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なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図
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政治・社会
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第4章 グローバル化とアイデンティティの再構成

『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図』
[著]渡瀬裕哉 [発行]すばる舎


読了目安時間:25分
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1 冷戦以後のグローバル化した世界の状況



 世界を二分する対立であった資本主義・共産主義の戦いが1990年代に終了し、世界はグローバル化によって、西側の価値観に統一されていくように見えていた。


 日本においても冷戦構造の崩壊に伴い、自由民主党・日本社会党による「55年体制」が崩壊し、人々の価値観にも決定的な転機が訪れているかのようであった。


 米国が北米における自由貿易協定を締結、中国がWTOに加盟、EUが旧ソ連圏であった東欧諸国・南欧諸国を取り込むことで、世界は急速な一体化を迎えていく。



 東南アジア、南アジア、アフリカなども資本主義的な発展はとどまることなく、物資的な豊かさは拡張されていくばかりであった。かつて存在していた途上国の大半は、今や中所得国となっており、世界人類のうち高所得国と中所得国に暮らす人々は、人類の約90%程度にまで到達している。


 したがって、冷戦以後の世界において、経済的な意味で豊かさによる国家間の差異は急速に縮小していると言えるだろう。


 国際貿易の進展は人々の生活を劇的に変えることになった。GATTを受け継いで1994年に設立されたWTOの加盟国・地域は164に到達している。


 また、二国間協定や多国間協定が進むことにより、さらにスピーディーな自由貿易が拡大している。世界全体で途上国の貿易額は年々拡大傾向を示しており、2000年以降、中国の爆発的経済成長は、2013年に中国を世界貿易額1位にまで押し上げた。その後も、中国と米国の間で一進一退の首位争いを繰り返している。



 国連が定義する移民は、別の国で1年間暮らすことが要件となっている。国際移民の数は「国際移民ストック」(国連経済社会局)によると、1960年の約7200万人から2015年には約2億4300万人に増加し、2019年には2億7200万人に到達すると予測されている。


 この移民は必ずしも南側の途上国から北側の先進国への移民に限らず、南側内部での動きも激しくなっている。もちろん、この中には難民になることを余儀なくされた人々もいるが、今後も移民の増加はとどまることを知らないだろう。


 1950年の国際観光客数は2500万人に過ぎなかったが、UNWTO(国連世界観光機関)が2019年2月に発表した最新の世界観光統計によると、2018年の世界における国際観光客数は、推定14億人に近い数字にまで拡大している。


 安価なLCCの発達は中産階級の娯楽旅行を助け、多くの国が外貨獲得手段として観光産業に頼っている状況だ。世界各国における混血はすぐには進展しないであろうが、徐々にお互いの国の垣根を超えた人々を生み出すことになるかもしれない。


 グローバル化がもたらしたものは貿易の活性化や人の移動だけではない。情報が流通することを通じ、言語や文化、そして価値観自体も広くグローバル化が進んできている。英語は議論の余地なく世界化された言語になっており、世界の約60か国で公用語、または準公用語とされて、ビジネスや娯楽などのあらゆる面で活用されている。


 言語も淘汰が進んでおり、2009年のユネスコ報告によれば、世界の約6000言語のうち、約2500の言語が消滅危機にあるとのことだ。

グローバル化の進展は、国際機関による国際会議数を増加させており、グローバルな統治を話し合う場が積極的に作られるようになってきている。


 特にシンガポールのような国際都市はアジア地域の経済成長に合わせて、米国の国際都市や欧州のブリュッセルに匹敵するほど重要なネットワークを形成する場として成長した。まさに台頭著しいアジアの勢いを象徴するようなグローバル都市へと成長している。


 グローバル化によって結合した世界の問題は、特定の一国のみで解決できる問題ではなく、国際的な合意と協力が必要不可欠な状態となっている。


 冷戦後の楽観的な世界情勢の見通しでは、世界の一体性が強まって相互依存・同質化が進む結果として、世界から対立の種が徐々になくなっていき、フランシス・フクヤマが述べたように、人間の政府の最終形態として自由民主主義、自由主義国家、政治的自由主義、経済的自由主義が最終的に勝利することで社会制度の発展が終わり、人類発展としての歴史は終わりを迎えるはずだった。


 しかし、グローバル化による楽園づくりは、世界に蔓延した「アイデンティティの分断」によって頓挫していくことになる。


2 グローバル化に対抗して進展するアイデンティティの分断



 グローバル化は世界の平準化を生み出すように見えたが、実際は、世界を二つの新たな分断の方向に導こうとしている。

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