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(2021/11/26 追記)

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おとな時間の、つくりかた
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ルポ・エッセイ
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時間を学び、時間を味わう──おわりに

『おとな時間の、つくりかた』
[著]山本ふみこ [発行]PHP研究所


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 いろいろな理由がかさなって、超特急で書くことになった本です。わたしに見えている理由は、ひとの都合や、この世の計画のようなものばかり。けれどもこういう場合、ひとの目には隠された理由もあるのではないでしょうか。



 時間を学ぶ。



 書きはじめたのは、昨年十一月おわり。その日は、わたしの五十歳の誕生日でした。一日に一本書くことを自分と約束しました。ほかにも仕事がありますし、主婦の役目もあるわけです。ちょっぴりですが、母としての活躍どころももっています。


 むずかしかったのが、時間の配分です。


 いえ、むずかしくなるのは時間の配分だろう、と考えていたのです。


 ところが、どうやらそれが心得ちがいらしいことがわかりました。配分などできようもないというのが、時間に対するいまのわたしの気持ちです。



 本文のなかにも、あちらへこちらへと、少しずつ書きましたが、いま、わたしは、ささやかに英文の翻訳の勉強をしています。二週間に一度教室に通うこと、「課題」にとり組むことが、この勉強の約束です。日本語にすると、四〇〇字で四枚から六枚分になるかというくらいの英文が、課題として目の前にひろがっています。ただ、ことばだけがひろがっているわけではなく、ものがたり、歴史、背景というものが、まるで推理の対象のように迫ってきます。それは、ちょうど知らない世界を旅するような時間です。


 けれども、このことがどんなに意味深くても、わたしには、仕事が片づくかあるいは片づく見こみを得た上で、勉強にとり組むという決めごとがあります。それが相当にきつく思えたのは、実際に勉強をはじめる前のことでした。


 はじめてみたら、こうです。


 課題に手をのばしたい一心で、仕事をしました。だらだらしているわけにはいかないのです。きょうはきょうとて、あとには、およそ五十年前のイギリスへの旅がひかえているのです。


 この本の、毎日一本ずつ書くという日々のなかでも、課題を休むことはありませんでした。机での仕事のつづきがまた机、と、思って可笑しくなることはありますが、不思議なほどこころが、そして頭のかたまった部分がほぐれます。


 こういうのは、時間の不思議です。


 こしらえようと思って、できるものではないらしいのです。



 時間を味わう。



 そうそう、同じ時期、こんなこともありました。


 毎年一月のおわりに、味噌を一〇キロ仕こむというのが、わたしの年中行事です。それを、ことしはやすみました。


 ことし、その時期の予定の混み方を見通して、味噌は言ったもんです。

「欲張るのもわるくはないが、過ぎるとやっぱりよくないよ。ことし、わたしはやすむからさ、来年また仕こんでおくれよ」


 わたしは、からっぽの(かめ)を眺めてため息をひとつ落としましたが、決めました。ことし、味噌は、やすむことにしました。

「やすむことにも、学びや味わいが、きっとあるよ。注意深くないと、気がつかないけどさ」


 と、甕のなかから声がします。



     ***



 この本は、久しぶりの書き下ろしです。超特急ではありましたが、かかわってくださった方々のおかげで、わたしには、それが凝縮されたものに思えるのです。御礼申します。



 ことに、PHPエディターズ・グループの見目勝美さん、どうもありがとう。時間についての本をと(いざな)っていただいたおかげで、いろいろな気づきを得ることができました。


二〇〇九年二月 土筆(つくし)を想いながら      

山本ふみこ 




 追記 文庫化にあたり、PHP研究所の加藤知里さんにたいそうお世話になりました。

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