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教養としての「フランス史」の読み方
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歴史
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序章 日本人が今、フランス史を学ぶべき理由

『教養としての「フランス史」の読み方』
[著]福井憲彦 [発行]PHP研究所


読了目安時間:16分
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 歴史を学ぶとき、注意していただきたいことがあります。


 それは、国のかたちも政治のありようも、人々の常識も、なにもかもが過去と現在では大きく異なっている、ということです。このことを忘れて、過去に現在の枠組みや常識を投影してしまうと、歴史を見誤ることになります。


 日本は島国で、古代から国境線があまり変わっていないように見えます。そのうえ支配者が替わったとしても、古代から途絶えることなく続く皇統が今も存続しています。そのため多くの人が、過去の日本と現在の日本を「同じ国」としてとらえています。


 そして、世界の歴史を考えるときにも、日本の歴史と同じように「国家の歴史」を中心に考えてしまう傾向が見られます。つまり、まずそれぞれ一国の歴史を古代から現代までの流れでとらえ、そうした「国の歴史」の集合体として世界史を見ようとするのです。


 でも、一見何も変化していないように思われる日本でも、過去の日本と今の日本では、国土の範囲も政治も大きく異なっています。徳川幕藩体制下に進出対象となった北海道や沖縄が、日本の正式な国土になったのは近代になってからのことです。


 こうした違いは、世界史ではさらに大きなものとなります。


 大陸の国々では、人々の移動がダイナミックに行われ、絶えず国の領域も変化しています。国境線は不文律のようなもので、現代のような明確な国境線など存在しなかった時代のほうがずっと長いのです。また、「国」と言ったときに、私たちは漠然と現在の「国民国家」をイメージしてしまいがちですが、これも過去に対する現在の投影のひとつです。


 国民国家という政治理念とそれに伴うある種の実体が形成されるのは、フランス革命(十八世紀末)以後のことです。それ以前に国民国家は存在しません。


 現在を過去に投影するという過ちを防ぐためには、史料を読むときにも注意が必要です。


 歴史的史料だからといって、あるいは史料にもとづいた歴史の記述だからといって、そこに(つづ)られていることがすべて事実だとは限りません。


 たとえば、十九世紀に国民国家が形成されたばかりのフランスでは、自分たちの国が歴史的に由緒正しい国家であるということを意義づけようとして、自分たちは中世からひとつの強固なまとまりを持っていたという、実際の中世フランスには存在しなかった幻想を投影した記述もなされました。


 十九世紀にまだ独立国家を形成していなかったチェコでは、中世においてかなりの力を持っていたボヘミア(現在のチェコの西部から中部に位置する地域)に、自分たちの独立の根拠を投影するということが行われました。史料も歴史の記述もそれが書かれた時代の常識や、書いた人の意図を踏まえて読むことが大切なのです。


 本書『教養としての「フランス史」の読み方』では、こうした史料が書かれた背景も意識しながら、特に地域世界との連関の中で、「国民国家」を生み出したフランスの歴史を見ていきたいと思います。

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