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アメリカ民主党の崩壊2001−2020
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人文・科学
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第6章 溶ける民主党

『アメリカ民主党の崩壊2001−2020』
[著]渡辺惣樹 [発行]PHP研究所


読了目安時間:43分
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 党の正式候補に決まったヒラリーとトランプの第一回討論は九月二十六日(会場:ホフストラ大学、ニューヨーク州ロングアイランド)に行なわれた。「討論の時間は九十分、六つのテーマについて候補者それぞれが考え方を述べる。相手に対する質問は許されない」というルールだった。行司役(メディエーター)は、レスター・ホルト(NBCニュース)だった。


 筆者はこの討論をリアルタイムで「観戦」していたが、ヒラリーが上手だった。上品で、ルールに従う洗練された政治家のイメージを見せた。ただし、相手への質問が許されないルールであり、真の意味での討論ではなかった。トランプは苛立ち、ヒラリーのしゃべりの最中に何度も短いコメントを発した。これが観る者に未熟さを感じさせた。ヒラリーも短い反論を試みることはあったが、トランプの五一回に対して一七回と少なかっ(*1)


 トランプは、行司役ホルトの親ヒラリーの姿勢にも苛立った。選ばれた六つのテーマには、ベンガジ事件(アラブの春外交)もEメールスキャンダル(国家機密漏洩疑惑)もクリントン財団の「迂回買収」疑惑も取り上げられていなかった。どれも大統領としての資質が問われる案件でありながらスルーされた。この三点がテーマにならない以上、ヒラリーは余裕をもってトランプに対峙できた。ホルトはトランプのしゃべりを何度も(さえぎ)り、執拗に彼の税務処理にかかわる質問を繰り返した。第一回討論の「勝者」はヒラリーだった。


 この日、トランプは次のようにツイートした。


「Eメールスキャンダル、腐敗にまみれたクリントン財団、ベンガジ事件。どれも話題にされなかった。それが今日の討論の本質(*2)



 メインストリームメディアもトランプ本人も第一回討論はヒラリーの勝ちだったと認めた。しかし、有権者の反応は違った。討論スキルに未熟さを見せたトランプへの支援が広がったのである。討論終了後の二十四時間で、共和党への献金が一八〇〇万ドルにも上った。一日の献金額としては最高額だっ(*3)


 民主党首脳も、ヒラリーへの支持が広がらない状況に気付いていた。オバマを生んだ四年前の熱狂はどこにもなかった。アフリカ系(黒人)有権者は相変わらずトランプを好いてはいなかったが、だからといって積極的にヒラリーを支持する訳でもなかった。ヒラリーは信用できない政治家との思いが民主党支持者の中にもじわじわと広がっていた。


 大統領選挙では、支持政党の色分けがはっきりしていて選挙結果が予めわかっている州が多いが、拮抗しているスイングステイト(激戦州)と呼ばれる州もある。その帰趨が大統領選挙の結果を左右する。中でも選挙人数の多いフロリダ州は激戦地となる。民主党がこの州を制するには黒人有権者の投票率を上げる必要があった。しかし、彼らのあいだには白けたムードが漂い、民主党関係者を不安にさせていた。黒人有権者の投票率が下がる気配があっ(*4)


 民主党支持者の中の社会主義者や過激環境保護主義者はバーニー・サンダースを推した。彼らも、バーニーが敗れたからといってヒラリーに投票するというムードにはならなかった。彼らはより過激な主張を繰り返していたジル・スタイン(緑の党)を選びそうだった。民主党は、パニックモードに入っていた。


 民主党選挙関係者の警戒ムードをよそに、メインストリームメディアは、相変わらず親ヒラリー、反トランプの報道を続けていた。世論調査ではヒラリーがつねに三%から四%リードしていた。テレビに登場するニュースアンカーは、五九対二一の割合で相変わらず親ヒラリーのコメントを繰り広げていた。彼らは、「レイシスト」「ナチス」「女性蔑視」「外国人嫌い」のレッテルを貼りトランプを蔑ん(*5)


 十月九日、第二回討論がワシントン大学(ミズーリ州セントルイス)で行なわれた。前回と同様に全体で九十分の討論だったが、進行方法は違った。前半は行司役(アンダーソン・クーパー〈CNN〉、マーサ・ラダーツ〈ABC〉)が用意した質問に二人の候補者が答える。回答の持ち時間は二分である。行司役がいかなる質問を用意したかは事前には伏せられているので、両候補者の真のディベート力が試される。後半の四十五分は、聴衆からの質疑応答に充てられていた。この日の行司役も親ヒラリーであることは誰の目にも明らかだっ(*6)


 討論が終わると、ジャーナリストからその偏向ぶりに厳しい批判があった。


「アンダーソン・クーパーとマーサ・ラダーツは恥を知れ。あんな司会はない」(アンディ・P・プールトン)

「僕がトランプを応援することはこれからもない。しかし、彼がしゃべる(回答する)のを遮るようなことをしては駄目だ。マーサ・ラダーツは恥を知るべきだ」(ブリション・ボンド)



 明らかにバイアスのかかった司会(行司)ぶりだったが、ラダーツが第一回討論でスルーされたEメールスキャンダルについて触れた点だけは評価でき(*7)


「FBIは、あなたの(プライベートサーバーを通じた)メールの一一〇通に国家機密が含まれており、その中の八通は極秘情報に属するものだと報告しています。敵国にこれが渡った可能性があります。『ひどくうかつだった』では済まされないのではないですか?」(ラダーツ)

「何度も言いますが、プライベートサーバーを使ったことに責任を感じています。言い訳はしませんし、二度とこういうことはしません。ただ重要な点は、国家機密が敵の手に渡ったという(具体的な)証拠はないのです」(ヒラリー)



 これにトランプは黙っていなかった。


「ヒラリーはまた噓をついている。彼女は自身のEメールの取り扱いは適正だと主張する。(中略)しかし(彼女は)三万九〇〇〇通ものメールを消去したのだ。(FBIの)文書提出命令が(消去したメールに対して)出ているにもかかわらずだ。一般人がそんなことをすればたちまち刑務所行きだ」(トランプ)



 この問題はさらにヒートアップした。


「私がこの選挙に勝てば、特別検察官を指名し、この問題を(あらためて)捜査させる。彼女のついた噓はあまりに多い。世の中には、ヒラリーのしでかした五分の一程度の罪で(刑を受け)生活が破壊された人がいるのだ」(トランプ)

「ドナルド・トランプのような(野蛮な)気性の人間がわが国の司法を預かっていなくてよかったわ」(ヒラリー)

「私が大統領になればあなたは牢屋行きになるからね」(トランプ)



 ヒラリーは、防戦ばかりではなかった。トランプと副大統領候補ペンスとの対中東外交の意見の不一致を責めた。トランプがシリア・アサド政権のレジームチェンジに消極的な一方で、ペンスは前向きであると指摘した。トランプは「この案件ではまだすり合わせをしていないし、彼の主張には同意できない」といなした。


 メインストリームメディアは、この回もヒラリーが勝ったと報じたが、ソーシャルネットワーク上では、トランプ圧勝との意見が目立っ(*8)



*1、2:Brodigan, Top 5 Lester Holt Hillary-Shilling Moments, Lowder with Crowder, September 27, 2016

*3、4:Dave Andrusko, Clinton, Trump, and the impact of Media bias on the 2016 election, NRL News Today, September 28 2016

*5:Liberal Media are Second Biggest Loser of Election 2016-They Cheated and Got Caught, The Watch Dog, December 2016

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