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なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図
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政治・社会
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第3章 アイデンティティの分断を受け止めきれない「独裁」という政治体制

『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図』
[著]渡瀬裕哉 [発行]すばる舎


読了目安時間:22分
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1 中国の経済的な豊かさがアイデンティティの分断を生み出す



 グローバリズムがもたらした変化は、民主主義国以外の国々、つまり独裁的な権威主義国家の在り方についても、必然的に変化をもたらすことになるだろう。


 大恐慌を逃れたソ連のように、中国のような権威主義国家は「アイデンティティの分断」という、成熟した民主主義国家が抱える問題とは無縁のように見える。


 しかし、「国家として選んだアイデンティティ」の押し付けによる弊害から逃れることは難しい。中国における資本市場の発展は、国家による画一的なアイデンティティ形成を不可能にしていくだろう。



 中国の経済成長は、鄧 小平が推進した改革開放政策によって実現されてきた。中国が世界市場に接続することを決断した重要な会議は1978年の第11期中央委員会第3回全体会議で、歴史的な出来事だった。


 会議に先立ち、鄧 小平は毛沢東の急進的なイデオロギーを修正し、文革期に追放された「右派分子」の党員を復帰させるとともに、資本主義を取り入れる体制づくりを行っていた。


 同会議を受け、中国政府は復帰した人材を活用して国有企業改革に着手し、個人や企業の私有財産を容認することで、政府の経済に対する介入を縮小した。


 有名な「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である(肌の色〔人種〕にかかわらず真面目に働く人がよい)」という鄧 小平が引用した故事は、その改革を象徴する言葉である。


 資本主義の導入によって、中国経済の生産性は飛躍的に向上し、1980年代には経済成長率が10%前後で安定して中国経済は大きく花開く結果となった。


 1989年に起きた天安門事件で西側諸国との関係を一時的に悪化させ、経済成長に暗い影を落とすこともあったが、それでも改革を通じて企業経営の自主権が拡張されたことにより、企業の生産性は改善し、従業員の給与も上がっていった。


 特に中国経済を世界経済に接続させるエンジンとなったのは「経済特区」政策である。輸出関連企業が集中する同地域を支える教育、法整備、設備など、あらゆるサービス・社会資源を集中的に投下したことで、経済特区は大いに発展を見せた。


 具体的には、今や深圳(しんせん)は「ものづくりのシリコンバレー」として世界的な競争力を持つレベルにまで至っており、安価な労働力だけでなく、技術面においても世界に伍する力を持ってきた。


 このような中国経済の成長は2001年のWTO加盟によっても支えられており、急激な輸出拡大は、豊富な内需と併せて中国経済を支える屋台骨になっている。


 2017年に発表されたボストンコンサルティンググループによる「Five Profiles That Explain China’s Consumer Economy」では、富裕層・ 上位中間層の世帯数が増加するだけでなく、「ワンランク上の消費」も拡がることが指摘されており、個人消費の拡大と多様化が進んでいると分析されている。


 具体的には、同レポートで、①情報通の消費者、②独身の消費者、③エコに関心のある消費者、④流行に敏感な消費者、⑤インターネットにつながる消費者の登場、が指摘されている。中国は世界の消費市場としても魅力的な場所に変貌したと言えるだろう。


 世界市場と接続したことで社会・経済も発展し、個人所得も飛躍的に上昇した。一人ひとりの所得増加に応じて、物質的な豊かさが中国社会にもたらされた。


 中国は経済体制のみ資本主義を受容することで、物質的な豊かさを得ることに成功した事例と言える。



 しかし、中国のような独裁国家であっても、アイデンティティの分断と無縁でいられるわけではない。なぜなら、物質的な余剰が生じる社会においては、知識人やメディアが増加することは避けがたいからだ。


 もちろん、独裁国家に所属する知識人やメディアが、支配的な政治体制を否定するような言論は展開できない。ただし、知識人は政治体制にとって致命的な話題には触れずに、社会政策を立案するため属性ラベリングに基づく分類を実行し、メディアは最新の社会トレンドを取り上げて報道するだろう。

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