魔法を研究するようになってから、長い長い時が流れました。

　きっかけはといえば、『サムエル記』に出合ったことです。この書は神戸の古書店の棚でホコリをかぶったまま、ひっそりと眠っていました。いまから約40数年前の夏のことです。

　サムエル記とは、イスラエルの王国時代を前後し、預言者サムエルの物語を記した旧約聖書の正典です。

　そのなかに「エンドルの魔女」なる文献があり、登場する魔女が呪術を施します。そのさまざまな魔法のおもしろさの虜(とりこ)になり、その後、本を読みあさっては魔法についての雑学をふやしていきました。

　本書のなかにあらわれる呪法・呪術は、すべて白魔術です。

　私の魔法研究科目には黒魔術もありますが、ここでは白魔術のみ紹介いたしました。いたずらに黒魔術を試み、危険が迫ってはならないからです。

　もしあなたが心から願い、魔法に念を集中することができれば、必ずよい結果を手にする日がやってくるでしょう。それほど、人という生命体のもつエネルギーは強いのです。まさに「願えば叶う」という言葉そのものです。

　魔法は、心のなかに眠る自己可能性の最大限の状態を引き出してくれる術のひとつです。自分の可能性を考え、魔法を真摯に受けとめ、真面目な態度で臨んでいただきたいと思います。

　それさえ忘れなければ、あなたは立派に魔法を操ることができるでしょう。

　科学の進歩は著しいですが、この先も魔法の世界がすべて明らかにされることはありえないでしょう。科学の手が届かない神秘のベールのなかで、永遠の自由を手に入れ、羽ばたきつづけてゆくのが本当の魔法だと、私は信じています。

エミール・シェラザード