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現代の職人 質を極める生き方、働き方
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第四章 魔鏡(京都府)

『現代の職人 質を極める生き方、働き方』
[著]早坂隆 [発行]PHP研究所


読了目安時間:13分
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最後の和鏡師


 薄闇の中、その円形の鏡に光が当てられる。


 反射光が白いスクリーンに投影される。当然、そこに照らされるべきは、光の円のはずである。ところが、目の前の光景は、想定されるものと大きく異なっている。


 光の円の中に、一体の像が浮かび上がっているのである。その像の正体は、凝視するべくもなく容易に認識できる。その像とは、十字架に(はりつけ)にされたキリストの姿であった。淡い神秘的な輪郭の出現に思わず息を呑む。


 神々しい光とは、まさにこのことか。


 生まれて初めて味わう衝撃であった。


 鏡面には何の細工も見られず、普通の鏡と何も変わらない。どの角度から鏡面を覗き込んでも、見慣れた自分の顔が映るだけで、キリスト像などどこにも見当たらない。鏡を裏返して背面を確認しても、そこには松や鶴の模様が描かれているのみである。


 すなわち、外見上は一般的な鏡と全く同様である。


 このような鏡のことを「()(きよう)」と呼ぶ。映し出される文様は、キリスト像の他、仏像や経文が浮かび上がるものもある。世界的に見ても、このような鏡は極めて珍しい。この魔鏡を制作したのは、京都府に住む山本(あき)(ひさ)さんという和鏡師である。

「古くからの製法によって魔鏡を作ることができるのは、現在では私と私の父親だけだと思います。日本で二人という状況になるでしょうか。このままいくと、自分が最後になってしまうかもしれません」


 魔鏡は銅鏡の一種である。銅と(すず)の合金から作られる銅鏡は、弥生時代には中国大陸から日本に伝わっていたとされる。日本神話における三種の神器の一つが()()の鏡であることは言うまでもない。


 そんな中、魔鏡も古くから日本に存在した。近年の研究によれば、古墳時代に作られた三角縁神獣鏡も魔鏡であったとされる。邪馬台国の卑弥呼も、この魔鏡の作用を使って自らの権威を高めたのであろう。古来、銅鏡の中でもとりわけ魔鏡は、呪術的な場面で使用されたに違いない。権力の象徴であったとも考えられる。


 銅鏡の歴史において、背面に日本独特の文様をあしらった「和鏡」が作られるようになったのは平安時代だと言われる。平安貴族の化粧道具として、和鏡は定着した。


 その制作の中心地は京都であった。その後、銅の生産量が増えたこともあり、和鏡は徐々に庶民の手にまで渡るようになった。

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