメ
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終章 「ハレ」と「ケ」考

『昭和疾風録 興行と芸能』
[著]なべおさみ [発行]イースト・プレス


読了目安時間:24分
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「ハレ」と「ケ」とは



 日本の社会機構には、古来、暗黙の掟が存在しています。


 余り難しく考えないで下さい。簡単に申しましょう。


 それは基本的には「ハレ」と「ケ」の世界です。二つの社会で成立しております。

「暗黙」と申したのは、それが明記されていないからです。しかし観念としてしっかり存在しております。観念って見えないですよね。


 だから、ないと言えばない、あると言えばある。物事に対しての考えです。見解とも言えます。


 では、まず「ケ」とは何でしょう。

「ケ」とは日常存在している全てを言います。字で書きますと、読みにくいです。めったにお目に掛からぬ字ですよ。「()」と書きます。辞書で引くと、「おおやけでないこと。よそゆきでないこと。ふだん。日常」等となります。


 つまり、私達の日常の生活を言うのですが、本当の本当は、この言葉を理解する為には、「生産する為の」との付加が必要なのです。「生産する」とは、何かを生み出す為の労働を言います。そうした「働きの日常」が「ケ」なのです。


 判りやすく言えば、「朝は朝星、夜は夜星、昼は梅干頂いて」と戯歌がありますが、労働の日常が「ケ」なのです。極く当たり前の人間が生きて行く為の行動こそが、「ケ」だと言えます。




 一方、「ハレ」は、その正反対を言います。非日常的なことを言います。「特別な」とか「正式」とか「おおやけ」「公衆の前」と辞書には出て来ますが、本当の本当は、少し侮蔑の意味が込められていることを知っておくべきでしょう。


 日本という国に王国が安定的に確立したのは、八世紀でしょう。「鳴くよ鶯 平安京」は七九四年、京に都が成立した年と覚えましたよね。この時代迄に支配者階層以外の人々の中に植え付けた思想です。実は「ケ」も「ハレ」もヘブライ語なのですよ。


 それが「ケとハレの思念」です。


 つまり、働く者が居なくては国家の中枢は成り立ちません。


 何時の時代も、何処の国家も、支配する層とされる層で成り立っているのが事実です。


 しかし、支配する側は、常に反発・反抗を恐れているのが不変の事実です。


 従って国家を治めるには、生産に従事する人々を上手に使いこなすことが重要です。


 その手立てこそが、「ハレ」なのでした。「ハレ」は、「娯楽」が正解なのです。

「ハレ」は「ケ」で生きる人々に、時には憂さを晴らさせる為に仕組んだ色々の工夫を言います。その工夫を与えて、特別の思いを味わえることで「ケ」に生きられるように仕向ける仕組みなのです。



 太古から、


 畑仕事に背を向ける者、


 漁に行きたがらない者、


 牛も馬も山羊も面倒見ない者、


 狩りに出ない者、


 木々の伐採も植林もしない者、


 蚕の育成に知らんぷりの者、


 鉱山から逃げ出す者、


 採掘も砕石も放り出す者、


 石積みも粘土踏みもそっぽ向く者、


 こんな非生産的な人間は居たのです。


 充分な食糧を確保出来ない社会では、こうした者は放逐されたでしょう。しかし、日本列島は豊かな島でした。四季があり、海にも川にも魚貝が群れ、山野に鳥獣が生き、果実も富む別天地だったのです。


 ここで落ち着いた中近東(イスラエル)からの渡来人は、移住して来るや直ぐに富んでいきました。


 豊かさの中にしか文化は芽生えません。


 食べられる一年を構築すると、国家は、「ケ」の中で生きられない人々を見つめる余裕を持つのでした。


 なんと日がな一日、


 踊りまくっている者、


 歌いまくっている者、


 奏でまくっている者、


 喋りまくっている者、


 占いまくっている者、


 料理しまくっている者、


 絵を描きまくっている者、


 木や石から型づくりまくっている者、


 こんな非生産的というか非製産的というか、そうした人間にも、社会は目を向けるところが人間の営みの凄いところです。


 そこでこうした人間を指して、ヘブライ語の「クシュ」が発音で訛り「クズ」となり、日本語で、「屑」となりました。人間の屑です。しかしこれを上手に使いこなす訳です。これが人間社会の立派さですね。


 人間としては人間の屑であっても、役立つように使って役立てました。

「ケ」の生活で不満が溜まった鬱憤を、時には吹き飛ばさなくてはならない。


 ならば、そうした場所を造って、そこに屑達を従事させようと施政者は考える訳です。


 それが「ハレ場」です。「ハレ」の物事がどっさり詰まった場所です。非日常的なことが展開する別天地です。

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