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悔しがる力 弟子・藤井聡太の思考法
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生き方・教養
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01 勝っても負けても幸せに満たされる勝負がある

『悔しがる力 弟子・藤井聡太の思考法』
[著]杉本昌隆 [発行]PHP研究所


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 長い将棋人生の中でも一度しか経験できない対局があります。生涯、胸に刻まれる一局、勝っても負けても幸せに満たされる勝負です。


 藤井聡太の百十一手目に対し、私は投了を告げました。二〇一八年三月八日、第六十八期王将戦一次予選二回戦。初めて藤井と公式戦で戦った対局でした。


 無理攻めを誘って相手に踏み込ませ、受け止めた反動を利用して一撃で片を付ける。藤井の勝ちパターンの一つであり、この展開だけは避けたいと事前に警戒していた自分の負けパターンでもありました。


 練習将棋で散々繰り返し、警戒していたにも関わらず回避できなかったのは、棋士としての甘さ以外の何ものでもありません。十分準備をしてきたつもりでしたが、藤井の才能に対峙するには、もっともっとやらなければならなかったのです。


 棋士として負かされたのは非常に悔しく、もっといい将棋にしたかったという無念はありました。けれどもやはり、あの日の対局は自分にとって幸せな時間でした。


 ファンに注目される環境で将棋を指せるのは、棋士にとって大きな喜びです。対局前、ある情報番組では、私と藤井のどちらが勝つか特集まで組まれていました。対局前日の取材は断っていましたが、なぜ番号がわかったのか、深夜に「今から取材できませんか」と電話してきたテレビ局もありました。


 当事者たちの意思に関係なく、世の中の大きなうねりに巻き込まれたようでした。


 すべて自業自得ですが、対局に向かう棋士として、どこか浮わついてしまったことは(いな)めませんでした。深夜の電話対応などは「藤井には味わわせたくないな」と思ったのも事実です。


 棋士寿命は非常に長く、二十歳から六十歳まで現役とすれば四十年はあります。私は今、五十一歳。まだ二十年は現役でいたいと本気で考えています。私が現役棋士である限り、藤井とは必ずどこかでまた対局する機会があるはずです。


 将棋界では、公式戦で弟子が師匠に勝つことを「恩返し」と言います。その意味で、私はすでに恩返しをしてもらいました。今度は私が勝つ番です。藤井も成長すると思いますが、私も成長したい。次回はもっと良い将棋をぶつけたいと心に誓いました。


 藤井の思考法をたどるためにも、この対局をあらためて振り返ってみたいと思います。それは、棋士として心新たに生きる(かて)になるはずです。


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