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わたし84歳、今がいちばん幸せです!(KKロングセラーズ)
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生き方・教養
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第5章 自分を変えた軽井沢

『わたし84歳、今がいちばん幸せです!(KKロングセラーズ)』
[著]広瀬尚子 [発行]PHP研究所


読了目安時間:17分
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都会育ちの私が北軽井沢へ突然の移住




 一九九五年の夏──。


 三カ月前に八十二歳の母が亡くなって一人暮らしになった私は、以前から誘われていたけれどなかなか行けなかった北軽井沢の友達の別荘に二泊三日で出かけました。そこは昔若かった頃、夫と二人で小さな山荘を作り、毎年夏になると子どもたちと過ごした思い出深い場所でした。


 しかし、離婚を境に、私は心から愛してやまなかった北軽井沢に二度と行くことはなくなったのです。



 それは、十七年ぶりの訪問でした。車を降りたとたん、懐かしい樹木の香り! それは、初恋の人との再会にも似たときめきでした。その時、自分でも気づくことのなかった、私の中のどこかのスイッチがオンになったのだと思います。


 翌日、町に出かける友人の車の助手席に座って外の景色を眺めていた私の目に「売り地」と書かれた貼り紙が飛び込んできました(いつもならサーッと走り去ってしまう道路が、その日に限って渋滞していたのです)。


 それは、私でも手の届きそうな、とても安い値段の土地でした。興味を持った私は、通りすがりの不動産屋さんの前で車を停めてもらい、それがどこなのかを尋ねました。不動産屋さんは親切に地図を広げて説明してくれましたが、それは別荘地とはほど遠い場所で、しかも湿地とのことでした。


 お礼を言って店を出ようとすると、

「土地を探しているんですか?」


 とご主人の声。

「いえ、別にそういうわけでは……」

「もしお時間があれば、あれほど安くはありませんが、この辺りにも手頃な土地がありますから、ご覧になりませんか」


 どうせ暇な身。冷やかしてみようかと友人と二人でご主人の車に乗り込みました。


 何カ所か見せてもらったけれど、別にどうということもなく戻ろうとした時、ご主が、

「そうだ、もう一カ所あります」


 と言って案内してくれたのが、旧軽井沢の三笠の辺りによく似たからまつ林でした。その前に立った瞬間、強烈なインスピレーションが来ました。


 値段を聞くと、私が持っていた貯金の全額とピッタリ同じです。その時第二のスイッチが、今度は音を立ててカッチリと入ったのです。

「私、この土地を買います」

「エッ!? ちょ、ちょっと待って。大根買うみたいに決めないでよ」


 と友人。不動産屋さんもビックリしたようです。

「ここならオーナーズビラが周りに沢山ありますから、喫茶店も出来ますよ」


 という声で思い出しました。以前喫茶店をやりたくて設計図まで出来ていたのに、事情があってやむなく中止したことを。それが不完全燃焼していたのでしょう。

「じゃ、喫茶店もやります。ここに引っ越して来ますよ」


 私の人生が、思いがけない方向に大きく変わった瞬間でした。



カフェ「フルール」は母の名前から




 さて、土地は買ったものの、家を建てるお金は一銭もありません。でも、借りることができたのです。


 八カ月後、自宅と店が一体になった可愛らしい家が出来上がりました。四方にあるどの窓からも豊かな緑が見え、家中に風が流れるとても気持ちの良い家です。


 何も調べずに買った土地なのに、住んでみると全てOKであることがわかりました。

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