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「トビタテ! 世界へ」(リテル)
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ミステリ小説
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第4章 トビタテ流人材育成の仕組み

『「トビタテ! 世界へ」(リテル)』
[著]船橋力 [発行]PHP研究所


読了目安時間:37分
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 壮行会の翌日からは、事前研修がスタートしました。参加した学生の表情は総じてキラキラしていました。特に、壮行会のあと、そのまま宿泊して、翌朝から研修に臨んだチームは、気分が盛り上がったままの状態です。


 本章では、そんなトビタテで行っている研修について紹介します。トビタテ生だけではなく、海外に飛び立つすべての若者を念頭に置いた研修ですので、ぜひ参考にしてください。


 さて、事前研修で、私が最も重視していることのひとつが「自分の軸」を明確にする作業です。自分の軸とは、大切にしている価値観とかアイデンティティのこと。日本のような同質的な社会に住んでいると、「自分は何者なのか」について、深く考える機会がありません。


 阿吽の呼吸ではないですが、みなと同じように考え、行動することが良いことで、そこから外れないように振る舞う傾向が、いまだに強いと思います。


 しかし、世界の常識はそれとは正反対です。多くの国は、人種や民族、文化、宗教、言語、思想信条を含めて、日常的に多様な人々と触れるため、「私は何者なのだ」「お前は何者なのか」と、日々意識せざるを得ません。そして、自分と同質のあなたではなく、自分とは異なるあなたに、価値を求めるのです。


 日本の場合、自己紹介で名刺を渡すとき「〇〇商事の××です」とだけ言えば済みますが、海外では、「あなたは何をしている、どういう人か」まで見られます。そこは、大きな違いだと思います。



 シアトルの建築事務所にインターン留学した大学院生がいました。


 駅前開発の案件を任された彼は、シアトルの文化事情を調べ、それをもとにアメリカ人が喜びそうなプランを提案し続けていたところ、1カ月が経った頃にボスに呼ばれて、こう言われたそうです。

「Who are you? アメリカ人では提案できないプランを期待して、日本人であるお前に依頼したのに、こちらの価値観に合わせていたら意味がないではないか。日本人あるいはお前にしか出せないプランを出せ」


 確かに、指摘の通りで、そのプランには彼独自の視点や思考がまったく活かされていなかったのです。ハッとさせられた彼は、それまでの2倍働いて、日本的なプランとアメリカ的なプランの両方をを提案するようにしました。


 その結果、アメリカには珍しいのだそうですが、駅前に噴水があるという日本的なプランが、プロジェクトのマスタープランに採用されたのでした。素敵な成功事例です。

「Who are you?=お前は何者か?」


 留学を終えた多くのトビタテ生から、留学の学びとして出てくるキーワードです。留学中に異文化を学びにいくわけですが、その前提として、まずは基準となる「自分の軸」をもち、その差異を感じ、分析し、その背景を学びつつ、自身の価値観と合うものは取り入れ、自分を進化させることが大事です。


 日本人的に相手に合わせすぎて、自分を見失いメンタルダウンするケースが多いだけに、「自分の軸」を見つめることは大事です。

「自分の軸」を考えるために、研修に取り入れているのが、ワークシート「自分の歴史を振り返る」への記入です。幼少期から現在に至るまで、1年ごとに、「経験したこと・起こったこと」と「考えたこと・学んだこと」を簡潔に記載し、当時のモチベーションを思いだしながら曲線にして表現します。


 就活前の大学生にとって、自分の歴史を振り返る機会は、そう多くはないはず。可視化して、俯瞰することで、何となく過ごしてきたと思ってきたことのなかに、アップダウンがあったり、転換期があったり、小さな出来事の中に大きな意味があったことに気づいたりするはず。そうやって可視化した「自分の歴史」を、今度は人に話します。

「自分の歴史なのだから、自分一人で振り返ればいい。人に話すのは嫌だ」


 そう思う人もいますが、人に話すことは、貴重なフィードバックを受ける機会です。自分ではたいしたことではないと思っていたことが、実はすごいことであることに気づかされたり、その逆があったり。自分とは違う客観的な視線にさらすことは、内省を深めるうえでとても大切なこと。お互いにとって、学びになるのです。



 また、「大切なことキーワード」というワークもあります。「社会貢献」「人間関係」「楽しさ」「正義感」「挑戦」「自由」「社会的名声」「美意識」「知的好奇心」「能力」「愛」「家族」など、用意された約50の多様なキーワードの中から、最も自分らしく、最も大事にしたい価値観を直感で三つ選び、マルで囲みます。一方で選ばないキーワードについては「今後の人生の中で絶対手に入らないが、それでも良いか?」と自問自答しながら斜線を引いて消去するように伝えます。難しい選択を迫るワークですが、その分、自分は何に価値を置いているのかが、浮かび上がってきます。


 グループ内で発表しあうと、自分がまったく興味ないことを選んでいる人が案外大勢いたりして、人の価値観は多様であることを知るいい機会になるでしょう。


 いくつかのキーワードに集中しそうなものですが、意外とばらけるもの。ただ、若い世代で多く選ばれるのが「愛」や「家族」です。


 面白いのは、留学終了後の事後研修では、選ぶキーワードが変わることも少なくないこと。外国で自分の力の無さを痛感したのか、「能力」というキーワードを選ぶ人が増えていることです。



 こうした様々なワークによって、次第に明らかにされていく「自分の軸」と、最初に立てた自分の留学計画とがうまく関わっているか、6人ほどのグループ内で互いに発表し合いながら、徹底的に留学計画を改善していきます。


 そこに支援企業の研修スタッフも入りながら、徹底的にブラッシュアップしていきます。それは夜になっても続きます。事務局のスタッフ7~8人がブースを構え、そこに入れ代わり立ち代わり、学生が留学計画について相談に来るのです。マンツーマンで一人15分くらいかけて、

「それって、本当にあなたの軸なの? その計画で満足した活動ができるの?」


 という具合に詰めていくため、過去のつらい体験を思い出して、涙を流す子もいます。そして、何人かは徹夜して計画を練り直し、翌日、目を腫らしながら、みなの前で発表する。いずれも、自分の軸が反映された立派な留学計画に仕上がっています。


 チームメンバー同士、家族のように愛情を込めて、互いの留学計画を仕上げることで、より納得した形で留学を遂行する意識が芽生えていくのです。


 同じ留学を志す仲間とは言え、研修の場ではじめて会った他人に、自分のライフストーリーを話すことは、照れくさいし、勇気のいる作業です。

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