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世界史の針が巻き戻るとき 「新しい実在論」は世界をどう見ているか
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生き方・教養
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第V章 資本主義の危機 コ・イミュニズム、自己グローバル化、モラル企業

『世界史の針が巻き戻るとき 「新しい実在論」は世界をどう見ているか』
[著]マルクス・ガブリエル [訳]大野和基 [発行]PHP研究所


読了目安時間:28分
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グローバル資本主義は国家へ回帰する?

資本主義が持つ「悪」の要素とは



 現在の資本主義における根本的な危機は、人が「グローバリゼーション」と特徴づけるものにあります。資本主義とは本来、特に工業製品の生産モデルを意味します。その資本主義の危機は、国民国家が発明されたことに関係しています。現代の国民国家が生まれたプロセスと産業化のプロセスは類似しています。グローバリゼーションは実際のところ、グローバルな製品のやりとりですが、いかなる(国民国家的な)法的な枠にも完全にはとらわれていません。


 一八三〇年代から第二次世界大戦終結までの間、アメリカは輸入工業製品に世界有数の高関税をかけていました。また、十九世紀末の不況をドイツはビスマルクを先頭とした保護主義で乗り越えました。現在のトランプ大統領の保護主義やEUの瓦解を見るにつけても、「世界史の針は巻き戻っている」と感じます。そもそも、我々が今目撃している保護主義が動きを止めたことも、(完全に)グローバルな自由貿易が行われたことも、未だかつてありません。製品によってはグローバルな流れに乗っているものもありますが、グローバル経済というものはまだ現実にはなっていません。だからどの国に行ってもある程度は自国の製品を保護しています。


 ゆえに、グローバル経済はこの五年間激しく展開されている一種の経済戦争に変貌しているのです。そのもっとも顕著な形が、ドナルド・トランプが仕掛けている貿易戦争です。しかし、彼はただ真実を話しているだけなのです。トランプがグローバルな経済戦争を発明したわけではありません。単に他の人がやっていることを言語化しているだけ、すべての人が従っているルールについてはっきり代弁しているだけなのです。


 この危機は、インターネット上の危機と似ています。法律上の制限がないグローバル経済は明らかに問題です。それが資本主義最大の危機です。産業化は、いかなるグローバル国家にもコントロールされていません。グローバル資本主義経済には世界国家が必要です。でなければ崩壊します。グローバル経済が、グローバル国民国家の存在なしで機能しつづけることは絶対にありません。ドナルド・トランプはこのことをよく理解しています。権力の座についている人間として実際にその経済戦争に参加し、彼はすぐにグローバル国民国家の不在に気づいたのです。


 ここにパラドックスがあります。ドナルド・トランプは自分なりに民主主義を守っています。アメリカのような民主国家の政府は数えるほどしかないことを、彼はわかっているからです。ですからトランプは、民主主義の土台を壊すようなことはしていません。皆が言っているような独裁者ではなく、むしろ、産業化の可能性条件としてのシステムを守っているのです。それが彼のイデオロギーの一環です。


 トランプのイデオロギーは理にかなっています。なぜまったく労働環境が異なる、中国のような主要プレイヤーと製品のやりとりをしないといけない市場に入るのか。しかもどんな法律にも規制されていない状況で。それはルールなしにとてつもない巨漢と殴り合いを始めるようなものです。殺されるかもしれないし、無謀です。そんな大男と殴り合いをするにはルールが必要です。そういうルールをトランプは確立しようとしているのです。


 つまりトランプが今していることは正しい。それがパラドックスです。彼は思想界の理論家から賛同されることはあまりないが、我々理論家はドナルド・トランプがやっていることを説明する際に、中立でなければならないと思います。でもほとんどの人、ほとんどの哲学者は本能的にトランプを攻撃してしまいます。一つにはそれが哲学者の役割だから、二つ目にはトランプが特に意地の悪い人間であるように見えるからです。でも、彼がどんな人間に見えるかはどうでもいいことです。重要なのは、今何が起きているかを問うことです。今のところこのトランプ現象は、適切な方法で理論化されていないと思います。


 良かれあしかれ、産業と国民国家は一体であること、それが事実であることにトランプは気づきました。彼はその事実を守ろうとしています。中国やロシア、イランなどと同じグローバル経済に入れば、世界の民主主義が崩壊するとわかっているからです。それほど単純なことです。パラドックスですが、ドナルド・トランプは非常に複雑な状況において、グローバルなレベルで民主主義を守っているのです。


資本主義には悪の潜在性がある


 我々に共通する問題の一つは、いわゆるネオリベラルの理論家を含むほとんどの人の資本主義の理論が、マルクスの資本論に依存していることです。確かにマルクスの資本論は資本主義について考えるツールを提供してくれます。しかし、マルクスの理論はまったくもって不十分です。


 資本主義は労働の役割分担に対する応答に他なりません。資本主義は労働の役割分担を利用して、「一人の人間が、もう一人が何をしているか知らない」という事実を価値に変換します。それが資本主義のビジネスです。


 あなたが何をしているか、相手は知らない。それがあなたのアドバンテージになります。

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