『最底辺グラドルの胸のうち』
[著]吉沢さりぃ
[発行]イースト・プレス
私自身も枕営業できたらよかったのになぁ
……とすら、たまに思う。
「吉沢さりぃ? あのデブス? 枕だろ?」
大嫌いなグラドルにさんざん陰で言われていた。彼女は私よりメディアに出ていない、底辺ともイジれないリアル底辺グラドルだ。
芸能界のなかのヒエラルキー最下層にいる私クラスでも枕営業というものは存在する。実際にやっている子は多いし、都市伝説でもなんでもない。私も何度か誘われた。「コイツと寝ても、寝るに値する仕事来ねーだろ」とあっさり断ったこともあれば、「あー、あの人とSEXしてれば、いまごろ、あの番組出られたなぁ~」なんてこともある。
とはいえ、もう34歳。グラドルとしても、女としても、旬が過ぎたのだろうか? 枕営業すら誘われることはなくなった。
もともと枕営業って、仕事もお金もあるおじさんから誘われるイメージだった。だけど、最近は自分からガンガン行く子が多い。若いグラドルで、とある番組のプロデューサーと仲がいいおじさんに、「いっぱい番組に出してあげるように言うね?」と言われただけで濃厚なSMプレーをかましていた子がいた。
ほかにも「性欲たまってたしぃ!」「ワンチャンおこづかいくれればいいなぁ!」なんて言い訳しながらも、マジで私でも無理! と断りたいような人とまで寝ている子を何人か見て、「このオヤジと寝て、その仕事!?」と、申し訳ないけど白い目で見ざるをえない子もいた。
枕営業がアリかナシか。私はアリ派。こんなナリして面食いというか、視覚的に無理な人とはSEXできないので私はするタイミングがなかったが、枕アリの考え方の人のほうがいいというより、武器が多いと思う。同じスペックの子が10人いたとして、そのなかから3人選ばなきゃいけないとしたら、なんかプラスアルファがある子を選ぶのは当然だし、私が権力あるおじさんならSEXできる子を選ぶでしょう(笑)。
ただ、ひとつだけ思うのが、“枕営業する相手は慎重に選べ”ということ。SEXしたのに、当初くれるはずの仕事をくれない、約束したギャラをくれない、なんてことはザラ。SEXという裏技を使うのは自由だけど、使った挙げ句、報われない場合にわめくのはダセェ! と思うし、自分の見る目がなかっただけだから致し方ない。どうせなら確実に仕事をくれる人を選別せにゃあかん。
私は枕営業を人がする分には、まったくなんとも思わない。というより、私自身も枕できたらよかったのになぁ……とすら、たまに思う。いくら真面目に、がむしゃらに頑張っても、自分の力じゃとうてい無理なことがあって、そこに自分を好いて推してくれるおじさんの力があれば無理が可能になることもある。前に書いたように、「吉沢さりぃは枕営業だ!」と言われると、「枕してんなら、もっと売れてるわ!」とツッコミたくなる。
実際、枕営業で売れた子も見た。「あ、この人と寝たら、あんなデカイ仕事来るんだなぁ」なんて呑気に思ったが、彼女にまったくポテンシャルがなければ、ヤるだけでポイ! だし、可能性があるから、お金になるだろうと見込まれたからこそ仕事につながったんだろう。
枕=大きな仕事をくれるという考え方は、あまりに単純すぎる。枕営業はあくまで最後のひと押しにすぎない。どうやさしく見ても、自分が選ばれるはずのない仕事であれば、ムダ撃ちになるからSEXする必要はない。枕営業は見きわめが大事。数撃ちゃ当たるわけではない。私がいくら大手企業のスポンサーと寝ても、CMには出られないだろう。そういうこと。でも、もし深夜番組のエロ枠なら、プロデューサーと寝たら長い時間を使ってくれるかもしれない。
いま、まだ20代で、30代のいまの考え方を持っていたとして、仕事のやる気に満ちあふれていて、何回かの世に出ないSEXで約束された未来が保障されるんなら、そりゃやるわ! 目をつぶってSEXするよ!
誰かイケメンで、加齢臭がしなくて、やさしく抱いてくれて、デカイ仕事を紹介してくれるおじさま、いませんか?
1回SEXする分にはいいだけで、
たんに声をかけられるレベルの容姿なんです。
みなさんは自分をどの程度の容姿だと思うだろうか? 自分で自分の容姿の客観視はなかなか難しい。私自身は幼いころから容姿端麗ないとこと激しく比べられ、身内に「ブスだから勉強しなさい」というアグレッシブな英才教育を受けていたので、自分のことは、やべぇブスだと思って生きてきた。
が、中学に入り、化粧を覚えたあたりから、多少は人に「かわいいね」と言われるようになる。高3のときには個性的な格好をやめ、セミロングの巻き髪にアナウンサーのような格好にシフトチェンジをすると、そこそこナンパをされ、そこそこモテた。まぁ、人より胸がデカかっただけかもしれないが(笑)。
そして大学に進学したあたりから、「そこらへんのグラドルよりかわいい!」なんて言われ始める。ぶっちゃけ私自身も、このときはそこらへんのグラドルより自分はかわいいだろうと思い始める。AVやキャバクラ、弱小事務所にはさんざんスカウトされたし、飲み会に行けばだいたいいちばんモテたし、毎回ひとりには告白された。「私はイケてるんだ!」と思い始めた。
満を持してイエローキャブを受ける。私は“そこらへんのグラドル”よりかわいいってみんなが言うから、余裕で受かると思っていた。合格通知はいっこうに届かず、首を傾げる。なんでだろう……? まぁ、いいや。ほかにピラミッド、Aチーム、プラチナムと、とにかくしらみつぶしに履歴書を送った。でも、一枚も合格通知は来ない。
一度受かった事務所は、所属が決まった日に社長やスタッフに焼き肉に連れて行ってもらい、「これから頑張ろうな!」と肩を叩かれるも、3日後には「DVDが決まらなかったので、やはり不採用で」と電話を切られた。あ、あれれ……私って、たいしたことない? みんな私のことかわいいって言ってくれたのに?
私は素人レベルにはそこそこかわいく映っても、飲み会で1回SEXする分にはちょうどいいだけで、本命の彼女とか女優になれるレベルではまったくないのだ……。すべてにおいてちょうどいい。あくまで中の中。本当に私がかわいければ、大手の事務所に入れたはずだし、合コンでもすぐに告白なんかされずにちゃんとアプローチされたと思う。本当に美人って、意外にモテないというか、「声かけづらい!」人が多い。声をかける前に、恋人がいるだろうな、俺なんて……ってなるんだろう。まわりのモテる子を見たら、だいたいたいしたことない。
しかし、ちょうどいい美人って、人生お得な気がする。だいたい私レベルの容姿でモテる女って、根本的に「私、イケてる!」って勘違いしているから、人生自体は楽しいのだ。私は調子に乗りすぎて芸能に片足を突っ込んでしまったから、自分のリアルな容姿のヒエラルキーを目の当たりにしてしまったけど。もし普通の暮らしをしていたら、一生勘違いしていたでしょう(笑)。それもアリだったなぁ。
本当に女に好かれない。だからといって
男に爆発的に好かれるわけでもないところが悲しい。
「さりぃちゃんって、まんべんなく女に嫌われるよね」。ちょっと前に尊敬するライターさんに言われた。あまりの雑な悪口に笑ってしまった。
だけど、私は自分で言うのもあれだが、本当に女に好かれない。だからといって男に爆発的に好かれるわけでもないところが悲しい。
なんで私は好かれないんだろうか? おっぱいが大きいから? グラドルだから? 乳がデカくても美女じゃないし、グラドルって言ったって売れてないんだから、むしろやさしくしてほしい。
自分ではわからないが、たぶん私は相当に空気が読めない。自分では仲よくしているつもりの相手に、「さりぃちゃんのこと、嫌いって言ってたよ」とほかの子から言われた回数は、余裕で両手に足りない。
気づいたらLINEから消えていたり、楽屋ですごく仲よく話したりしたのに、1カ月くらいでフォローを外れていたなんてこともザラ。だから雑誌の企画やなんかで「仲よしのグラドルさん、呼んでいいですよ」なんて言われると、正直言って困る。だって、いないんだもん。
たまに好意的にしてくれる子もいるけど、私が載っている雑誌の編集の人をつなげてほしいとか、キャスティングしてほしいとか、仕事の飲み会に呼んでほしいとか、そんなんばっかり。
「仲よくしてください!」の裏に見え隠れする女の欲望ってあるじゃないですか。あれは怖い。
つい先日の忘年会でも、「さりぃちゃんって、モテるの?」と某芸人さんに聞かれた。まったくモテないし、そんな質問をされたことにびっくりした。続けて彼は、「さりぃちゃんのこと嫌いって子が、すごく多いんだよね」と笑った。もう面白いから全員の名前を教えてくれ! とせがむと、“それぞれの子に嫌われた原因をちゃんと話す”ことを条件に承諾してくれた。
1人目、Aちゃん。
彼女は別の項でも書いたが、私が紹介した飲み友だちとつきあって、私とその彼ともうひとりの男友だちと長時間飲んでしまったことがケンカの原因となって別れたことに腹を立てて私にブチ切れた女だ。“毎日土下座して謝るべきだ”と脅したり、当時数人のグラドルとともにした映像を、“さりぃと映るのがいやだから、撮り直しのお金を払え”などとヤクザばりに脅してきたりした女だ。
嫌われるも何も、そこらじゅうに私の中傷LINE送っていたり、よくわからんけど、その男の借金1万円を払わされたり、もうさんざんだった。あ、土下座もさせられた。これについてはあらためて別項を読んでもらいたいが、こっちも嫌いだし、何、おまえだけ被害者ヅラしてんだよって話。
弁解も何も、あったことを話したら、みんな笑うこともなく引いていた。脅しのLINEのスクリーンショットもまだあるし、証拠はたくさん残っている。