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野球と暴力 殴らないで強豪校になるために
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第六章 野球界の未来のために

『野球と暴力 殴らないで強豪校になるために』
[著]元永知宏 [発行]イースト・プレス


読了目安時間:30分
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ライセンスのない野球指導における、さまざまな課題



 日本サッカー協会(JFA)は、指導者のレベルアップのために、そのニーズに合わせた指導者養成講習会を開催している。JFA主催の指導者養成講習会の修了者には、JFA公認ライセンスが付与される。


 プロ選手の指導ができるS級コーチから、A級コーチジェネラル(全国レベルの選手を指導できる)、B級コーチ(U-16年代指導者の最上級ライセンス)、C級コーチ(U-12年代の指導にフォーカスしたカリキュラム構成)、D級コーチ(グラスツールで活動する指導者)、さらに10歳以下の選手、子どもたちに関わるキッズリーダーまで、段階的に分けられている。JFAは「長期一貫指導」を重視しており、指導者が替わっても選手が()(まど)うことのないようにと考えられている。


 しかし、日本の野球界には、指導者のためのライセンスがない。渡辺俊介は言う。

「野球には指導者に必要なライセンスはありません。どのコーチも、自分で学んできたことを選手に教えています。何が評価されるかと言えば、結局はチームや選手の成績ということになってしまうんですね。そういう評価の方法では、コーチはなかなか育ちにくいのではないでしょうか」


 渡辺には、プロやオリンピックでの経験がある。アメリカ、ベネズエラで学んだことも多い。それらをベースに、最新の野球理論やトレーニング方法をミックスしながら、指導を行っている。


 アマチュア時代に暴力的な指導を受けた経験もあるが、渡辺は選手主体で考えさせ、練習方法を選ばせるようにしている。

「初めのうちは、選手がわかるまで何度でも言い聞かせるのがいいと思っていたんですが、それはそれで非効率的かなと思うようになりました。選手が自分で発想して、考えて行動したときが一番覚えがいいし、成果も出る。だから、そういう環境をつくろうと心がけています」


 社会人野球では、高校卒業後に入社する18歳の選手もいれば、大学を経由して入ってくる選手もいる。体の成長度合いも、野球選手としての成熟度もさまざまだ。

「それまでの鍛えられ方もいろいろです。もちろん性格はみんな違う。コーチの仕事は、その選手に合った練習法を選ばせることではないかと考えるようになりました。その先の段階では、自分なりの方法を生み出してほしい。だけど、現段階では『AとBとCがあるけど、自分には何が必要だと思う?』と提示しています。目の前に選択肢を出して、『うまくなるためにはどうすればいいのか?』を考えさせようと」


指針がないからこそ、指導スキルが求められている



 プロ野球で何十年もプレイしているベテランなら別だが、普通の選手は、練習メニューは与えられるもので、選ぶものだとは考えていない。だから当然、初めは戸惑う。

「選手ははっきりと言いますよ、『これをやれ!』と言われるほうが楽ですと(笑)。エクセルで練習メニューを共有しておいて、ある程度の時期になったら、それがうまくいっているかどうかを選手と話します。


 たとえば、体重移動がうまくできないピッチャーがいるとします。それを直すためのトレーニングを僕も考えますが、『どんな練習でもいいから、自分で考えてこい』と言います。その選手の考えたものが間違っていてもいいんです。技術をつかむための練習だったら、ケガさえしなければマイナスではないので。


 いまは自分でつくりだすということを選手たちにやらせているところです。ストレッチもそうですが、自分の体と相談しながらでないと、絶対に効果は出ません」


 自分にとって必要な練習はなんなのか。成長するために、最短で効果が出る方法をなるべく早く見つけなければならない。高校野球は2年4カ月しかないが、社会人野球の選手にも多くの時間は与えられない。成績が振るわない場合、成長が見込めないと判断されればユニフォームを脱ぐことになる。プロ入りを目指して社会人のチームに入っても、長くプレイできるとは限らない。

「その選手が置かれた状況によって、どんな判断をするのかも難しいところです。プロを目指すなら無理しないほうがいいピッチャーもいるし、多少無理してでも投げたほうがいいケースもある。


 あるピッチャーがひじを痛めていて、無理をすると投手生命が終わるかもしれないという状況だったことがありました。でも、登板できなければ、このチームで野球を続けられる可能性が低くなる。『だから、投げたい』と言うんです。投げたら故障がひどくなるとわかっていて、登板させたのは初めてのことでした」


 本人は故障を隠し通し、最後の段階で直訴した。それが本当によかったのかどうか。渡辺はいまでも「難しい判断だった」と言う。


 指針となる指導マニュアルがないのなら、監督やコーチが自分たちの経験をベースにつくり上げるしかない。

「いまは、指導者が急激に伸びている時期なんじゃないでしょうか。昔のように朝から夜まで練習できるわけじゃない。選手の気質も変わっている。もちろん、暴力的な指導もそうですが、指導自体を考え直さないといけない時期なので、逆に工夫しがいがあります」


 選手たちの心と体を守りながら、短い練習時間で効果的な指導を行うことが求められている。選手をいたずらに叱りつけ、痛めつけていては成果は得られない。

「たとえば、ピアノの練習のように体重移動の必要がないものは、練習すればするだけ技術は上がっていくそうです。でも、野球のピッチングもバッティングもフィールディングも、数をやりすぎると故障のリスクが増える。

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