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イギリスの失敗 「合意なき離脱」のリスク
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政治・社会
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第6章 EUはなぜ懲罰的な姿勢を続けるのか

『イギリスの失敗 「合意なき離脱」のリスク』
[著]岡部伸 [発行]PHP研究所


読了目安時間:23分
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非妥協的な姿勢をとるEU

「英国は、離脱交渉を巡る欧州連合(EU)の態度に強い怒りを感じている」


 離脱を巡る英国とEUの交渉が袋小路に入っていた2018年10月2日、保守党大会が行なわれたバーミンガムで英国のハント外相(当時)は、EUに対する怒りをぶちまけた。

「英国が建設的な意見を持ち込むたびに、『駄目だ、別の案を持ってこい』というのがEUの考えなら、それは交渉ではない」

「EUは交渉姿勢に慎重になる必要がある。唯一受け入れられる交渉結果が、離脱を望んだ英国を罰することだと本当に考えているなら、欧州の理想とは相いれない」


 ハント氏は、EUが離脱する英国への(ちよう)(ばつ)的姿勢を崩さず、友好的、建設的姿勢に転じないことに(いら)()ちを隠せなかった。離脱交渉が頓挫したのは、国論がまとまらない英国側のみならず、英国を罰しようとするEU側の(かたく)なな対応も背景にあった。


 英国からしてみると、17年3月29日、EUに離脱を通知したことを受け、EUのトゥスク大統領がまとめた交渉指針案について「双方が建設的に交渉に取り組もうと考えていることは明白だ」(英首相報道官)と前向きに評価し、英国とEUは深い特別なパートナーシップを続けることを求めて交渉を進めたが、非妥協的なEUの姿勢にはしごを外されたと受け止めている。一方でEUは、非妥協的、あるいは懲罰的な姿勢であるとの批判に、「そんな意図はない」(バルニエ首席交渉官)と繰り返す。


 しかし、産経新聞パリ駐在の三井美奈記者が「英国の欧州連合(EU)離脱は、双方の合意なしの『破局』が濃厚になってきた」として、「マクロン仏大統領は『英国民は【EUを出れば問題解消。カネも戻る】という連中にあおられた。彼らは(うそ)つきだと示された』と手厳しかった。英国はポピュリズム(大衆迎合主義)に便乗した。報いを受ける時だ、というのだ。(中略)(EU非公式首脳)会議で対英妥協を求める声は皆無。『われわれのやり方は変えない。出ていくなら迷惑をかけるな』という姿勢だ。(中略)EUが結束して危機に対処すべき時に、『出ていく』という国のわがままに付き合う余裕はない」1810月1日付産経新聞 【緯度経度】「英国のEU離脱、メイ氏の誤算」)と記している。EU側が非妥協的な強硬姿勢で英国との交渉に臨んできたことは明らかといえよう。


 この記事から56日後、英国とEUの交渉は妥結した。決して合意なしの「破局」ではなかった。それどころか、メイ前首相が国内の議会や国民からの支持を十分に得ないまま、見切り発車でEUと離脱案で合意したことが、袋小路に陥って無念の途中退場を余儀なくされた原因であったことはすでに記した。少なくとも、メイ氏とEUが離脱案で合意できなかったことによる破局でなかったことは明らかだ。


 しかし、EUによる「英国はポピュリズムに便乗した。報いを受ける時だ」「出ていくなら迷惑をかけるな」「『出ていく』という国のわがままに付き合う余裕はない」という激しい発言が事実であれば、ハント氏が指摘した通り、EUは非妥協的な対決姿勢を固持したまま、懲罰的態度で英国に対処したと考えていいだろう。


 16年の国民投票以来、英国で取材を続けてきて感じたことは、このEU側の頑なさである。難産の末にメイ氏がEUとまとめた離脱案は、離脱派からは「親EU過ぎる」と批判され、残留派からも「現状よりも悪い」と嫌われた結果、歴史的大差で3度も議会で否決された。その際も、EU側は一貫して「すでに合意ずみ」「離脱協定の話は終了ずみ」「交渉再開はしない」との立場を堅持し、再交渉を拒絶した。


 EUからすれば、英国の代表としてメイ氏と交渉したのだから、それに代わる交渉はあり得ないという主張も理解できなくはない。ただ議会制民主主義の英国において絶対的な権威を持つ立法府の議会にとって、離脱案を審議して合意する前に、国外の組織(EU)と行政府が国家の運命を決めたことに対する屈辱感、無念さは計り知れなかった。そもそも離脱案は、多くの世論調査などの結果からして、議会や国民の支持を得られる内容ではなかったことは明白である。

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