『人生をゆっくりと 明るく、楽しく、たくましく』
[著]山田恵諦
[発行]PHP研究所
私は三十七歳の時、ある大役を仰せつかったことがあります。これはとても自分の力だけでは駄目だから、仏さまのご加護を得なければならない。さて、そのご加護をお願いするには、何かおみやげを持っていった方がよかろうと考えた。そこで一番自分の好きなものを差し上げようと思った。
当時、私が一番好きなのはタバコだった。だから「タバコを差し上げますから、どうぞ私を守ってください」と、お願いしたのです。つまり、友人の坊さんに護摩をたいてもらって祈願をして、私はタバコを吸うことをそれ以来やめたのです。
たいていの人は、好きなタバコをやめる時にはキャラメル買うたり、チューインガム嚙んだり、仁丹なめたりと一生懸命つらい努力をするようです。しかし、私の場合は努力は一つもいらなかった。仏さまに差し上げたもんやから、苦しみがちっともない。私のそばでほかの人がなんぼタバコを吸うても平気なのです。