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昭和天皇とその時代 新版 昭和天皇
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歴史
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まへがき

『昭和天皇とその時代 新版 昭和天皇』
[著]小堀桂一郎 [発行]PHP研究所


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 本書は平成十一年八月にPHP新書の一点として刊行した『昭和天皇』の増補改訂版である。昨平成二十六年十一月に同じPHP研究所の学芸出版部部長大久保龍也氏から、旧著の改訂版としての本書を、今度は単行本として再刊したいとのお申し出を頂いた時、己の旧著にいささかの愛着を覚えてゐた著者にとつて、それは嬉しい御提案ではあつた。


 ところが、私が旧著へのいささかの愛着といふ時、それは主として先帝陛下八十七年の御生涯を、一冊の新書判といふ簡約さの中にそれほど疎略にならない形で収め得たといふ点にあつたのだから、それを増補して単行本に再編するとなると、どうも再度簡約さを利点として吹聴することは()(にく)くなる。それに加へて、如何に初心を変へることなく昭和天皇に捧げる頌徳の紙碑を建て直したいとの志を貫くにせよ、十五年前と現在とでは、謂はば執筆条件に大きな変化が生じてしまつてゐることを無視するわけにゆかない。


 条件の変化とは、平成二十六年九月に実現した、宮内庁編纂『昭和天皇実録』の公開である。それは平成二年に編纂を開始し、初出の資料四十件を含む約三千件の資料を整理・分析する作業に二十四年の歳月を費した結果、六十一巻・一万二千頁の日録様式の昭和天皇一代記として完成した、これも敢へて言へば長大な資料集である。公刊は平成二十七年三月に無事に緒に就いたが、全十九巻の分冊として全巻の完結は五年後になる由である。本書の著者は二十六年九月に公開された稿本の分析を数人の研究者と分担の形で推し進める作業を委託され、為に担当以外の年度にも亙る全巻を貸与される形でこれを暫時手許に置くことができた。


 さうなると、旧著の補訂のためにはこの『実録』(本書での引用・言及は全てこの略記の形で記載する)を全巻照合する必要が生じ、その作業を満足のゆく迄深めてゐたら、叙述の分量がどこまで膨張・肥大するか、(およ)そ際限がないとの恐れがある。そこでこの大な典拠資料を傍に置いての本書の補訂作業は、結局旧著の簡易第一を心掛けた時とほぼ変らないくらゐの禁欲主義を自分に課しての進行とならざるを得なかつた。


 一点大きな違ひとなる加筆は、旧著では新書判で十頁ほどの簡約な摘要で済ませておいた、大正十年皇太子時代の欧洲御巡遊の旅の記録を、『実録』に基いて日録の様式を以てなるべく詳しく抄記してみたことである。この部分も、爾余の年度との均衡の必要もあつて、存分に筆を費すといふまでには至らなかつたが、他面後年の御閲歴の中で、この御巡遊の御経験・御記憶が反映してゐると思はれる部分には、必要に応じて各処でその関聯に論及することにもなつた。


 御即位五十年及び六十年の記念祝賀式典が行なはれてより以降の御事蹟については、本書を手に取られる比較的若年の読者にとつても、それは自ら経験し記憶してゐる同時代史の範囲に入つてゐる部分が多いのではないかと思はれる故に、叙述は思ひ切つて控へ目にすることとした。

『実録』は、既に一般にも知られてゐる評価であらうと思はれることだが、先帝陛下の生涯の御事蹟について、全く未知の新事実を伝へたり、見方の転換を迫つたりする様な、意外な情報を提供してゐる所は殆どない。さうではあるが、然し、一見淡々たる即物的な事実の羅列の行間から、今までの多くの歴史研究者が気付いてゐなかつた様な、昭和天皇の御動静や御内面についての新しい意味づけが微妙に浮び上つてくる場面がないわけでもない。只、本書が今回の改訂を通じてその様な新しい色彩の発色に成功してゐるかどうか、別段に自信があるわけではなく、その成否は読者の判定にお任せするより他ない。



 平成二十七年四月

著 者

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