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「トビタテ! 世界へ」(リテル)
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ミステリ小説
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第1章 世界に飛び立ったトビタテ留学生たち

『「トビタテ! 世界へ」(リテル)』
[著]船橋力 [発行]PHP研究所


読了目安時間:35分
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「2020年までに海外留学者数を倍増させる」


 2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略~JAPAN is BACK」において、政府が掲げた目標です。


 その目標達成に向け、翌年、文部科学省は留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」をスタートさせます。その中核事業が「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」(以下、トビタテ)。支援企業等からの寄附をもとにした返済不要の奨学金により、2020年までの7年間で、約1万人の大学生と高校生を世界各地に派遣するという文部科学省初の官民協働の国家プロジェクトです。


 給付型の奨学金、充実した留学の事前事後研修、コミュニティの運営等、これまでの留学制度とは一線を画す、いくつもの特徴がありますが、最大の特徴は留学計画を自ら作成すること。単位取得を目的としたアカデミックな留学だけではなく、インターンシップやボランティア活動などの実践活動を含む多様な留学の在り方を認めていることです。


 そのため、「理系、複合・融合系人材コース(未来テクノロジー枠含む)」「新興国コース」「世界トップレベル大学等コース」「多様性人材コース」「地域人材コース」「高校生コース」など多彩な受け入れ枠を用意。文部科学省が中心のプロジェクトにもかかわらず、選考に際して学業成績や英語力は問いません。では、いったい何を基準に選考するのでしょうか。それは「情熱」「好奇心」「独自性」です。ウソではありません。


 こうした柔軟な制度設計により、語学力を含め、学校での成績に関係なく、また金銭面での心配もなく、意欲のあるとんがった多くの若者が、海外に出ていくチャンスを得ることになったわけです。


 トビタテの支援企業には、日本を代表する企業が名を連ねています。そうした大企業が、成績や英語力ではなく、人物本位で選考していることの意味を、皆さんはどう受けとめるでしょうか。


 これまで採択されたトビタテ日本代表プログラムの派遣生(以下、トビタテ生)の数は約7800人(2019年8月時点)。多種多様な学生・生徒が集まっていますが、共通しているのは、情熱、好奇心、独自性を備えていること。それを知っていただくために、最初に9人のトビタテ生を紹介をしたいと思います。いずれも、悩みや困難を抱えながらも、世界へと飛び立つことで、自分の可能性を広げていった若者です。

「お前、日本人ちゃうやろ。日本から出ていけ」


 在日韓国人の洪英高さんは、小・中学校時代に周囲からこう言われるなど、国籍で差別を感じた経験がありました。


 強豪校でサッカー漬けの生活を送りましたが、思うような結果を残せず、大学受験も失敗。落ち込んでいた時に救ってくれたのが、大ファンである本田圭佑選手がインタビューで語っていた「ケガして思ったのはチャンスやなと。ケガをしたことで、すごい遠い試合に向けて自分を作り直せるんです」という言葉だったと言います。


 同志社大学進学後は、ITに興味を持ち、「本気になるため本場を見に行きたい」と、初の海外旅行先にシリコンバレーを選びました。多様性で満ちあふれていたグーグルのオフィスを見学し、衝撃を受けた彼は、国籍問題で悩んでいた自分がちっぽけに感じたと言います。


 帰国後、留学について悩む女子学生から相談を受けたことがきっかけで、世界中の留学生が、留学先で現地の学生と馴染み、差別を受けることなく、快適に生活しやすくなるようなコミュニティサイトを立ち上げたいと考えるようになりました。


 文系出身でITスキルはなく、周囲からは冷ややかに見られていましたが、実現の一歩として、もう一度シリコンバレーに行こうと決意し、トビタテに応募。400万円を超す給付型の奨学金をもらい、翌年から17カ月の留学を果たしました。


 留学先での出来事です。本田選手のメールマガジンで「本田圭佑に聞きたい100のコト」という質問を募っていて、しかも、たまたま本田選手がサンフランシスコに滞在していることを知った彼は、自分のビジョンを訴え「ぜひ会ってください」とメッセージを送りました。すると、強運なのか、意志の強さがそれを導いたのか、なんと翌日、本人に会えることになったのです。




 本田選手には、投資家としての一面があり、サッカー選手としての忙しい時間をぬって、夢やビジョンをもつ世界中の人たちと接点をつくる活動を精力的にこなしていました。


 対面は30分ほどでしたが、奇跡はそれだけで終わりませんでした。興味をもたれた彼は、1カ月後、本格的に事業計画をプレゼンテーションする機会を得たのです。本田選手から二度目のミーティング先に指定されたのは、メキシコの高級ホテル。そのとき彼は日本に一時帰国していたのですが、寝食を忘れて準備を整え、本田選手に会うためだけにメキシコへ飛びました。


 一連の経緯を洪さんから聞かされ、プレゼンテーションの内容について相談にのっていた私たちトビタテスタッフも気が気ではありません。当日、事務局に待機して報告を待っていたところ、テレビ電話を通じて彼から連絡がありました。


 本田選手にプレゼンテーションの内容を詳しく聞かれたうえ、別れ際に、

「今の事業計画より、クレイジーなアイデアを考えてきてください」

「留学マッチングサービスとして、既存のリーディングカンパニーを倒す戦略を考えてきてください」


 と、次の日までの課題が出されました。そうした課題に答えると、さらにまた新たな課題が「明日までに」と出されたそうです。


 朝5時まで課題に取り組み、少し仮眠をとったあとに起床。日中、「15分後に、食事はどうですか」といった本田選手からの突然の電話に備えながら、ホテルの部屋で、ひたすら課題に対するよりよい答えを考え続けました。

「正直、毎日の議論に手応えはなく、常にベストを尽くすことだけに集中していました」


 と、彼は話していました。私たちスタッフも、できる限りのアドバイスをし、地球の裏側からの吉報を待ちました。これで彼の人生が変わるかもしれないし、思いだけで突っ走る若者を応援したいという気持ちが私には強くありました。


 結局、彼は3日間、本田選手と会い続け、最終的に見事、出資してもらえることが決まりました。心の底からほっとするとともに、おこがましいですが、「本田選手、やるじゃん」と思いました。

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