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[新装改訂版]スポーツの経済学 スポーツはポストモダン産業の旗手となれる
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第7章 欧州サッカーの経済学

『[新装改訂版]スポーツの経済学 スポーツはポストモダン産業の旗手となれる』
[著]小林至 [発行]PHP研究所


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欧州サッカー


 イングランド・プレミアリーグが、2016年から2019年の放送権(イギリス国内)を、年平均23億ユーロ(約2760億円)、1試合平均約16.44億円で売ったことは先に記しました。プレミアリーグ所属クラブのスポンサー料も大変な価値を生じています。名門クラブの1つ、チェルシーの胸には、YOKOHAMA TYRESの文字が躍っていますが、その権利料は、2015/16-2019/20までの5年契約で2億ポンドでした。2019年9月の換算レートは、1ポンド135円前後ですから、邦貨にすると270億円、年間54億円となります。この契約額は、その前に胸マークのスポンサーだったサムソンの1800万ポンド/年の倍以上です。このように、景気のよい話が飛び交っている欧州のプロサッカーリーグ。売上も図表7-1にあるように、イングランド、スペイン、ドイツ、イタリアと、いずれも日本よりも経済規模が小さい国であるものの、その国内サッカーリーグは、北米4大リーグと肩を並べる規模を誇っています。




 欧州サッカーリーグの運営方法は、北米リーグと対照的な構造です。競技もシンプルならば、リーグのしくみもシンプル。クラブの財力・戦力の均衡化を図るような制約はほとんど存在せず、自由競争です。自由競争ですから、わたしたちが住む資本主義経済のもとで起こっているのとほぼ同様の現象が起きています。財力のあるチームは、世界中から選手をかき集め勝ちまくり、財力のないチームは、優勝は夢のまた夢、一部リーグ残留が目標ということになります。


 欧州サッカーのなかでは、最も上位と下位の格差が低いイングランド・プレミアリーグでも、上位と下位の差は、北米4大リーグと比べると著しく、図表7-2は2013年の数字ですが、その差は6倍以上でした。売上1億ドルに満たないクラブが、その6倍を売り上げるクラブと同じ土俵で戦うのは難しく、プレミアリーグ創設以来27年間で、優勝したクラブは6。そのうち13回はマンチェスター・ユナイテッドで、チェルシーが5回、マンチェスター・シティが4回、アーセナルが3回です。




 勝負はやってみなければ分からないし、大番狂わせが起こることはあります。実際、2015/16シーズンには、イギリスのブックメーカーが、ネッシーの出現よりも確率が低いとしていたレスター・シティが優勝したこともあります。しかしロングランで俯瞰してみると、やはりカネをかけたチームは強い。たとえばチェルシーは、2003年にロシアの大富豪、ロマン・アブラモビッチがクラブを買収して多額の投資をしたことで、急速に力をつけて、2005/06シーズンにはプレミアリーグ初優勝を果たしました。以後は、常勝軍団としてプレミア優勝4回、チャンピオンズ・リーグにも出場を逃したのは一度だけで、2011/12には優勝も果たしました。近年、急速に力をつけているマンチェスター・シティも同様です。2007年に、前タイ首相のタクシン・チナワット氏率いる投資グループが買収してから、世界のスーパースターを次々と獲得するようになり、翌年、アラブ首長国連邦の投資会社ADUGにオーナーが移譲されると、スター獲得に拍車がかかり、その甲斐もあって2012/13シーズン、ついにプレミアリーグ初優勝を果たし、1年おいた2014/15シーズンで2度目の優勝を飾り、2017/18、2018/19と連覇を果たしています。


 図表7-3は、21世紀以降における世界の主要リーグの優勝チームを掲げたものです。アメリカのプロスポーツに比べると、欧州の優勝チームは偏在しています。2019年9月の時点で、ドイツのブンデス・リーグは、バイエルン・ミュンヘンが6連覇中、イタリアではユベントスが8連覇中です。対して、アメリカのプロスポーツはNFLが19シーズンで11チーム、NBAが9チーム、MLBは12チームと毎年のようにシーズン・チャンピオンが入れ替わっています。日本のプロ野球も、近年はソフトバンクと、その間隙を縫って他のチームという様相ですが、21世紀以降でみれば、構成12球団のうち8球団が日本一に輝いており、戦力が均衡しているといっていいでしょう。




 この欧州サッカーの格差社会ぶりが最も色濃く発露されているのが、スペインのトップリーグ、ラ・リーガです。プレミアリーグ同様、毎年、20チームでリーグ戦を戦いますが、優勝争いはバルセロナとレアル・マドリードの一騎打ちです。実際、21世紀に入ってからの19シーズンで優勝したのはバルセロナが10回、レアル・マドリードが6回と他を圧倒しています。



 収入面においても、図表7-4にあるように、2018年時点でレアルが7億4800万ユーロ、バルセロナが6億8600万ユーロと、3位以下を圧倒しています。セルタ・デ・ビーゴ以下になると売上は1億ユーロに届かず、ラ・リーガで売上が最も少ないジローナのそれは1000万ユーロ、ブービーのレバンテは2700万ユーロです。売上において70倍の格差があるチーム同士が戦うというのは、どういうものなのか。勝負は何が起こるか分からないとは、言いづらい状況です。実力を拮抗させて、どこが勝つか分からない状態をできるだけ長く続けることが、リーグビジネスの肝だと考える北米であれば、とても看過できる状況ではありませんが、スペインのサッカーリーグは、2強に引っ張られるカタチで、ドル換算で50億ドルの売上(2017/18)は世界の主要リーグのなかで6番目、サッカーリーグとしては、プレミアに次ぐ2番手につけています。




 事実上のクラブチーム世界一を決定する大会である欧州チャンピオンズ・リーグにおいても、図表7-3が示している通り、21世紀以降、レアルが5回、バルセロナが4回優勝と、輝かしい記録を残してきました。世界中のスーパースターをかき集め、銀河系軍団と称されるレアル・マドリード。これに対抗する、どちらかといえば地元密着型のバルセロナ。この2クラブに引っ張られてリーグ全体のレベルがアップし、結果、世界中から注目とマネーを引き寄せていることは間違いないようです。


 そして面白いことに、この2強以外は弱いかというとそうでもなく、たとえばビルバオのように地元バスク出身の選手だけで固めて、優勝争いとまではいかずとも、時に台風の眼となる、個性豊かなチームもあります。


 スペインは、経済的にみれば、GDPは世界13位、EU加盟国のなかでは5位、1人当たりにすると世界33位。人口も4600万人弱で、世界で29番目。16世紀から17世紀にかけて、無敵艦隊をもって「太陽の没することなき帝国」と称された時期もありますが、現在、その面影をしのぶことができるのは、中南米を中心に世界各国で公用語となっている言語くらいのもので、2012年には、失業率が25%を突破し、特に若者のそれは50%を超えるという、危機的な状況に陥っています。そんなスペインが、アメリカのように、各球団の収入や戦力を揃えるようなことをすれば、個性に乏しい中堅国のリーグに終わっていたかもしれません。


 加えて、グローバル化で市場は世界に拡がりましたから、強豪チームは、世界に売れるコンテンツとして莫大な収入を得ており、下位の球団との経済的格差はより拡がる傾向にあります。




 北米リーグとの対比において、ヨーロッパ・サッカーを特徴づけるシステムは、昇格と降格です(図表7-6)




 リーグが階層的に組織されており、上位リーグの弱いチームは下位リーグに降格し、下位リーグの強いチームは上位リーグに昇格するという「昇格・降格システム」が採用されています。新規参入についても参加費を払うことなく最下層のリーグから興行を開始することが可能です。


 各チームに地理的な独占権はありません。図表7-7(次参照)の通り、経済的に最も成功しているサッカーリーグであるイングランド・プレミアリーグにおいても、首都ロンドンに6球団がひしめきあっています。




 欧州サッカーのリーグ戦は、ホーム&アウェイで1試合ずつですから、プレミアリーグのように20チームのリーグですと年間の試合数が38となります。NFLは別として、北米のプロスポーツに比べると多くはありません。とはいえ、戦力が上位の強豪チームに偏在している以上、弱いチームは早々に脱落することは避けられません。消化試合の処理はどうしているのでしょうか。


 北米リーグでは、そのために、“優勝の行方が分からない状態”を長く続ける、つまりチームの経営規模と戦力バランスを均衡させていますが、欧州は、格差是正のための政策は取っていません。欧州のリーグは、昇格・降格システムと、カップ戦との並行開催によって興味・関心のポイントを複数設けることで、対応しています。


チャンピオンズ・リーグ


 事実上のクラブチーム世界最強チーム決定戦と目されているのが、欧州チャンピオンズ・リーグです。クラブチームによるサッカーの欧州大陸選手権大会で、主催者は欧州サッカー連盟(UEFA)です。毎年9月から翌年の5月にかけて、各国のリーグ戦と並行して行われます。参加資格は、UEFAの定めたカントリー・ランキングに基づき、国別の出場枠、およびどのレベルからスタートできるかが決まります。

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