『「トビタテ! 世界へ」(リテル)』
[著]船橋力
[発行]PHP研究所
ヤング・グローバル・リーダーズ(YGL)に選ばれる
総合商社を経て起業家の道を歩き、その後の新たな展開を模索していた2009年のある日、私のもとに英文のメールが送られてきました。
よくあるスパムメールだと思い、スルーしていたのですが、先輩から、
「船橋! お前、ヤング・グローバル・リーダーズに選ばれているぞ」
と連絡が来ました。寝耳に水のことでした。
よくよく、その英文メールを確認したところ、差出元は、スイスのジュネーブに本部を置く非営利団体「世界経済フォーラム」の事務局からでした。
ヤング・グローバル・リーダーズ=Young Global Leaders(以下、YGL)とは、世界経済フォーラムが、世界中の多種多様な分野から選出する40歳以下(現在は38歳以下に変更)の若手リーダーのコミュニティです。
毎年、世界で100~150人が選ばれ、累計では3000人を数えます。日本人も例外ではなく、私の知人や関係者として、以下の方々も名を連ねています。
・出雲充(ユーグレナ代表取締役社長CEO)
・岡島悦子(プロノバ代表取締役社長、グロービス経営大学院教授)
・河瀬直美(映画監督)
・小泉進次郎(衆議院議員、環境大臣)
・合田圭介(東京大学大学院理学系研究科教授)
・小林りん(ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン代表理事)
・近藤正晃ジェームス(元Twitter代表取締役副会長、国際文化会館理事長)
・鈴木英敬(三重県知事)
・鈴木直道(北海道知事)
・スプツニ子!(アーティスト、東京大学特任准教授)
・高島宏平(オイシックス・ラ・大地 代表取締役社長)
・西本智実(指揮者)
・藤沢久美(シンクタンク・ソフィアバンク代表)
・古川元久(衆議院議員)
・松田公太(タリーズコーヒージャパン創業者、元参議院議員)
・松本紹圭(浄土真宗本願寺派光明寺僧侶、未来の住職塾塾長)
・南壮一郎(ビズリーチ代表取締役社長兼CEO)
・宮城治男(NPO法人ETIC.代表理事)
・山崎直子(宇宙飛行士)
(五十音順。敬称略。肩書きは、ことわりのないものを除き、現在)
YGLは他薦で選ばれます。一定の選考要件をもとに第三者機関がスクリーニングし、メンバーおよび世界経済フォーラム事務局や委員による選考がなされるようです。以前私が事務局の方から聞いたその要件とは、
①40歳以下(現在は38歳以下)。
②イノベーションを起こした実績がある。
③マスコミに露出している。(信用力調査)
④ボランティアなど社会貢献活動をしている。
⑤グローバルに活動している。(これは加点の要素)
というもの。私の場合、第6章で詳しく述べますが、総合商社を退職後、ウィル・シードという教育活動や企業研修を主要事業とする会社を起業。閉鎖的といわれる日本の学校教育に、体験型シミュレーションゲームという当時としては斬新な手法で、子どもたちが社会課題を実感できる教育プログラムを全国規模で提供していたことが評価されたのだと思います。
YGLのメンバーに選ばれると、6年の任期で世界経済フォーラムが主催する各会議に参加する権利が与えられます。
一つは、毎年9月に中国(大連・天津)で開催される夏季ダボス会議、通称「サマーダボス」。
一つは、年間を通して、アフリカ、ラテンアメリカ、東アジア、中東など、世界各地で開催される地域会議。
そして、毎年1月末にスイスのダボスで開催される年次総会(ダボス会議)です。主要国の国家元首や政治指導者、世界をリードする経営者、知識人、ジャーナリスト、宗教家、社会起業家、国際機関関係者が一堂に会し、世界経済や環境問題など地球規模の課題について議論する場として知られています。
ただし、ダボス会議については、自由に参加できるわけではありません。活動実績等に応じて、正式に招待されないと参加は認められないのです。私の場合、ダボス会議に参加できたのはYGLに選ばれてから2年を経た、2011年と2012年の2回。日本のYGLメンバーをとりまとめる幹事的な役割を果たしていたことや、後述する日本人YGLが立ち上げたいくつかのプロジェクトに、主導的に関わり汗をかいてきたことが認められたようです。
各会議およびYGL限定の年次総会や研修、さらには2日~1週間程度の合宿スタイルで行われるリーダーシップトレーニングでは、世界中から集まったYGLメンバー同士で、気候変動やAIなど、現代的な諸問題について意見を交わし、G20などへの提言を行うことがあります。