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ロシアを知る。(東京堂出版)
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政治・社会
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『ロシアを知る。(東京堂出版)』
[著]池上彰 [著] 佐藤優 [発行]PHP研究所


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ジャーナリスト 池上 彰




 ロシアという国は、依然として多くの人にとって「謎の国」ではないでしょうか。かつて「ソ連」と呼ばれていた時代は、なかなか行くこともできませんでした。学生時代、私はソ連を訪問した人の体験談やソ連に駐在したことのある記者の内幕ものを読みながら、本当のところのソ連はどんな国なのだろうと思っていたものです。


 その後、フリーのジャーナリストになってから、私も何度かロシアに取材に行くようになりました。ソ連が崩壊したとき、モスクワ市内のレーニン像が引き倒される映像をテレビで見ていましたが、いまもロシアの地方に行くと、レーニン像が健在であることを知って驚いたりもしています。行ってみなければわからないことは多いのです。


 とはいえ、ロシアに住んだわけではないので、私が知り得たことは限定的です。


 そんなソ連と現在のロシアについて、裏も表も知り尽くしている人といえば、何と言っても佐藤優氏でしょう。ソ連とロシアについて語り合う、というよりは教えてもらうことは貴重な時間でした。


 ソ連とは、ソビエト社会主義共和国連邦。「ソビエト」という評議会のシステムで政治が行われる社会主義の国々の連邦という意味ですが、実際にはどのように運営されていたのか。人々の暮らしはどうだったのか。豊富なエピソードを交えての解説は愉快なものでした。


 私たちは、ソ連を暗黒国家というイメージで断罪しがちですが、実際に暮らした人の解説を聞くと、意外な一面も見えてきます。庶民のしたたかな暮らしぶりを知ることは新鮮な発見でもありました。


 とりわけ見逃せないのは、ソ連の体制での社会福祉や教育の充実ぶりです。もちろんソ連は、いいところだけを海外に宣伝していたのですが、日本を含め資本主義諸国は、その充実ぶりに驚き、「このままでは社会主義に負けてしまう」という危機感を抱いたものです。それが日本国内の社会福祉の充実への取り組みとなり、「スプートニク・ショック」による教育カリキュラムの強化につながっていったのです。


 このところの格差の拡大や「子どもの貧困」の蔓延は、ソ連の崩壊によって、「資本主義が社会主義に勝った」という驕りから来ているのではないかと思わせられます。ソ連を中心とした社会主義諸国が健在であれば、新自由主義のような自由放任経済は、格差の拡大によって労働者の怒りを買い、社会主義革命を引き起こしかねないという危機感をもたらしたはずです。


 こう見ると、ソ連の存在という脅威が、皮肉なことに日本の住みやすさ、暮らしやすさにつながっていったのではないかと思ってしまいます。


 ソ連がロシアになっても、日本にとっては北方領土問題が存在しています。北方領土は返ってくるのか。その点で、ロシアとの交渉の中心にした佐藤氏の証言ならびに解説は貴重です。何が問題なのか。どうすれば突破口が開けるのか。交渉の先行きがおぼろげながら見えてくる気がします。


 佐藤氏との対談は、本人もロシア語ができ、ロシアをしばしば訪問している東京堂出版の𠮷田知子さんの熱心な勧誘によって実現しました。対談をまとめるに当たっては、島田栄昭氏にお世話になりました。感謝しています。


 二〇一九年五月

池上 彰 

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