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「トビタテ! 世界へ」(リテル)
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ミステリ小説
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はじめに

『「トビタテ! 世界へ」(リテル)』
[著]船橋力 [発行]PHP研究所


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 2019年3月21日夜、急きょ、メジャーリーガー、イチロー選手の引退記者会見が開かれました。


 大変話題になった会見ですが、1時間半近くに及んだ会見の最後、「孤独感はずっと感じてプレーしていたか」という記者からの質問に対してイチロー選手が発した言葉に、私は強く共感しました。


──アメリカに来て、メジャーリーグに来て、外国人になったこと。アメリカでは僕は外国人ですから。このことは、外国人になったことで人の心を慮ったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れたんですよね。この体験というのは、本を読んだり、情報を取ることができたとしても、体験しないと自分の中からは生まれないので。孤独を感じて苦しんだこと、多々ありました。ありましたけど、その体験は未来の自分にとって大きな支えになるんだろうと今は思います。だから、つらいこと、しんどいことから逃げたいというのは当然のことなんですけど、でもエネルギーのある元気のある時にそれに立ち向かっていく。そのことはすごく人として重要なことではないかと感じています。



 その言葉を聞いて、私は、自分の過去を思い出しました。


 父の仕事の都合で、幼少時と高校生時代を南米で過ごし、「外国人」となった私は、現地の人から疎外されたり、言葉ができない劣等感に悩んだりしました。けれど、アウェイの環境で孤独に苦しみながらも、日本人が得意とされる「野球」や、異なった人たちの意見をまとめる「調整力」などを発揮したお陰で、学校のなかで一目置かれる存在となりました。


 こうした経験は、国際的な場で人のために役立つ仕事がしたいという思いにつながり、開発途上国のインフラに携わる総合商社への就職や、その後の人材育成会社の起業にもつながりました。また、国際会議や交流の場で、世界の第一線で活躍する人たちと関わる際にも、影響を与えていると思います。南米での体験がなかったら、引っ込み思案な内気な人間のままだったかもしれません。


 居心地のいい場所(コンフォートゾーン)から一歩、外の世界に踏み出す「越境体験」は、つらいし、しんどいことも伴います。けれど、それまで得られなかった刺激をあびることになり、人を成長させ、可能性を格段に広げてくれます。今までの狭い世界とは全く違う「常識」があることを知り、イチロー選手のように、自分を客観的に見つめ直すこともできるようになるでしょう。



 詳しくは本文で述べますが、私は、世界経済フォーラムが選出するヤング・グローバル・リーダーに選出され、2011年と2012年のダボス会議に参加した経験があります。そこで世界の劇的な変化を目のあたりにし、日本と日本人のグローバル化が急務であることを実感しました。より多くの若者を、早期に海外に留学させなければいけないし、留学を当たり前にする文化を日本につくらなければいけない。そういう問題意識が芽生えました。


 そして、高い志や情熱、好奇心、独自性をもった大学生、高校生を、企業からの寄附をもとに無償で海外に送り出し、新たなネットワークやコミュニティをつくるという留学プロジェクトに、現場を統括する責任者として立ち上げから関わってきました。


 そのプロジェクトとは、文部科学省初の官民協働の国家プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN」。2020年までに日本の大学生・高校生の留学を倍増させるという政府目標のもと、まずは、その象徴として多種多様な1万人の留学生を送り出すというプロジェクトです。


 前例のないことだらけで、困難な道のりでしたが、多くの関係者、企業、教育機関等の協力を得て、2013年の立ち上げから現在(2019年8月時点)までに約117億円の寄附を集め、それを原資に7800名以上の若者を海外に送り出す機会を与えてきました。


 このプロジェクトは、国や大学による従来の留学とは一線を画しています。最大の特色は、「計画×人物」重視の選考。特に、受け入れ先を含め自分自身で留学計画を立てるところにあります。また、単位取得を前提とした、座学中心のアカデミックな留学計画では不十分で、必ず計画にはインターンシップやボランティア、フィールドワーク、PBL(課題解決型学習)など、多様な実践活動を組み込む必要もあります。


 そのため、従来の留学でありがちな「外国人と交流せず日本人同士で固まる」ということも、「体験して良かった」で終わることもありません。自ら選んで飛び込んだアウェイの地で、困難なことも数多く経験することになります。孤独、挫折、人種差別、自信喪失……。それまでの人生で味わうことのなかった苦労をしながらも、それを乗り越えていく姿に、私はいつも驚かされます。



 本書では、なぜこうしたプロジェクトが立ち上がったのか、なぜ私が関わることになったのか、その背景を振り返りながら、世界の劇的な変化や日本を取り巻く環境、曖昧模糊としたこれからの社会を生き抜くために何が必要か、そのためのマインドセットについて。さらにはプロジェクトを通して学生がどう変化し、成長したかについてお伝えします。


 また、プロジェクトのその他の特色や研修の中味についても紙面を割いています。例えば、

・選考にあたって、なぜ成績や語学力ではなく、情熱や好奇心、独自性で選ぶのか。

・事前研修で、自分軸や自身のアイデンティティを徹底的に洗い直させるのはなぜか。

・なぜ、対話や自己開示、コミュニティづくりを重視しているのか。


 その答えから、今、国際社会が若い人たちに何を期待しているのか理解できるでしょう。


 本書で紹介したことをヒントに、少しでも多くの若い人が、今いる場所とは違う世界へと飛び立つきっかけになることを願っています。


2019年10

文部科学省 官民協働海外留学創出プロジェクト

トビタテ!留学JAPAN

プロジェクト・ディレクター 船橋 力

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