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野球と暴力 殴らないで強豪校になるために
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第三章 野球というスポーツの「閉鎖性」

『野球と暴力 殴らないで強豪校になるために』
[著]元永知宏 [発行]イースト・プレス


読了目安時間:19分
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「はい!」「大丈夫です!」しかない返答



 いまだに暴力的な指導を続け、厳しすぎる上下関係を黙認する監督やコーチがいるのは事実だ。もし、このふたつが勝利をつかむために必要なのだとしても、リスクのほうが多いことは誰にだってわかるだろう。


 選手への暴力や暴言が発覚して、指導者が(きん)(しん)処分を受けたり、その職を解かれたりする可能性があるからだ。部内の非行やいじめによって、チームが活動停止処分を受けるところも少なくない。


 百歩譲って、暴力を効果的に使うことが勝利への近道だったとしても、あまりにも()の悪い勝負だと私は思う。それでも監督やコーチが暴力を懐に忍ばせて指導を続けるのは、なぜなのだろうか。日本の指導者だけのものなのか。


 前章で、日本とアメリカの野球の違いについて語った田中聡には、アメリカの独立リーグでプレイした経験があり、ニューヨーク・ヤンキースなどで活躍した伊良部秀輝と親交があった。尽誠学園、法政大学とエリートコースを進みながら、ほかの元プロ野球選手とは異なる野球観を持つのはそのためだ。日本野球のセオリーを重視していないから、「東京広尾リトル」で独特な育成法を展開している。


 渡辺俊介は2013年限りで千葉ロッテマリーンズを退団したあと、アメリカに渡り、独立リーグでプレイした。日本球界の特異性を渡辺が指摘する。

「スポーツ自体の立ち位置が、アメリカと日本では違う。アメリカではスポーツは楽しむもので、成功した人へのリスペクトも強い。日本とはステイタスが大違い。日本の場合は、修行、教育の意味合いが強いから、そのあたりが変化しないと、指導者も指導のスタイルも変わっていかないのかもしれませんね」


 渡辺はベネズエラでもプレイし、そこで気がついたことも多かった。日本野球を離れたところでプレイ経験のある指導者は(まれ)だ。

「指導者と選手の関係で一番違うのは、相手が小学生でもきちんと話を聞くこと。全部話し終わるまで待って、それから指導者が話し始める。日本だと、すぐに話の腰を折ってしまいますよね。『でもな……』と。アメリカやベネズエラのやり方がすべて正しいとは思わないけど、コーチが選手の話をじっと聞くことには驚きました。日本では、話をするように水を向けても、選手は『はい、はい』と答えるだけ(笑)。それで、『どうしたらいいですか』とすぐに答えを求めてくる」


 それでは、あまりにも表面的なコミュニケーションでしかない。

「だから、僕がコーチになってから、『はい』と『大丈夫です』は禁止しました。いま、どういう状況なのか、どんな気持ちなのかを、自分の言葉で教えてくれと。僕がボストン・レッドソックスのキャンプに参加したとき、こういうことがありました。

『ひじや肩の状態はどうだ?』と聞かれて、僕は『OK!』と答えたんです。でも、彼らが知りたいのは投げられるかどうかじゃなかった。『痛みやハリがあるのか、それがどの程度か』ということでした。痛さやハリにもいろいろな種類と程度があるから、それを把握したいんだと言われました。日本ではそんな会話はありません。『大丈夫か?』『大丈夫です!』というやりとりばかり……」


 渡辺は異国で、宗教や言葉、習慣の違いも痛感させられた。

「海外の野球でも、未熟な若い選手に対して、しつけや教育が必要な場面はあります。アメリカやベネズエラでいろいろな国の選手と一緒にプレイしましたが、ベンチで(つば)を吐くし、道具の扱いもひどい。

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